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「EVバブル崩壊の予兆」?EV用バッテリー市場に迫る「生産能力過剰」の危機:2030年には「需要の3倍に相当する供給過多」も

テスラ

| 【衝撃予測】EVバッテリー市場、供給過剰で大崩壊か?大手メーカーが投資を緊急縮小 |

パナソニックはじめ各社とも計画の見直しが報じられる

世界中の自動車メーカーが「EVシフト」という波に乗るべく巨額の投資を行い、特に北米を中心にEVバッテリー工場の建設ラッシュが続いてきたというのが昨今の状況。

しかし今、その壮大な計画に冷や水が浴びせられており、自動車産業のコンサルティング会社AlixPartnersにより「2030年までに世界のEVバッテリー生産能力がEVの需要を約3倍も上回る」という驚愕の”供給過剰予測”が出されることに。

この需要の鈍化により、フォードやパナソニックといった大手企業は既に大規模な生産計画の縮小や延期を余儀なくされているといい、ここではなぜ「EVバッテリーバブル」が弾けようとしているのか、その背景にある市場の減速、大手メーカーの具体的対応、そして消費者にどう影響するのかを深掘りしてみます。

トヨタ
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需要減速と過剰生産能力の現実

まず、自動車業界はここ数年、EV需要が急増するという見込みに基づいて数十億ドル規模の投資をバッテリー生産に注ぎ込んできましたが、最新のレポートや企業の動きはその予測が過熱気味であったことを示しています。

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2030年に向かう「生産能力過剰」

  • 予測: AlixPartnersの分析によると、2030年時点で世界のEVバッテリー生産能力はEVの総需要を約3倍上回る見込み。特に北米の生産能力は、この間に約4倍に拡大すると予想されています。
  • 現状: 既に2025年時点で、世界のEV電池生産能力は需要の3.4倍に達するとの調査もあり、バッテリー価格の下落や工場の採算悪化を引き起こしています。

大手メーカーの緊急対応と計画縮小

  • フォード(Ford):
    • SK Onと共同でケンタッキー州に建設中の58億ドル(約8,570億円)規模の巨大バッテリー工場の生産計画を35%削減。
    • 需要の低迷を受け、主力EVであるF-150 Lightningの生産を無期限で停止。
  • GM(General Motors):
    • LGエナジーソリューションと共同運営するオハイオ州とテネシー州のバッテリー工場で1,550人の従業員を一時解雇すると発表。理由として「短期的なEV普及の遅れと規制環境の変化」を挙げる。
  • パナソニック(Panasonic):
    • テスラ(Tesla)の主要サプライヤーであるパナソニックは、2026年度末までにフルスケール生産に達する予定だったカンザス州の新工場について、完全稼働開始時期を未だ発表できず。
    • 北米でのテスラ車などのEV需要減速の影響を受けている。
  • T1エナジー:
    • ジョージア州でのバッテリー工場建設計画を完全に中止。
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市場の減速と政策の転換が引き起こす「EVの冬」

EV需要の鈍化と政策の逆風

アメリカ国内でのEV販売の伸びは当初の予測よりも大幅に鈍化しており、さらには以下の外部要因が拍車をかけています。

  • 充電インフラの不足: 長距離移動への不安や、充電の手間の煩わしさなど、消費者がEVに移行する上での障壁が残っている。
  • 価格競争の激化: EV価格が下がってバッテリー価格も下落し(2026年には1kWhあたり80ドル程度と予測)、収益性の悪化を招いている。
  • 政策の風向き変化: トランプ前政権が示した政策(7,500ドルの連邦EV税額控除の撤廃や、排出ガス目標未達に対する罰則の撤廃など)は、自動車メーカーが内燃機関車(ICE)の生産を再度強化しやすくする方向に作用している。
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今後予想される「動き」

この供給過剰と投資縮小の動きによって、今後は以下の動向が予想されており、一時的な混乱は避けられないのかもしれません。

  • EV価格の下落期待: バッテリーの供給過剰と価格下落は、将来的にEVの販売価格がさらに下がる可能性を示唆。
  • 企業淘汰の時代: 過剰生産能力は、特に中国などで激しいEVブランドの淘汰を引き起こすと予測されており、競争力の低い企業は市場から撤退を余儀なくされる。
  • 長期的なリスク: 一方で、現在の過剰投資の反動で採算が合わなくなると鉱山開発や資源投資が縮小し、2030年以降に今度は原材料が足りなくなるという逆の問題を引き起こすリスクも抱えている。
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結論:試される自動車産業の長期戦略

このEVバッテリー市場の「供給過剰」は、自動車メーカーが立てた「楽観的な電動化ロードマップが現実の市場需要と乖離している」ことを明確に示しています。

フォード、GM、パナソニックといった大手企業が相次いで計画を見直している事実(日本だとトヨタもバッテリー工場の建設を延期している)は、EVシフトが一直線に進むものではないという現実的なメッセージを業界全体に投げかけています。

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しかし、これはEVの終焉を意味するわけではなく、むしろ市場の熱狂が冷め、「本当の競争力」と「長期的な持続可能性」を持つ企業だけが生き残る「EV産業の冬」の始まり、そして新しいステージへの序章なのかもしれません。

この逆風の中で、どのメーカーが最も効率的で革新的なバッテリー技術と生産体制を確立できるのか、その戦略が試されているのが今の状況であり、EV業界での「生き残り」は新たな局面に差し掛かったと考えることもできそうですね。

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参照:CARSCOOPS

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