| できることならランボルギーニ創業者にこの姿を見てほしかったものだ |
残念ながら、現在のランボルギーニは創業者一族が一切関与していない
さて、ランボルギーニは今年で60年という節目を迎えますが、今回その「工場の60年の足跡」について語る公式コンテンツが公開されることに。
ちなみにですが、ランボルギーニはサンタアガタ・ボロニェーゼにて、フェルッチオ・ランボルギーニによって1963年に”ゼロから”創業され、今も昔も同じ場所に本社と工場が建っています。
そして今、ランボルギーニは2,000人以上の従業員を抱え、2022年には9,233台の車を納車する世界的に知られる企業へと成長するに至っており、この60年の間には絶え間なく「生産、環境、技術」のニーズに応じてアップグレード、拡張、再構成が行われているわけですね。
いかなる変化を迎えようとも、そのコアを失うことはない
フェルッチオ・ランボルギーニは、新会社を設立する場所を探し、故郷のチェントからわずか数キロのサンタガタ・ボロニェーゼに新工場を建設する土地を選んでいますが、当時としては最も近代的な工場のひとつとされた初期部分の建設は非常に早く、1963年の秋から冬にかけてわずか8カ月で終了したのだそう。
なお、フェルッチョ・ランボルギーニはそれまでにも家電等の製造販売ビジネスで成功を収めており、よって自動車においても、当時主流であった「手作り」から、オートメーションへの移行を目指したと言われていますね。
1966年になるとギアボックスとディファレンシャルも自社で製造するようになり、工場はエンジンや機械部品の生産ラインと、部品製造や車のチューニングのための補助的な機械を備えた車の組み立てラインの2つにて構成され、正面と中央に社長室、技術・営業部門のオフィス、建物の右側にはテストルーム、左側にはカスタマーサービスのワークショップとスタッフルームが設置されています。
ランボルギーニは、創業当初から技術的に高度な機械の使用に重点を置き、職人の技と最先端の技術を融合させており、これは今日のランボルギーニにおいても重要視されているコアだとされています。
1968年10月18日、ランボルギーニは、3,500 m2の面積を持つ3つの新しい工業用建物の完成が間近に迫っていることを発表しており、これらの建物は生産設備を強化するだけでなく、近代的で設備の整ったテスト部門を作るためのものだったといい、このプレスリリースに添付された写真は建設中の部門に加え、400GT、イスレロ、エスパーダ、ミウラ2台が写っていることから、今でも象徴的なものとして扱われている、とのこと。
創業から2年後の1965年にはわずか67台のみの生産規模にとどまっていたものの、1971年には425台となり、しかし1970年代の経済危機の影響で1979年にはいったん55台まで減少。
1980年代には生産が再開されることになり、1987年には470台が生産されるまでに回復するとともに、300台のマリンエンジンが生産されています(ランボルギーニは自動車部門のほか、船舶部門とトラクター部門がある。ただし現在ではそれぞれが別会社となっている)。
ランボルギーにスーパーカーではじめて「カーボンファイバーを使用」
1983年になるとランボルギーニは初めてカーボンファイバーの開発・使用を開始することになりますが、これはボーイング767に使用されたカーボンファイバーとケブラーコンポーネントのノウハウをシアトルから導入し、同時に新しい「Esperienza Materiali Compositi」部門(通称E.Co)が設立されることに。
この際にカウンタック・エボルツィオーネ(最初のカーボンファイバー製シャシーを使用したプロトタイプ)が作られ、これはランボルギーニが初めて複合材料を使用したクルマでもあり、スーパースポーツカーのプロジェクトとしては世界ではじめてだった、とされています。
-
まるでSF映画に登場するクルマ!1987年にランボルギーニは「カーボンシャシー、4WD」のカウンタック・エボルツィオーネを製造していた
設計はパガーニ創業者、オラチオ・パガーニ このクルマが市販されていたら、スーパーカーの勢力図は今とは違ったものとなっていただろう さて、ランボルギーニ・カウンタックは今年で誕生50周年を迎え、ランボル ...
