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| 大きくなりすぎたMINIへ。チーフデザイナーが明かす「小さなMINI」への本音 |
ただし現代の安全性基準を満たしつつ「小型化」することは容易ではない
「MINI(ミニ)なのに、全然ミニじゃない」――。
これは、近年のMINIファミリー(クラブマンやカントリーマンなど)がモデルチェンジのたびに肥大化していく姿を見て、多くの自動車ファンが口にしてきた本音だとは思います。
クラシック・ミニが持っていた「驚異的な小ささ」「画期的なパッケージング」というアイデンティティが現代の安全基準や快適性と引き換えに失われつつあることも否定できず、そしてデザイナーもこれには「同じ意見」を持っていたことが明らかに。
この記事の要約
- 「小さなMINI」復活の兆し: 世代を重ねるごとに大型化してきた現代のMINIにおいて、ブランドの原点に立ち返る全長3.6m未満の超小型モデルの導入を検討中
- インスピレーション源: 15年前(2011年)に発表され、市販化が熱望されつつも幻となった伝説の都市型コンセプトカー「ロケットマン(Rocketman)」がベース
- 最大の障壁: 現代の厳しい歩行者安全基準や、先進運転支援システム(ADAS)に必要なセンサー類、高剛性な安全ボディを全長3.6mに凝縮することの難しさ

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15年前の幻「ロケットマン・コンセプト」が再び動き出す
今回MINIのチーフ・デザイナーを務めるホルガー・ハンプフ氏が英メディア『Auto Express』のインタビューに対し、ファン待望の「全長3.6メートル(12フィート)以下の超小型モデル」の可能性を本格的に検証していることを明かしており、MINIが今回、開発のベンチマーク(指標)として再びスポットライトを当てているのが、2011年のジュネーブモーターショーで初公開されたコンセプトカー「ロケットマン(Rocketman)」です。
このロケットマンは、現代のMINIハッチバックよりも一回り以上小さく、クラシック・ミニ(全長約3.05m)に近い「3+1」シートレイアウトを持つ都市型モビリティとして提案されたもの。
一方で全幅2メートル近い幅を確保することで室内空間の広さを確保しており、しかしそれによる「ドア開閉の困難さ」を解消するため、ドアが「一旦外に出てから開く」という画期的な構造を持っていたことも特筆すべきクルマです(つまり、かなり現実的なレベルでの検討がなされていた)。

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当時も市販化の噂が絶えなかったものの、最終的にプラットフォームの開発コストや安全性の確保がネックとなり、お蔵入りとなった経緯を持っていますが、ハンプフ氏はこのロケットマンのような超小型車の開発を「エキサイティングなプロジェクト」と表現しつつ、現代の自動車開発におけるリアルな苦悩を次のように語っています。
「確かに、私たちはこのサイズ(ボリューム)について研究を重ねており、3.6メートルの小さな車体に何が詰め込めるかを模索しています。しかし、それは決して簡単なことではありません。MINIを取り巻くすべての環境が大きくなっているからです。
歩行者保護に関する新しい法規制や、センサー技術の進歩。そして何より、現代のユーザーはアダプティブ・クルーズ・コントロールなどの先進運転支援システム(ADAS)の機能をあきらめたくはありません。これらすべてのテクノロジーが、クラシック・ミニや当時のロケットマン・コンセプトの頃に比べて増大し、車体を少しずつ大きくさせているのです」

実際のところミニが「大きくなった」といえど、他のクルマも「大きく」なっていて、これは時代の流れとも言うべきものであり、そして現代において小型化を目指すということは、ホルガー・ハンプフ氏のいうとおり「困難を伴う挑戦」なのだと思われます。
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ミニ・ロケットマン:車種概要、性能・デザイン・スペックなどの特徴、市場での位置付け
もし、この「令和のロケットマン」とも言えるモデルにゴーサインが出た場合、どのようなクルマになるのか、現在判明している情報と技術的背景からスペックや特徴をまとめてみると以下の通り。
予想される主要諸元・スペック
| 項目 | 仕様・特徴(予測含む) |
| 全長 | 3,600 mm未満 |
| ドア数 / 乗車定員 | 2ドア / 3+1人乗り(都市型レイアウト) |
| パワートレイン | 100%電気自動車(BEV:ピュアEV) |
| 想定される駆動バッテリー | 小型・軽量バッテリーパック(容量限定) |
| 航続距離 | シティコミューター(街乗り)に特化したショートレンジ |
| 主な安全装備 | 最新世代ADAS(先進運転支援)、歩行者保護センサー、超高剛性セーフティセル |
| デザインモチーフ | 2011年発表「MINI ロケットマン・コンセプト」 |

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「スマート」はすでに答えを出している
「現代の安全基準で3.6m以下の車を作るのは難しい」というハンプフ氏の意見がある一方、市場には強力な先駆者が存在します。
それが、メルセデスとジーリー(吉利汽車)の合弁会社となった「スマート(Smart)」で、スマートは直近において、かつての2人乗り超小型EV「EQフォーツー(Fortwo)」の後継モデルを示唆する「コンセプト #2(Concept #2)」を発表したばかり。
驚くべきことに、スマートの新型コンセプトの全長はわずか2,792 mmで、MINIが目指す3,600mmよりもはるかに短い寸法の中に、現代の最新安全基準とEVシステムを成立させたもの。
「スマートにできて、MINIにできないはずがない」――これが、世界のコンパクトカー市場からMINIへ注がれる、期待混じりのプレッシャーとなっています。

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ショートレンジ(短航続距離)は弱点にならないか?
このサイズでEV(電気自動車)を作る場合、物理的に巨大なバッテリーを床下に敷き詰めることはできず、そのため1回の充電で走れる航続距離は、大型EVに比べて短くなることが確実です。
しかし、これは「都市型モビリティ」として割り切れば決して弱点にはなりえず、毎日の通勤、買い物、都市部でのタイトな駐車スペースへのアプローチ。
街乗りがメインのユーザーにとって、重くて高価な大容量バッテリーはむしろ不要もあり、バッテリーを最小限に抑えることは、車重の軽量化に繋がり、MINIの本質である「軽快なハンドリング(ゴーカート・フィーリング)」を最も純粋に味わえるという、最大のメリットにも転化するというわけですね。

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ブランドの魂を守るため、MINIは再び「小さく」なるべきか
自動車の安全性が高まるのは素晴らしいことですが、すべてのクルマが同じように大きく、重くなってしまっては、街は「大きなクルマ」で溢れかえり、運転する楽しさは損なわれてしまいます。
「すべてのMINIモデルは、最高に安全(スーパー・セーフ)でなければならない」というブランドの鉄則を守りつつ、どこまで車体を絞り込めるか。今、MINIのデザイナーとエンジニアは、ブランドのプライドをかけた戦いに挑んでいる、ということなのかもしれません。
まだ市販化へ向けた最終的なグリーンライト(生産許可)は降りていないとのことですが、しかし、BMWグループ内で「カントリーマン(旧クロスオーバー)」がファミリーSUVとして十分な大きさを確保した今だからこそ、ボトムエンドを担う「本物のミニ」が輝くポジションが用意されているのだと考えることも可能です。
効率的なパッケージングで世界を驚かせた1959年のクラシック・ミニ誕生から半世紀以上。
EVという新しいエネルギーを得て、MINIが再び「本物のミニ」としてストリートに帰ってくる日を期待したいものですね。
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参照:Auto Express











