
| ロータスの親会社は現在中国の吉利、開発拠点が中国に建設され一部モデルの製造も中国へ |
このパワーユニットが既存エンジンのパフォーマンスを超えるのかどうかに注目が集まる
純粋なドライビングプレジャーを追求し続ける英国の至宝ロータス。
今回はその心臓部に前代未聞の大変革をもたらそうとしていると報じられ、現在、ミッドシップスポーツ「エミーラ(Emira)」に搭載されているトヨタ製の3.5L V6、そしてメルセデスAMG製の2.0L 直列4気筒ターボエンジンが”近い将来に”中国製へと全面刷新されることが明らかになっています。
ロータスといえば「トヨタ製エンジンという安心感」、そして直近だと「AMGの官能的な4気筒」に魅力を感じていたファンも多いかと思いますが、これらエンジンを捨てて中国製のハイブリッドユニットへと移行するという耳を疑うようなニュースが報じられ、しかし、この一見リスキーに見える選択の裏には、電動化への過渡期を生き抜くための、驚くほど合理的でエキサイティングな戦略が隠されているもよう。
ここでロータスがすべての未来を託した、この「誰も聞いたことがないエンジン」の真価について触れてみましょう。
この記事の要約
- 実績ある2社からの決別:信頼のトヨタ製V6と、強力なAMG製直4の供給が終了へ
- 謎の新興エンジン「Horse」の採用:ジーリー(吉利汽車)とルノーの共同出資による「Horse Powertrain」社製の3.0L V6ツインターボハイブリッドへ移行
- 世界最軽量・驚異のスペック:単体重量わずか160kg。モーター非作動時でも544馬力を叩き出す怪物ユニット
- 伝説の名車「エスプリ」復活へ:2028年には、最新アーキテクチャをベースにした1,000馬力超のV8ハイブリッドスーパーカーが登場予定

「6気筒」は継続されるものの
「Autocar」が報じたところによると、ロータスは大幅な改良を受ける2028年モデル(※海外市場向けのタイムライン)の「エミーラ」において、現在のパワートレインを一新するもよう。
新たに採用されるのは、「Horse Powertrain(ホース・パワートレイン)」社製の3.0L V6ツインターボ・ハイブリッドエンジンで、Horse社は、ロータスの親会社である中国のジーリー(吉利)ホールディングスと、フランスのルノーグループが2024年に折半出資で設立した合弁会社。
これまでは主に、大衆車向けの環境型低出力ハイブリッドを手がけるイメージが強かったため、今回のスポーツカーへの採用は世界中のエントージアストを驚かせる結果となっています。
ただ、このホース・パワートレイン社製のユニットは新型メルセデス・ベンツCLAのハイブリッド版にも搭載されることになると言われていて、これは「メルセデス・ベンツと(大株主である)吉利汽車との関係性」に由来するものであり、メルセデスAMG製からホース・パワートレイン製へとPUがスイッチするのは「大人の事情」によるものかもしれません。
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新型メルセデス・ベンツCLAには吉利汽車が開発した中国製のエンジンが積まれるもよう。さらには中国の新興企業による自立運転システムも組み込まれ、中国企業は「サプライヤー」としても重要な位置に
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なお、ロータスの最高経営責任者(CEO)である馮慶峰(フェン・チンフェン)氏は、この決断が特に重要な米国市場をはじめとする顧客からの熱い要望に応えたものだと語っており・・・。。
「お客様からは『V6エンジンが大好きだ』という声を多くいただいており、実際に米国市場ではV6モデルがベストセラーとなっています。だからこそ、私たちは6気筒の灯を消さない選択をしました」
この新型エンジンは、スペックシートを見るだけでも胸が躍る内容を持っていて、ホース・パワートレイン社が先月の北京モーターショーにて「W30」として発表したこの3.0L V6は、ハイブリッド(エレクトリックブースト)を一切加えないエンジン単体の状態でも(なんと)最高出力544PS、最大トルク700Nmを発揮するのだそう。※プレチャンバーを備えるマセラティ MC Puraの3リッターV6で630馬力
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何よりロータスにとって決定打となったのはその「軽さ」だといい、重量はわずか160kgに抑えられているそうで、、同社によれば「現在入手可能なV6エンジンの中で世界最軽量」。
競合他社のどのV6よりも約10kg軽く、多くの2.0L 直4ターボエンジンと比べてもほんのわずかに重い程度という、まさにロータスの思想である「ライトウェイト(軽量化)」を具現化したようなパッケージングとなっていますが、これが先日リークされた「エミーラ420 スポーツ」へと載ることになるのだと思われます。
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次世代ロータス・パワートレイン(Horse W30 V6)スペック表
| 詳細仕様 | |
| エンジン形式 | 3.0L V6 ツインターボ(型名:W30) |
| エンジン単体最高出力 | 536 hp (544 PS / 400 kW) |
| エンジン単体最大トルク | 700 Nm |
| エンジン単体重量 | 160 kg (約353ポンド) ※クラス世界最軽量 |
| ハイブリッドシステム | マイルドハイブリッド / フルハイブリッド / レンジエンステンダーに対応 |
| トランスミッション(基本設計) | モーター内蔵4速ハイブリッドトランスミッション(※ロータス独自のギヤボックスを組み合わせる可能性あり) |
| 主な搭載予定車種 | 改良型ロータス・エミーラ(2028年〜) |
世界最小・最軽量のハイブリッドV6がもたらす優位性
そしてホース・パワートレイン社CEO、マティアス・ジャニーニ氏はこのエンジンの驚異的なコンパクトさについて次のように説明しています。
「既存の4気筒エンジンの技術をベースにしたモジュラー設計(共通設計)を採用したからこそ、これほど競争力が高く、世界最小・最軽量のハイブリッドV6を実現できました。このサイズに収まるハイブリッドV6は、現在の世界に他に存在しません」
これまでのエミーラは「横置きのトヨタ製V6と、縦置き(元は前輪駆動用)のAMG製直4」という、全く異なる2つのパッケージを1つの車体に収めるため、非常に複雑な設計を強いられていましたが、しかし、ジーリーの企業エコシステム(グループ内供給網)にエンジンへと統合することで、ロータスは今後の開発を自社内で完全にコントロールできるようになり(つまり他社からの供給に頼らず自社でパワーユニットを調達することで効率的な設計ができる)、長期的な製造コストの削減にも繋がるということにも言及されています。

