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| ロータス・エリーゼほど明確なステートメントを持つスポーツカーは他に類を見ない |
おそらくは「永遠に」自動車史にその名を刻む存在である
ついに「レストモッド」プロジェクトが発表されたロータス・エリーゼですが、このエリーゼは「ロータス(会社)を買収した実業家、ロマーノ・アルティオリ氏の下で誕生した」スポーツカー。
ただしロマーノ・アルティオリ氏は単に「ロータスの名を活用して一儲けしよう」と考えた商魂たくましい人物ではなく”生粋のカーガイ”だと考えていて、その理由としては「超軽量」というロータス創業時の思想をそのまま反映したエリーゼを「第一弾として」世に送り出したから(ロータスを買収し、高級化を狙ったプロトン、電動化を進める吉利汽車とは全く異なり、コーリン・チャップマンの精神を大事にしている)。
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実際のところ、同氏は「Eではじまる」ロータスの伝統のネーミングを採用したほか、ほぼ同時期に立ち上げた「新生ブガッティ(こちらは買収ではなく商標権の取得)」では、ブガッティ創業者であるエットーレ・ブガッティの信念「比較されるようであれば、それはブガッティではない」を体現すべく「V12+クワッドターボ」を持つ、元祖ハイパーカーとも形容されるEB110を発売しています(EB110という名称は、エットーレ・ブガッティの生誕110周年を意味)。
つまり同氏は「自分の作りたいクルマを作る」ためにロータスやブガッティの権利を取得したのではなく、「ロータスはロータスとして」「ブガッティはブガッティとして」、それぞれ創業者の精神を再現すべく両社を現代に蘇らせた人物だと考えてよいかと思われ、実際に両ブランドからは「全く異なるクルマ」を発売しているわけですね。
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ロータス・エリーゼの系譜
そしてここではロータス・エリーゼの系譜を見てみたいと思います。
初代エリーゼ S1(1996–2000年)
1996年にデビューしたロータス・エリーゼ S1は「発表されたその日から」軽量スポーツカーの代名詞に。
「画期的な」アルミ押し出し材を接着して組み上げたシャシーと、車重わずか755kgという驚異的な軽さが最大の特徴ですが、日本仕様だと「690kg」という”なにかの見間違い”と思ってしまうほどの軽さをもって登場しています。
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エンジンにはローバー製Kシリーズを搭載し(他社からの供給によるエンジンを搭載、というのもまたロータスらしい)、最高出力は118馬力。
数字だけ見れば控えめですが、軽量ボディと組み合わせられることで圧倒的な走行性能を発揮しています。
参考までに、「エリーゼ」という車名はロマーノ・アルティオリ氏の孫娘に由来するもので、その孫娘もまたエリーゼを愛車にしているという「ファンにとっては嬉しい」事実も報じられていますね。
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2代目エリーゼ S2(2000–2011年)
2000年に登場したエリーゼ S2では、排ガス規制に対応するため大幅な改良が施され、当初はローバー製Kシリーズを継続使用していたものの、後期モデルからはトヨタ製1.8リッターZZエンジンを搭載。
さらに高性能版としてエリーゼ 111RやSC(スーパーチャージャー)仕様が登場しています。
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3代目エリーゼ S3(2011–2021年)
S3エリーゼは外観のリファインに加えトヨタ製エンジンを継続採用。
1.6リッター自然吸気から1.8リッタースーパーチャージャーまで幅広いバリエーションを展開し、 2015年には軽量化を極めたエリーゼ Cup 250などのハードコアモデルも投入され、ロータスらしい走りを継承し続けることに。
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エリーゼの特別仕様・派生モデル
エリーゼは数多くの特別仕様車を生み出していて、ここでは代表的なものを紹介します。
- ロータス 340R(2000年)
屋根もドアも持たないサーキット直系モデルで世界限定340台。 - ロータス エキシージ(2000–2021年)
エリーゼをベースにした固定ルーフ+ハイパフォーマンス仕様。サーキット性能を重視したモデル。 - エリーゼ Cupシリーズ
空力パーツを追加し、軽量化と出力向上を行ったサーキット志向のグレード。 - 特別カラーや限定パッケージモデル
記念モデルや限定カラーなど、コレクターズアイテム的な仕様も多数存在。
エリーゼの終焉とエミーラへの継承
2021年、ロータスはエリーゼ、エキシージ、エヴォーラの生産終了を発表し、最後のロータス純スポーツとして後継を担うのがロータス・エミーラ(Emira)。
エリーゼが築いた「軽量・ピュアスポーツ」の精神は、電動化の時代を迎えるロータスにとっても重要な礎となっているものの、最後の「電動化されていない」スポーツカーでもあるこのエミーラは、「登場する前からその廃止が宿命付けられていた」モデルではあるものの、ロータスからぼくらへの「贈り物」だと捉えることも可能です。
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ロータス・エリーゼが与えた影響とは?アルピーヌA110やアルファロメオ4Cとの比較で見る軽量スポーツカーの系譜
ロータス・エリーゼの登場と哲学
1996年に誕生したロータス・エリーゼ S1は、アルミ接着シャシーと755kgという超軽量設計により、「小さく・軽く・シンプルであること」の価値を世界に再認識させることとなっていますが、この思想は「ライトウェイト・スポーツカー」の代名詞となり、後のヨーロッパ製スポーツカーに強い影響を与えることになります。
アルピーヌA110への影響
フランスのアルピーヌが2017年に復活させた新型A110は、エリーゼの軽量思想を色濃く反映したスポーツカー。
- 車重1,100kg台という現代車としては驚異的な軽さ
- 小排気量ターボ+軽量ボディで「パワーよりバランス」を重視
- ハンドリングを楽しむための設計思想
これらはロータスが築き上げたスポーツカー哲学を現代風に昇華させたものと言え、特に「大パワーではなく、軽さで楽しむ」というコンセプトはエリーゼが切り開いた路線そのものです。
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アルファロメオ4Cとの比較
イタリアのアルファロメオが2013年に発表した4Cもまた、エリーゼの影響を受けたスポーツカーの一例です。
- カーボンモノコックを採用し、わずか1,000kg強の車重を実現
- ミドシップレイアウトにより優れた操縦安定性を獲得
- 1.75Lターボエンジンで240馬力を発揮
エリーゼ同様に「軽さとピュアなドライビング体験」を最重要視しており、その姿勢はロータスの思想を受け継ぐにふさわしく、ただし4Cの場合は電子制御が強めで、エリーゼほど“原始的な軽快さ”には振り切れていない点も特徴です(アルファロメオという”メジャーメーカー”ならではの忖度であったのかもしれない)。
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エリーゼの哲学が示した未来
ロータス・エリーゼは、単なる1台のスポーツカーにとどまらず「軽量こそ最強の武器」という思想を自動車業界に再確認させたスポーツカー。
その影響はアルピーヌA110やアルファロメオ4Cのように現代に蘇り、電動化が進む今でもスポーツカーの根本的価値を問いかけています。
エリーゼが築いた道は、ロータスの後継モデルであるエミーラや、将来の軽量EV(あるいはハイブリッド)スポーツにも受け継がれ、ロータスの名を未来永劫人々の記憶にとどめさせることとなりそうですね。
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