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| ベントレー、EV専売計画を再延期 |
ベントレーはEVトランスフォームの急先鋒だと見られていたが
ベントレーは「ハイブリッドは完全EV化への過渡的手段である」としてハイブリッド車を投入せず、ガソリンからEVへと直接移行するとコメントし、その後2019年には「2030年までに内燃機関(ICE)廃止」と定めた電動化戦略「Beyond100」を発表。
しかし現実は厳しく、自らが「過渡的技術」として利用価値がないと断じていたハイブリッドシステムを(予定に反し)導入した後、2024年には元CEOエイドリアン・ホールマーク氏が「2030年以降もプラグインハイブリッド(PHEV)を継続販売する」と発表してその方針を大きく修正しています。
さらにその後、フランク・ステファン・ヴァリザー新CEOの下でEV専売化の時期はさらに延期され、2035年が目標に再設定されているというのが現在の状況ですが、これに加えて今回、同氏は 「ラグジュアリーEV需要は予想を下回っており、完全EV化を支えるほど顧客の支持が得られていない」 とコメントしており、三度計画の見直しを余儀なくされています。
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空白だったベントレーCEOの座にポルシェにて918スパイダーを開発した高位エンジニア、フランク=ステファン・ヴァリザーが就任。ベントレーの一層のハイパフォーマンス化に期待
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VWグループ全体でガソリンエンジン継続へ
高級EV市場の需要低迷はベントレーだけでなく、同じくフォルクスワーゲン・グループ傘下に収まるポルシェやアウディでも同様。
これらのブランド(とくにポルシェ)がガソリンエンジンの開発を継続することで、ベントレーも最新ICE技術へのアクセスを確保できるわけですが、実際のところ、ベントレーの最新モデルが使用するV8ハイブリッドはポルシェと多くを共有しています。
そして今後その傾向はさらに強くなるものと考えられ、というのもフランク・ステファン・ヴァリザー新CEOは「新卒でポルシェに入社した後、ポルシェ一筋」という人物でもあるためで、この人選は「フォルクスワーゲングループのトップが、ポルシェとベントレーとを結びつけようとしている」と考えることも可能です。
いずれにせよ、コンチネンタルGT、フライングスパー、そしてSUVのベンテイガは、今後もガソリン専用パワートレインを維持することが(今回の新しい計画によって)決定され、しかしもちろんベントレーではPHEVや将来的なEVも(ガソリンエンジンモデルと)併売されることとなるもよう。
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ベントレー、ポルシェ「GT部門」責任者の加入によって大きく方針転換。新型コンチネンタルGTにさらなる高性能モデルを開発中、「スーパースポーツ」復活の可能性も
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なお、フランク・ステファン・ヴァリザー新CEOはポルシェのGT部門にて責任者を努めていたこと、そして同氏がベントレーCEOに就任した後に示されたベントレーのニューモデルでは「スポーツ色が強い」ことから、今後ベントレーはロールス・ロイスはじめとする競合に対する排他性として「スポーツ性能」を掲げるのかもしれません。
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ベントレーCEOが突如辞任→2020年以降4人目となるアストンマーティンのCEOへ。ベントレーを大きく成長させた手腕発揮が期待される
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初のEVモデルはSUVに、ただし延期
ベントレー初のEVは2025年登場予定であったものの、これは1年延期され2026年に。
ベンテイガより小型のSUVで、過去に公開された「EXP 15コンセプト」をベースにしたデザインが採用されるのではないか、と見られています。
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「いま、富裕層は誰もがEVを拒否している」と発言したベントレーがなぜか「世界初、ラグジュアリー・アーバンSUV(EV)を発表する」と予告。納車を開始する2026年にはまたEV人気が高まると予測
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一方で同じVWグループ内のランボルギーニもEV計画を延期しており、初のEV「ランザドール(Lanzador)」の発表は2028年予定から2029年にずれ込んでいて、場合によってはPHEV化の可能性も残されています。
さらにポルシェは直近の投資家向けの説明会にて「予定していたフラッグシップEV(コードネーム:K1)の発売を中止し、かわりにガソリンエンジンを積む新型車をトップレンジに据える」と述べているため、「EVからガソリンへ」の動きはフォルクスワーゲングループ全体に通じる動きなのかもしれません(一方、VWとアウディは電動化への移行を意識した展開を継続しているので、VWグループでは上位プレミアムブランドとそのほかのブランドとの間で戦略を分けているようだ)。
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EU規制と高級車メーカーのジレンマ
こうした流れは、当初の「高級車EV化シナリオ」が現実と乖離していることを浮き彫りにしていて、ただしEUは依然として「2035年にガソリン車販売禁止」を掲げており、自動車メーカーは”板挟み”の状況に。
しかし年内にも欧州では「ガソリンエンジン搭載車の販売禁止」に関する規制内容の見直しが予定されており、ここで論じられるであろうPHEV存続の可能性に注目が集まります(もしガソリンエンジンの継続が認められれば、自動車業界のトレンドが大きく変わる)。
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参照:Autocar