続きを見る
1990年には、電子システムと新しい複合材料の分野の研究、開発、テストに必要な設備が購入されたほか、排出ガス制御システムの試験・開発ワークショップも設立され、これ以降、このプロセスは社内で直接管理されるようになりますが、1998年にアウディグループに加わったことでランボルギーニの開発スピードは飛躍的に向上し、生産台数や従業員数の増加に従い、2001年には新しいオフィスビル、2階建ての博物館、新しい研究開発エリアの建設に加え、2001年8月に完成した組立ラインや食堂への投資など、総額1億5500万ユーロを投じて久しぶりの本社改修が完了しています。
-
ランボルギーニが35年以上にわたる「カーボンファイバーとの歩み」を紹介!けっこう「世界初」が多かった
| ランボルギーニはカーボンファイバー登場初期から熱心にその可能性を追求してきた企業のひとつ | さらにはカーボンファイバーのリサイクル、持続可能性にも取り組んでいた さて、ランボルギーニが「ランボル ...
続きを見る
2002年10月25日にあランボルギーニの創立40周年を記念して、2003年晩春に「ランボルギーニ・チェントロ・スティーレ」をオープンすることが発表され、このセンターは、カスタマーサービス、ランボルギーニのクラシックカー専門センター、マリンエンジン部門が入居する新ビルの指定されたエリア内にオープンすることに。
さらに2003年にランボルギーニは急成長を遂げ、敷地面積は100,000m2、そのうち屋根は28,900m2、生産台数は1,305台、従業員数は624名、そのうち145名が研究開発に従事することになり、2006年には前年比+30.4%という驚異的な成長を見せて2,087台のスーパーカーを生産しています。
2008年11月には、組立ラインから排出される車の最終チェックを行うフィニッシング部門の拡張工事が始まりまあすが、同年10月には工場施設内に新設された総合物流プラットフォームが落成し、この新しいロジスティクスセンターには11,000平方メートルの広さ、そして14,052パレットのスペースが確保されたようですね。
2011年には、ランボルギーニ・パークもオープンし、現在では、持続可能性と地域環境への影響に関する研究において、ランボルギーニの最も重要な2つのプロジェクトを進めているほか、2012年には、プロトタイプ開発(プロトショップ)とプレシリーズセンターが入る全く新しい建物が建設され、イタリア初のエネルギークラスAおよびN-ZEB(ネット・ゼロ・エミッション・ビル)の産業用多層建築物としての認定を受けています。
-
ランボルギーニが今年も「自社で育てたミツバチ」からハチミツを採取し、クリスマスに従業員へとプレゼント。なおミツバチは植物の受粉の80%を媒介しているそうだ
| ランボルギーニは実に様々なプロジェクトに取り組んでいる | ポルシェ、ベントレー、ロールス・ロイスも「養蜂」を展開中 さて、ランボルギーニは様々な環境に対する取り組みを行っていることで知られますが ...
続きを見る
2015年には工場全体のCO2ニュートラル認証取得につながった主要プロジェクトの2つだとされる「新しいトリジェネレーションシステムと地域暖房システム」を稼働させており、これは現在でも続いているランボルギーニの環境サステナビリティ戦略の重要な目標の達成を目指したもので、こういった取り組みが評価されてランボルギーニは「グリーン企業」としての認定も受けています。
-
ランボルギーニが「ホワイト企業」に続き「グリーン企業」にも選出!環境維持のために行ってきた取り組みが評価され二年連続でグリーンスター賞を受賞
| ランボルギーニはアグレッシブなデザインの製品からは想像もできないほど、人にも環境にも優しい企業になっていた | やはり親会社であるフォルクスワーゲンの意向が強く影響しているのだと思われる さて、ラ ...
