| これまでのカスタムロレックスに比較して「スケルトンの範囲が広く」加工されていることが特徴 |
世界に二つと無い「自分仕様、そのルーツを反映した」デイトナの登場
さて、ロレックス(デイトナやサブマリーナー)のカスタムを手掛けるスイスの腕時計工房、Artisans de Genève(アルティザン ドゥ ジュネーブ / アルチザン ドゥ ジュネーブ)。
これまでにもミカ・ハッキネンやファン・パブロ・モントーヤといったF1ドライバー、ジョン・マッケンローやスパイク・リーといった著名人のために腕時計をカスタムしていますが、今回はツール・ド・フランスにて7冠を達成しながらも、ドーピング疑惑のためにそのタイトルを剥奪され永久追放処分となったランス・アームストロングのためにデイトナをカスタムしています。
ランス・アームストロングは将来を有望視されていた1996年に癌に冒され、その後精巣や脳の一部を切除するという大手術を経て”生存確率50%”という過酷な状況を生き抜き現役へと復帰。
なお、癌が発覚したその日にエージェントを通じスポンサーや所属チームに通知を行ったところ、ナイキと他一社を除き、所属チーム含め全てから契約を解除されますが、その後見事に復活を果たし、ツール・ド・フランス7連覇を達成したという奇跡の人でもあります(たとえそれがドーピングによるものであったとしても)。
ちなみに映画「ドッジボール」では本人役で登場していて、試合を諦め棄権しようとする主人公に対し「私は複数の癌と戦って勝利し、ツールを連覇した。キミがここから去ろうとしている理由はいったい何だ?」と訪ねて主人公を棄権から思いとどまらせるという場面も見られます。
ロレックス・デイトナ「アームストロング」とは
そこで今回アルチザン ドゥ ジュネーブがランス・アームストロングのためにカスタムしたロレックス・デイトナについて、その名称はズバリ「アームストロング(ARMSTRONG)」。
そのアクセントにはイエローが用いられますが、これはもちろん自身がナイキとともに設立した、がん患者を支援するための非営利団体「リブストロング(LIVESTRONG)」のテーマカラーでもありますね(ドーピングの判定がなされた後、ランス・アームストロングは同団体の理事を辞している)。
今回の「カスタム仕様」ロレックス・デイトナを製作するにあたってランス・アームストロングは以下のようにコメント。
私の人生と歴史は苦難の連続でしたが、物語はそこで終わりではありません。50年後、100年後に自分が残す遺産なんて、そんなのもったいないよ。私は意味と名誉のある人生を送りたいのです。
そしてアルティザン・ドゥ・ジュネーブからは以下のコメントが出されています。
「自転車競技における伝説的存在であるランス・アームストロングの人生は、この闘い、時間との闘い、自分との闘い、それぞれの試練から立ち上がり、そのたびに生まれ変わることで展開されてきたのです。ランスは、時計製造の原点に立ち返り、パルソメーターや手巻きといった忘れ去られた機能性を、リニューアルを象徴するモダンなデザインで実現するよう、私たちに要求しました。いわば、これは彼の復活の物語です」
なお、上述の通りアルチザン ドゥ ジュネーブはスイスの時計工房であり、腕時計の販売は行わず、顧客が所有する腕時計を「カスタム」するにとどまります。
ただ、その技術には高い定評があり、通常だと「(バムフォードなどの)ロレックスのカスタム」は受け入れられないという傾向があるものの、このアルチザン ドゥ ジュネーブ製のカスタムロレックスだけは腕時計マニアにも認められ、非常に高い相場にて取引されています。
そしてひとつひとつの腕時計のパーソナライズにつき、顧客との綿密な打ち合わせを経て仕様を決定し、妥協を許さず丁寧に仕上げてゆくため、生産には非常に時間がかかり、そのため生産量が極端に少なく、よってこのカスタムには「長い行列」ができており、カスタムを申し込むにはまず同社のニュースレターの申込みを行う必要があるようですね。
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ロレックス・デイトナ「アームストロング」はこんな仕様を持っている
そこでこのロレックス・デイトナ「アームストロング」のディティールを見てゆきたいと思いますが、興味深いのは「ランス・アームストロングにとって、時計は単なるアクセサリーではなく、ストーリーを体現するもの」であり、サイクリストはパワーと持久力のバランスを常に追求しなければならず、そのためには脈拍の測定が欠かせないため、ランス・アームストロングがアルチザン ドゥ ジュネーブに対し「専用パルス機能」の組み込みを依頼したこと。※キャリバーは4130、自動巻き機構は削除されている
実際にこの機能がどういった仕組みで作動するのかはわかりませんが、果たしてこのパルス機能はデイトナへと組み込まれているといい、クロノグラフ針はパルスを視覚的に示すかのような稲妻型(ミルガウスみたい)。
ちなみに文字盤(ダイヤル)はスケルトン。
これはランス・アームストロングが「大切な友人から贈られ、特に衝撃を受けた時計から」インスピレーションを受けたのだそう。
ストラップはステンレススティールもしくは(ラバーB社の開発による)イエローアクセント入りのラバーストラップ。
サイドには「ARMSTRONG」の文字が彫られます。
リュウズにはイエローのライン、そしてプッシュボタンのスリーブにはイエローの塗料が流し込まれます。
ケースバックはスケルトン。
キャリバーは透かし加工を施した後、サンドブラスト加工と手作業にて美観を整えられ、中心となるクロノブリッジはマットブラックで仕上げられ、パワーリザーブはもともとのスペックと同じ72時間を維持します。
サファイアクリスタルの周囲には「ARTISAN DE GENEVE」「ARMSTRONG」の文字が浮き彫りにされ、くぼんだ部分にはサンドブラスト加工という仕様。
スモールダイヤルの数字もイエロー仕上げ。
スモールダイヤルの針もスケルトン加工、そしてイエローに。
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