Image:Lotus
伝説の「エスプリ(Esprit)」が1,000馬力オーバーで復活へ
この変革はエミーラだけに留まらないとされ、ロータスは、かつてスーパーカー市場で一世を風靡した伝説の名前「エスプリ(Esprit)」を復活させた、全く新しいV8ハイブリッドスーパーカーを2028年に投入する準備を進めています。
この新型V8は、今回エミーラに載る新型V6のモジュラーアーキテクチャ(構造)をベースに開発され、電動アシストを組み合わせることでシステム出力は1,000馬力(986hp)以上に達するとも噂されており、つまるところ、ロータスの「中国化」が進むことになるのですが、なによりロータス信者にとって最大の朗報は、この新型エスプリ(開発コード:Type 135)が、エミーラとともに英国ヘセル(Hethel)の歴史ある本拠地工場で生産される計画だとされる点。
これにより、職人たちの雇用と、ブランドの伝統、なによりも「英国製」という矜持が守られることになるわけですね。
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新事業計画を発表したばかりのロータス。ニューモデル「Type135」の名称がエスプリとなることが「うっかり」漏れる。おそらくはセオリー1似のルックスで登場か
Image:Lotus | 現時点ではロータスからのコメントはなく、しかしこれは「ほぼ確実」であろう | ついに伝説の「エスプリ」が復活 ロータスは今後の未来戦略「Focus 2030」を発表したとこ ...
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「EV専売化」を撤回したロータスが気づいた、スポーツカーの真の価値
かつてロータスは「今後の新型スポーツカーはすべて電気自動車(EV)にする」と大胆な宣言を行っており、研究施設を中国に新設し、一時は「全車種の中国生産」を検討していた、とも。
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ロータスが今後「中国産」になるとの報道。親会社の吉利汽車が武漢に建設する新工場にて吉利、ボルボとともに生産予定
理論的に考えるとやっぱり「そうなる」 ロータスが中国の自動車メーカー「吉利汽車(Geely)」傘下となってしばらく経ちますが、その吉利汽車は中国・武漢に1500億円を投資して新しく工場を建設する見込み ...
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しかし今回、エミーラの延命と新型ハイブリッドエンジンの採用に舵を切ったのは、自動車業界全体を襲っている「EVシフトの減速」と「リアルな顧客の声」に直面したからで、実際のところ、ロータスはアルピーヌと共同でエミーラの後継となるピュアEVスポーツカーを開発する予定ではあったものの、市場の需要が見込めないと判断し、このプロジェクトを白紙に戻しています。

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止まらぬロータスの中国化。トヨタ・AMG製エンジンを捨て、新しくエミーラとエスプリに積まれるのは吉利汽車とルノーの新興合弁会社「Horse」のハイブリッドターボ
| ロータスの親会社は現在中国の吉利、開発拠点が中国に建設され一部モデルの製造も中国へ | このパワーユニットが既存エンジンのパフォーマンスを超えるのかどうかに注目が集まる 純粋なドライビングプレジャ ...
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スポーツカーを愛する人々が求めているのは、移動手段としてのクルマでも、直線番長的な加速でもなく、「エンジンの鼓動」「軽快なハンドリング」、そして「五感に訴えかけるドラマ」。
そして「V6を残す」「英国生産にこだわる」などモロモロの話を総合するに、今回ロータスが選んだ「ホース」製エンジンは、排ガス規制をクリアするためにエレクトリックモーターを足したハイブリッドではないと考えてよく、「4気筒並みに軽くてコンパクトなV6ツインターボ」を核とした、スポーツカーの命である前後重量配分やピュアなハンドリング特性を崩さないための、つまるところ「ロータスであり続けるための」選択なのかもしれません。
結論
長年親しんできた「トヨタ製」や「AMG製」というビッグネームが消えることは一見すると寂しく、あるいは一抹の不安を覚えるように思います。
しかし、これからのロータスが手に入れるのは他社からの借り物の心臓ではなく、自らのグループ内でスポーツカー専用に仕立て上げられた「世界最軽量の3.0L V6ツインターボハイブリッド」という、これ以上ない強力な武器であり、「軽量であること、そしてマルチシリンダー(多気筒)のロマンを残すこと」という2つを高い次元で両立させ、かつ英国にてエリーゼやエキシージを組み立てた人々の手によって組み立てられるというからには「本物のロータス」となるのは間違いなさそう。
そして新世代のエミーラ、そして1,000馬力を超える次世代のエスプリは、ぼくらが愛してやまない「ロータスらしさ」を未来の環境社会でも100%純粋な形で味あわせてくれるに違いなく、続報を楽しみに待ちたいと思います。
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参照:Autocar











