| つまりBMWはユーロ7の導入によってライバルに打ち勝つ自信があるようだ |
現代の自動車メーカーの競争相手は「ライバル」というよりも「規制」である
さて、BMWは比較的うまく「電動化という未来、消費者がガソリン車を求めるという現在」とのバランスを上手く取っている自動車メーカーではありますが、今回は同社CEO、オリバー・ツィプセ氏が来年施行予定のEUの厳格な排出規制につき、これまでの考えを変更したとカーメディアに対してコメント。
その変更とは「これまで欧州で導入される予定の排出規制(ユーロ7)に反対していたものの、新しい考え方では”それを受け入れる”」というもので、いわば180度の転換と言ってよいかと思います。
-
BMWのCEOが「ユーロ7の導入は無意味。かえって状況が悪化する」と強烈に批判。ここ最近は同様の声が聞かれるようになったものの一体どういった理由?
| ガソリン/ディーゼル車を締め付けることは消費者のメリットにならず、であればもっと消費者がEVを買いたくなるような別の施策を考えるべきである | まさに発想の転換を行わねば先に進むことは難しい さて ...
続きを見る
なぜBMWは急激な方向転換を行ったのか?
今回の方針変更につき、オリバー・ツィプセ氏はその理由については明確にしておらず、「ただBMWはそれに対応する準備ができている」と述べていて、実際、BMWは新しいユーロ7基準に対応するため、6気筒および8気筒エンジンの改良を進めており、Mモデル(例えばM4)のガソリンエンジンがユーロ7導入後も数年間にわたり生産される可能性が見えています。※新型M3には新しいハイブリッド6気筒エンジンが搭載されることが確認されている
オリバー・ツィプセ氏は、つい昨年の春にはEUの排出規制に対して強く反対しており、「完全に実現不可能だ」と批判の姿勢を見せていて、特に寒冷地での始動や重負荷での走行など、具体的なテスト項目に強い不満を抱いていたものの、今回は「2025年にユーロ7が導入されることは2019年に知らされており、我々はその目標に合わせてパワーユニットを改良し、ドライブトレーンの効率化にも努めてきた」と述べるなど規制導入に賛成の意向を示すことに。
この方向性の変化には、「BMWは苦労の末、ユーロ7に対応する準備をようやく整えた」ため、「規制に対応するための努力を怠った」自動車メーカーを甘やかすべきではないという考えが根底にあるのかもしれません。
-
BMWは当面「ガソリンエンジン廃止」は考えていない?今が最大の踏ん張りどころだと捉え、「ユーロ7を乗り越える」ために最大限の投資をガソリンエンジンに対して行う模様
| 一方、メルセデス・ベンツは「ガソリンエンジンの開発」をすでに停止 | BMWはトヨタに近い戦略を採用するようだ。ただしその理由は微妙に異なる さて、自動車メーカー間で対応が大きく分かれる「ガソリン ...
続きを見る
しかしBMWはガソリンエンジンの禁止には「反対」である
一方でオリバー・ツィプセ氏は「2035年に内燃機関車の販売を禁止する」というEUの方針には依然として反対しており、「技術的な開放性がヨーロッパの競争力の鍵だ」と述べ、電気自動車や水素インフラが十分に整備されていない市場での競争力に懸念を表明し、また、ハイブリッド車の重要性についても常々言い及び、化石燃料の生産者に再生可能燃料や低ライフサイクルカーボン排出の燃料(エタノールブレンドや植物油ベースのディーゼル)を生産させることを望んでいると語っています。
ただ、BMWは直近で新世代EV「ノイエクラッセ」の発表と発売を控えていて、そしてこれらは「新しい電動化技術」を用いているためにガソリン車に比較して価格含めて優位性があると睨んでおり、このノイクラッセの投入によって「EVの需要が増加するであろう」とも。
加えてBMWは2028年にはトヨタと共同開発した燃料電池SUVを発表する計画を推し進めるなど、「ガソリン車の販売終了」に反対しつつも、ガソリン車の販売が禁止されるであろう未来へと動いていることもまた事実。
こういった動きを見るに、もしBMWが「ライバルよりも優れた商品力を持つ、魅力的なEVを発売できたならば」、そして「それらEVの販売が好調に推移したならば」、これまた一転して(これまで反対していた)ガソリン車販売禁止法案を支持するようになったりするのかもしれません。
あわせて読みたい、BMW関連投稿
-
EUが「ユーロ7導入内容を緩和」。事実上は自動車メーカーの要求を聞き入れた形となるものの、現在の自動車メーカーは頻繁に行われる規制変更に翻弄されることに
| 規制の内容が変わってしまうことで、自動車メーカーの行ってきた投資や努力が無駄になる場合も | 場合によっては、ある自動車メーカーが築いてきたアドバンテージが消失してしまうケースもある さて、先日は ...
続きを見る
-
BMWのCEOがEUの合成燃料認可に対する姿勢を批判。「表面上だけでこれを認めたにすぎず、実用化のために何も行っていないため、このままでは内燃機関が滅ぶだろう」
| BMWは例外的に「EVの販売を伸ばしている」自動車メーカーではあるが、それでもガソリン車の存続を強く支持している | トヨタ同様、マルチパワートレーン戦略を採用する企業のひとつでもある さて、現在 ...
続きを見る
-
次期BMW M3にはやはりガソリン版とEV版とが存在するようだ。ただし両者は別のプラットフォームを採用し「M4はEVのみ」となるもよう
| 現在ガソリン車に対する締めつけが緩くなり、多くの自動車メーカーがガソリン車の存続を検討している | それはハイパフォーマンスカーとて例外ではない さて、次世代BMW M3はガソリンエンジンを捨てて ...
続きを見る
参照: Automobilwoche