続きを見る
2018年にはついにランボルギーニ第3のモデルであるスーパーSUV「ウルス」が登場し、これはイタリア政府のバックアップ、およびエミリア・ロマーニャ州との歴史的な協定によって実現したもので、ウルスの生産設備を導入することにより工場の敷地面積は160,000平方メートルに拡大することに(雇用増加、経済活性化を目的とし、イタリア政府がランボルギーニに対して税金に対する優遇などを持ちかけ、それによってランボルギーニが工場への投資とウルスの生産を決定した)。
この新しい生産施設には、ウルス専用の新しい組み立てライン、ランボルギーニの全モデルのための新しい仕上げ部門、そして建物の設計と建設におけるエネルギーと環境の認証において世界最高水準であるLEEDプラチナ認証を受けた新しいオフィスビルが入居したほか、新しいテストコースも建設され、特にSUV用としては13種類もの路面が用意されているのだそう。
さらに、新しい物流倉庫、第二三発電所、すべてのエネルギーキャリアを集中的に生産する新しい「エネルギーハブ」も建設されたほか、職人技と最先端技術を組み合わせた革新的で持続可能なアプローチをもたらす「マニファトゥーラ・ランボルギーニ」への取り組みも行っています。
2019年にはウルス用の塗装工場が完成し、2020年からはシェルサプライチェーンが(道路ではなく鉄道輸送となったため)持続可能になって85%のCO2削減を達成していますが、このサステナビリティは周辺環境の保護だけにとどまらず、長年にわたり、ますます広まる社会的責任の一環として重要な意味を持っています。
2021年5月、ステファン・ヴィンケルマンCEOは、ランボルギーニが2023年から2024年にかけて全製品を電動化し、10年後の終わりに完全電動モデルを導入するというプロジェクト「ディレッツォーネ・コル・タウリ」を発表していますが、これらは、生産現場だけでなくバリューチェーン全体の影響を継続的に削減するために取り組むという、ランボルギーニの持続可能性戦略への全体的なアプローチの一部である”脱炭素化の幅広いプログラム”の中の重要なステップでもあり、ランボルギーニはその生産を拡大するだけではなく、いかに地域や社会に貢献するか、そして環境改善に取り組むかにも注力してきたかがわかります。
-
ランボルギーニが2025年までのロードマップを発表!2024年にはガソリン車を全廃し全車ハイブリッドに、そして2025年以降には「初の」EVを発表
| ランボルギーニは新たなる新天地「コル・タウリ」を目指す | ついに「第4の」ランボルギーニ投入計画が具体的に さて、ランボルギーニが予告通り「将来のヴィジョン」について公開。これはランボルギーニC ...
続きを見る
ランボルギーニは、1963年にはじめて工場が建設された当初からずっとそこにある長い道路、屋根の上の誇らしげなランボルギーニの看板は(途中でフォントが変わっている)今日でも会社の最も目立つ特徴であるとともに、長年にわたって進化してきたランボルギーニの象徴だと述べており、そしてそのDNAは創業当時からずっと変わらず、常に未来を見つめつづけている、と結んでいます。
-
ランボルギーニCEO「二度とカウンタックLPI800-4のようなレトロカーを発売することはない」。「我々に必要なのは過去ではなく、過去を破壊しながら未来に進むことだ」
| 一本筋が通っているように見えるランボルギーニの展開も、CEOによってはずいぶん方向性が違っていたようだ | ランボルギーニが今後「レトロモデル」を発表しないことにも「納得」 さて、2022年には4 ...
続きを見る
合わせて読みたい、ランボルギーニ関連投稿
-
ランボルギーニの2022年は過去最高の9,233台!ウルス、ウラカンも記録更新、納車待ち期間は1年半に。日本は現在5番目に大きな市場
| ランボルギーニは排他性を強調する戦略を採用、そのため「多品種小ロット生産」へ | そのため各モデルでは常に「完売」の状態が続いている さて、現在各社がその業績を公開しており、とくにプレミアムセグメ ...
続きを見る
-
ランボルギーニが9年連続で「イタリア政府の認めるホワイト企業」に選出!従業員の国籍は35、年齢や性別、思想、健康状態などの多様性を認め、働きやすい環境を構築したことが評価対象に
| 人間の数だけ異なる価値観が存在し、しかしそれを否定するのではなく、理解しあって前に進むことが重要 | ランボルギーニは欧州企業の中でもとくに先進的な試みを実施中 さて、ランボルギーニが2022年に ...
続きを見る
-
ランボルギーニが「一般に知られていない、しかし環境のために取り組んでいること5つ」を公開。例のハチミツ生産のほか、そしてカーボンやレザーをリサイクルして小物を作っているようだ
| 残念ながらハチミツは社員へのプレゼント用、カーボンリサイクルパーツは本社併設ストアでしか購入できないようだ | さすがにここまでランボルギーニが環境に熱心とは知らなかった さて、ランボルギーニが「 ...
続きを見る
参照:Lamborghini