| 運命の歯車は突如として「逆転」しはじめることがある |
これまでポルシェはひたすら「増収増益」を繰り返してきたが
さて、ポルシェは2024年第3四半期の決算を公開し、そこでは中国市場での販売台数が30%も減ってしまったことが明らかになっています。
この理由としては「中国の経済状況が悪化している」「中国車にシェアを奪われていること」が明らかになっていますが、つまり「買い控えが生じている」「代替品に取って代わられている」ということになり、ここで思い出すのがポルシェの上場時の一連のやり取りです。
ポルシェ側としては「フェラーリ以上の価値があり、ポルシェは代替がきかないオンリーワンのブランドである」と主張したものの、アナリストの多くは「代替がきかないというのはフェラーリやエルメスのようなウルトララグジュアリーブランドを指すもので、それらに比べるとポルシェは(プレミアムブランドではあるものの)マスマーケット寄りであって景気に販売が左右されやすい」と見ていたわけですね。
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ポルシェは「外的要因を受けやすい」ことが判明
果たして現在の状況であってもフェラーリやエルメスは(ワールドワイドで)販売を伸ばしており、しかしポルシェは「そうではない」という現実が明らかになっていますが、ここには「ブランドバリュー」のほか、生産数量をコントロールしているかどうか(意図的に生産を抑えてハングリーマーケットを形成しているかどうか)も関連しているのかもしれません。
現実的に、エルメスやフェラーリは(それがときに訴訟のネタになるほど)需要に対して生産数量を低く抑えており、更にフェラーリはマーケット(地域)ごとに販売比率を決めてコントロールしているため、特定のマーケットに依存したり、またどこかの市場が縮小したとしてもその影響を受けにくい(他の市場での需要がいくらでもあるので、どこかが凹んでも、そちらに製品を回せば良い)わけですね。
こういった方針を採用することでフェラーリ(そしてランボルギーニも)はコロナ禍においても数字を損なうことなく成長を記録してきたわけですが、「求められるだけ作る」「あるいは需要以上に生産を行った」マクラーレンそしてアストンマーティンが窮状に陥ったのは記憶に新しいところ。
そして今回、ポルシェも(そこまで行かなくとも)これに近い状況になってしまったということになり、よって今後の戦略を大きく見直さざるを得ない段階に差し掛かっています。
ポルシェ「プレミアムカーセグメントの顧客はEVに見向きもしない」
そこで今回の決算発表の場で、ポルシェCFO(最高財務責任者)、ルッツ・メシュケ氏によって語られたのが「多くのプレミアム/ラグジュアリーセグメントの顧客が内燃機関車に目を向けている。そこには明らかなトレンドがある」ということ。
これと同じ発言はポルシェと同じくフォルクスワーゲングループに属するベントレーからも聞かれていますが、これに先駆けること少し前、ポルシェは「2030年までに新車販売の80%をEVにするという当初の計画は変わっていないが、それは顧客がどれくらいEVを選ぶかという状況によって変わってくる」とコメントしています。
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そして今回の決算発表会でのプレスカンファレンスにおいては「EVシフトが思うように進んでいない」と率直に認め、さらには中国の状況がポルシェや他の欧州のラグジュアリーブランドにとって「困難」であると述べていて、これが「顧客の関心がEVにはない」ことに繋がり、そこから(すでに報じられているように)ポルシェが顧客の要望に応えるため、ガソリン車やプラグインハイブリッド車をリフレッシュすること、R&D部門に対して複数のパワートレインソリューションに取り組む柔軟性を与えたこと(「電動化された車両の新しい内燃機関派生モデル」も含まれる)へと言及されることに。
とにかく現在のポルシェは計画が二転三転しているということになりますが、これは消して非難されるべきではなく、むしろこの状況で「当初の計画をひたすら守って」電動化への道を突き進むほうが危険だとも考えられ、状況によって柔軟に戦略を変更しているところはしっかり評価すべきなのだと思われます(本当の評価は結果が出てからということになりますが)。
なお、ちょっと不思議なのはなぜポルシェが(世界的に供給が不足している)911の生産を増やさないのかということで(おまけに911は利益率が高い)、これが単に生産能力の問題なのか、それとも911ラインアップを増加させることでCAFE規制を超えてしまった分の罰金が多くなるからなのか(つまり損益分岐点を常に計算している)はちょっとナゾ。
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