| ただし合成燃料には現時点で重大な問題があり、その価格がガソリンの5~10倍となるようだ |
さらに、合成燃料を「カーボンフリー」のための手段としてすべての国や地域が認めるわけではない
さて、ポルシェは電動化を強力に進める一方、ガソリンエンジンを存続させるために合成燃料(Eフューエル)の開発を進めており、今年春には追加投資を行って工場を建設し生産を開始すると発表していますが、今回は「合成燃料の生産が開始され、最初の燃料をポルシェ911に注入した」とアナウンスしています。
現在のところ生産量はまだまだ少なく、しかしそれでも「大きな一歩」を踏み出したことは間違いなく、新たな歴史の1ページが刻まれたということになりそうですね。
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合成燃料(Eフューエル)の生産工場はチリに建設
この合成燃料(Eフューエル)は風力エネルギーを利用して水と二酸化炭素から生成されるもので、近年では燃料や電力の生成過程においても「サステイナブル」が求められ、ポルシェが風力発電を利用することにしたのも同様の理由からなのだと思われます。
そしてこの合成燃料製造工場は南米チリに建設されており、その理由は「風が強いから」。
チリのチリ南部のプンタアレナスでは風が強く、年間270日ほど風が吹くため、風力タービンをフル稼働させることができるといい、さらにマゼラン海峡に近いため、燃料を世界中に輸送するのにも便利な立地なのだそう。
現時点での生産量はまだまだ微小
現在、このチリに建設したパイロットプラントでは年間約13万リットル(34,342ガロン)の合成燃料を生産する予定だそうですが、これがどれくらいの量なのかというと、2021年に米国で消費されたガソリンは1348億3000万ガロンだというので、ここから算出すると、「現在の生産量は、米国のガソリン年間消費量の「538万分の1」という計算に。
しかしポルシェは2025年までには年間5500万リットルにまで生産を拡大させ、その2年後には5億5000万リットルにまで生産能力を向上させるといい、そしてその頃になればEVがさらに増えてガソリン消費量が下がっているはずなので、「現実的に、合成燃料がガソリンの代替として機能する」可能性が十分出てきます(もちろん、ポルシェ以外からも合成燃料の供給がなされる)。
そしてこの合成燃料は、ポルシェが2030年までに達成したいと考えているカーボンニュートラルという目標の手段に貢献する一方、今後数十年にわたり路上を走行する13億台以上のガソリン車の燃料として機能する可能性が出てきます。
多くの国や地域では、2035年を堺にガソリン車の販売が禁止されることになりますが、それでも中古車の売買や、所有しているガソリン車の継続利用が制限されるわけではなく、よってまだまだガソリン車は存続し続けるということに。
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ただ、いずれかの段階でガソリン車の使用が禁止される可能性が出てくるかもしれず、しかしそのときに「合成燃料であれば」CO2の排出を(理論上)抑えることにできるため、合法にガソリン車を使用することができるものと思われます(ただ、その時は”ディーゼル車に軽油を入れる”ように、合成燃料ではなくガソリンを入れて走る脱法行為が横行するのかもしれない)。
ポルシェの開発・研究担当役員を務めるミヒャエル・スタイナー氏は、合成燃料は「既存の自動車の所有者に、ほぼカーボンニュートラルな代替手段を提供することになる」と述べており、同時に「生産したクルマの70%以上が今も現役で路上を走っている」というポルシェの事情を鑑みると、そのオーナーに対するひとつのギフトとなるのかもしれません。
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参照:Porsche