ユーチューバーが「トンネルの天井」をF1マシンで走る企画を進行中。「車重よりも大きなダウンフォースを発生させることができれば」理論上は可能だが【動画】

｜　たしかに数年前から「理論的には不可能ではない」として論じられることが多々あるが　｜

実行するには様々な困難が立ちはだかる

さて、世の中には荒唐無稽なことを考える人々が多数存在しますが、それを実行する人は「ごくわずか」です。

しかし今回、レーシングドライバーそしてユーチューバーでもあるスコット・マンセルがそれを実現しようとしており、その奇想天外なアイデアとは「トンネルの天井をF1マシンで走り抜ける」というもの。

映画「メン・イン・ブラック（MIB：インターナショナル）」にて変形したレクサスRCがトンネルの壁面と天井を走るシーンがありましたが、それをリアルにてやってしまおうということですね。

すでにこのプロジェクトは動き出している

なお、これまでにもスコット・マンセルは様々なユニークな企画を実現させており、そして今回のプロジェクトについても真剣そのものであり、すでに数十万ドルを注ぎ込むこととなっています。

参考までに、F1マシンが天井に張り付いて逆さまに走ることができるということは理論上は「可能」であり何年も前から言われてきたこと。

どういうことかというと、現代のF1マシンの重量は約800kgであり、一方で発生するダウンフォースは最大4,000kgなので、このダウンフォースを発生させることができる速度をキープできれば、理論上は「逆さまであろうが」壁に張り付くことが可能です。

しかしこのプロジェクトの実現には大きく分けて2つの問題があり、ひとつはマシンを調達すること、そしてもうひとつはトンネルを確保すること。

まずマシンについてですが、当然ながら高価なF1マシンをこのプロジェクトに提供してくれるチームはなく（レッドブルであれば協力してくれそうだが）、そのほか様々な理由からスコット・マンセルは別のマシンを探すことに。

そこで白羽の矢が立ったのがかつてフェラーリF1チームのエアロダイナミクス責任者だったウィレム・トートが設計した（エンパイア・レイスという）レーシングカーで、これはヒルクライム用に設計されているそうですが、ヒルクライムもまた（パイクスピークで知られるように）強力なダウンフォースが要求されるカテゴリです。

このレーシングカーは（非常に小型らしく）311kgという車体重量の2倍に相当する622kgのダウンフォースを発生させることが可能であり、今回スコット・マンセルはこのマシンを使用することに決めたようですね。

現在、この挑戦に適合できるトンネルは存在しない

そしてもう一つの問題である「トンネル」ですが、どうやってもこのチャレンジに適合するトンネルを見つけることができず、というのも通常のトンネルはカマボコ型であり、「路面から壁にのぼるのこができない」から。

このプロジェクトを成功させるためには、トンネルと言うよりは「チューブ」が必要であり、よってスコット・マンセルは（計算上、このプロジェクトの成功に必要な）600メートルの長さを持つチューブを作ることにしたと述べています。

ただ、このチューブを作ることができたとしても、チューブの中ではタイヤの接地面積が（平面の道路に比較すると）現象するはずであり、その環境で想定する速度を出すことができるのかという問題、そしてクルマを逆さまにして最低でも5秒間走らねばならない状態では油脂類の循環や燃料の供給にトラブルが生じる可能性もあり（この解決のためにはエレクトリックパワートレーンの使用を視野に入れているそうだ）、本来そのクルマを走らせることを想定していない環境にて走行するということは未知の危険性をはらんでいるようですね。

ただ、動画を見るに様々な専門家がこの挑戦に助言を与えており、ひとつひとつ問題が解決されているようにも思われ、スコット・マンセルの奇想天外なチャレンジが成功し、長年語られてきた「机上の空論」「論理的な遊び」を実現させ、世間をあっと言わせることを楽しみにしています。

ユーチューバーがー「トンネルの中を逆さに走る」プロジェクトについて語る動画はこちら

あわせて読みたい、関連投稿

参照：Driver61