
| おそらくはポルシェだけではなく、欧州の自動車メーカー全般に影響が拡大するものと思われる |
これにより欧州の自動車メーカーによる計画は一部「振り出し」に
さて、先般より業績不振が囁かれていたスウェーデンのバッテリー会社、「ノースボルト」が破産申請を行ったとの報道。
ノースボルトは欧州の自動車メーカーが ”中国によるEVバッテリー市場の支配” を打破するための最良の希望とされていて、中国への依存から脱却するための手段だと見られていたのですが、これによって欧州自動車メーカーの戦略が「振り出し」に戻ってしまうのかもしれません。
今後一体「どういった」影響があるのか
現在のEV市場においては中国車が圧倒的な存在感を示しており、その大きな理由は「価格の安さ」。
EVを安く作れるのは中国政府によるバックアップ、つまり奨励金に加え土地の取得、借り入れ、その他諸々の優遇措置があるからだとされ、しかしもうひとつの大きな要素が「サプライチェーンが中国内で完結すること」。
EVを製造するには様々なコンポーネントやパーツが必要ですが、中国はもともと様々な自動車メーカーの「下請け」あるいは「車両の生産拠点」として機能していたためにサプライヤーが豊富に揃い、他国から輸入しなくても「それらを揃える」ことができるわけですね。
よって、クルマが完成するまでに「コンポーネントやパーツが移動する距離」が短く、これによってコストを大きく節約できているということになり、しかし欧州や米国、日本の自動車メーカーだと、コンポーネントやパーツのいくつか(あるいは大半)を「中国から輸入」するため、そのぶんのコストがどうしても「割高」に。
ただし日米欧の自動車メーカーもこの条項を甘受しているわけではなく、自社あるいは自国内にてサプライチェーンを構築しようとしており、そのために欧州の自動車メーカーが頼っていたのがこの「ノースボルト」。
特にフォルクスワーゲングループやBMWはノースボルトとの関係性を深めており、VWグループ傘下にあるポルシェはノースボルトの対応が遅れることによって718ケイマン・ボクスター「EV」の開発に支障が生じていると伝えられ、BMWに関しては、昨年に「ノースボルトから30億円規模の」納品がなされなかったという報道も。
そしてもしかすると、フォルクスワーゲンが「欧州のための、欧州による、欧州で製造する」として発表した「2万ユーロの」安価なEV、ID.2 Every1にも何らかの影響が及ぶのかもしれません。
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各社とも「脱ノースボルト」を進めてはいいたが
しかしながらノースボルトのこういった兆候は「突如」あらわれていたわけではなく、たとえば昨年11月にはアメリカの事業部門が破産申請を行うなど、なんらかの兆候が見られており、だからこそポルシェは「V4ドライブ」を傘下に収めて自社によるコントロール精度を高めようとしていたのだと思われます。
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なお、このノースボルトの倒産は「サーブの倒産を超える、スウェーデン国内企業史上最大の破産」であると報じられ、同国内ではそうとうな衝撃であることも塑像に難くありませんが、アメリカ、そしてスウェーデン本国では破産申請が行われているものの、ドイツ、ポーランドの法人では破産申請を(まだ)行っておらず、これらについては現時点では事業を継続しているようですね。※カナダ政府がケベック州のノースボルト工場の買い手を探すための交渉を行っているという報道もある
欧州全体が「2035年からゼロエミッション車のみの販売を目指す」という目標を掲げている中、この破産は大きな問題となり、ともすると「中国へのバッテリー依存」をより高めてしまう結果にもなりかねず、そしてこれはもちろん「健全」ではなく、ロイターが指摘するように、「欧州でのEVバッテリー生産の計画は、官僚的な障害、製造問題、予想より遅いEV需要により停滞している」という状態を加速させることとなるのかもしれません。
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参照:Reuters