| EVは参入障壁が低いと思われたが、ここへきてバッテリー製造工場をまかなえるだけの資本の有無が勝敗を分けるかも |
テスラに日本製のバッテリーが積まれるとなるとちょっと安心
さて、パナソニックが米国カンザス州にピュアエレクトリックカー用バッテリーの新工場を設立し、テスラ向けに4680セルを生産・供給するとの報道。
この4680バッテリーについては、「容積が小さく、しかしエネルギー密度が高く、製造コストが安い」というメリットがあり、従来のリチウムイオンバッテリーに比較してエネルギー密度が5倍高く、一回の満充電あたり航続可能距離を16%伸ばせると言われています。
そしてテスラはこのバッテリーの生産を加速させるべく、LG化学の電池部門である「LGエナジーソリューション」と共同にて工場を建設し、2023年より稼働を開始させるとも報じられていますが、今回パナソニック工場においても生産を行うことになり、そのバッテリー調達能力を高めるということになりそうです。
パナソニックは和歌山工場でもテスラ向けのバッテリーを生産
報道によると、パナソニックは2028年度までに全施設でEV用電池の生産能力を現在の年間50ギガワットから3倍または4倍にすることを目標としていて、この計画では、カンザス州の工場のほか、2023年度に和歌山県の電池部品工場に2つの生産ラインを増設するとしており、この投資額だけでも5億8000万ドルにのぼり、そして日本の拠点でもテスラ向けの4680セルの製造を行う、ということになりますね(日本で生産したバッテリーは、最寄りの中国・上海工場へと納入されるのかも。であれば日本製バッテリーが積まれるということでちょっと安心)。
カンザス州知事のローラ・ケリー氏によれば「今回のカンザス州史上最大の民間投資であり、この種のEVバッテリー製造工場としては米国最大級となります。このプロジェクトは州経済に変革をもたらし、合計8000名もの質の高い雇用を創出し、多くのカンザス人が自分自身とその子どもたちのためにより良い生活を送ることができるようになるでしょう。このプロジェクトの成功は、カンザス州が世界規模で競争するために必要なものを備えていること、そして、より豊かで持続可能な未来を実現するために必要な技術革新が、我々のビジネスフレンドリーな風土によって推進されていることを示すものです」。
これからのEV業界は「バッテリーコスト」「バッテリー調達能力」との戦い
現在、パナソニックはテスラとの合弁いてネバダ州のギガファクトリーをひとつ運営していますが、この施設への投資額は約14億5500万ドルだといい、とにかくEVの生産はお金がかかる、そしてお金がなければ他から(割高な価格で)バッテリーを仕入れねばならないということ、それで確実に手に入れることができるわけではないということを意味し、これからのEV業界は巨額投資ができる「巨大企業のみ」が生き残ることになるのかもしれません。
実際のところ、EVの販売を急激に伸ばしている中国BYDの母体はバッテリー企業であり、そのほかゼネラルモーターズ、フォルクスワーゲンなどが相次いでバッテリー工場の建設を表明しています。
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なお、LGとゼネラルモーターズの場合だと、ミシガン州に新しいバッテリー工場を(26億ドルで)建設するとい、韓国LGエナジーソリューションは14億ドルを投じてアリゾナ州に新しいバッテリー工場を建設する予定というニュースも。
そして中国のバッテリー製造大手、CATLはフォードやBMWなどに供給するバッテリー工場を米国に設立することを検討中、さらにヒョンデも最近になって「ジョージア州に約55億4000万ドルを投資し、バッテリーとEV生産設備」を建設すると発表していますね。
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参照:Nikkei Asia