
| ブガッティのカスタマイズは「デザイナー直々」 |
顧客といえど、「奇抜な」カスタムは制限される
ブガッティのクルマは1台1台がオーダーメイドであり、顧客の要望に応じた仕様をもって仕上げられることで知られていますが、ちょっと前には「ありとあらゆる要望を実現できる」という説明がなされています。
ただし現在の「ブガッティ・リマック」時代に移ってからは少し方針の変更がなされたようで、いかに顧客の要望といえども「ブガッティの意向に沿わない」仕様は指定できなくなっているもよう。
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なお、「メーカーの意にそぐわないカスタム」を受け付けなくなったというのはフェラーリでも同様ですが、これはハイエンドセグメントにおけるひとつのトレンドと言えるのかもしれません。
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ブガッティのカスタムには「デザイン部門責任者が直接関与」
この事実はモントレー・カーウィーク2025での取材によって明らかになっており、ブガッティ・リマックのデザインディレクター(デザイン部門の一番偉い人)、フランク・ハイル氏は次のように語っています。※フランク・ハイル氏は前任のアキーム・アンシャイト氏からこの任を引き継ぎ、トゥールビヨンがそのデビュー作である
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ブガッティの新しいデザイン責任者はこんな人。「私の夢は、いつの日か孫たちとコンクール・デレガンスの芝生を歩き、私がこの時代に作ったクルマを見せること」
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「毎週、世界中から送られてくるトゥールビヨンの仕様をチームと一緒にレビューしています。現在は『シュル・ムジュール』と呼ぶカスタムオプションも豊富に揃い、クリスタルガラスの色、特注のファブリックやカラーコンビネーションまで可能です。
ただ、私の使命は顧客の要望を実現するだけではありません。真に求められるのは、トゥールビヨンを100年後も価値を持ち続ける仕様へと導くこと。極端な配色や、流行に左右される要素は、さりげなく軌道修正していきます」
「時を超えるデザイン」のために
なお、この「100年後」という言葉はブガッティ・リマック時代になってから登場したもので、「トゥールビヨン」という、これまでのブガッティの(レーシングドライバーの名を関するという)命名法則から外れる車名もその考え方を如実に示したもの。
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ブガッティが「トゥールビヨン」のデザインプロセスについて語る。「我々の場合、単にハイパーカーを作るのではなく、次の100年を定義しているのです」。なお限定250台は一瞬で完売
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そもそも「トゥールビヨン」とは1795年に時計技師であるアブラアン-ルイ・ブレゲによって考案された複雑機構なのですが、そこから230年経過した現代であっても「腕時計に関わる最高技術のひとつ」あるいは象徴として語られることが多く、よってブガッティ・リマックは「時間が経っても色褪せない」存在の象徴として”トゥールビヨン”という名を車名として採用したわけですね。
実際のところブガッティ・トゥールビヨンそのものにも「時代の変遷による影響を受けない」機構やデザインが採用され、もっとも有名なのは「機械式腕時計のように動作するメーター」。
これは現在主流となっているデジタルメーターが「いずれ廃れる、あるいはほかの技術に取って代わられる」ことを想定したための選択であり、「大画面インフォテイメントスクリーン」を用いなかったことも同じ理由から(トゥールビヨンでは、格納式の小ぶりなインフォテイメントスクリーンが採用される)。
「大きなディスプレイはすぐに時代遅れになります。初代iPhoneを今欲しがる人はいませんよね。100年後にはARやホログラムの時代かもしれない。だからスクリーンではなく、永遠に残る“体験”に投資するのです」
つまり、現在のブガッティは「現代を象徴するテクノロジー」「性能数値」よりも「ドライバーズシートに座ったときの感覚」を大切にしている、と考えることが可能です。
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ブガッティがトゥールビヨンのデザイン決定過程を語る。「我々のクルマは100年後にも輝きを失ってはならないので、過去100年で色褪せていない技術に目を向けました」
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ソリテール・プログラム:究極のワンオフ製作
そしてブガッティは前体制時に「通常のオプションを超える」範囲のカスタムを行うプログラムとして「シュル・ムジュール」を立ち上げていますが、つい先日発足がアナウンスされたのがコーチビルド部門の「ソリテール」プログラム」。
Image:Bugatti
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ここではその第一号である「ブルイヤール」のような、完全に独立したワンオフモデルを製作することが可能であり、ボディ形状やパワートレーンすらも変更が可能だとされています。
ただ、こちらについても「ブガッティらしくない」「永続して価値を維持・発揮できない」クルマは受け付けることができず、それはフランク・ハイル氏の以下の言葉に現れているのかもしれません。
「もしお客様が『SUVを作ってほしい』と言ったら、私はノーと言います。私がSUVを嫌いということもありますが、なによりそれ(SUV)はブガッティらしくありません」
過去モデルの復活はあるのか?
現在ブガッティはリマック傘下において独立し、VWグループから離れたという状態です(ただしポルシェを通じて繋がったおり、トゥールビヨンの開発においてもVWの承認が必要だったと説明されているので、完全に分離したわけではないようだ)。
これによってベントレーやアウディとパーツを共有することはなくなりましたが(ヴェイロンはアウディTTのドアミラーを採用していた)、ヴェイロンやシロン、さらにはEB110といった伝説のモデルを将来的にリバイバルする可能性については「否定しない」とも。
つまり、現在のブガッティは以前の体制とは「やや」方針が異なり、よりエクスクルーシブに、そしてより歴史を重視した展開を行うとともに、より「長いタームでの未来」を見据えているということなのだと思われます(そしてフォルクスワーゲングループという足かせが外れることで、より自由になった)。
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まとめ
- ブガッティのカスタマイズはデザインディレクター直々の監修付き
- 流行を避け「100年後も色褪せない」タイムレスデザインを重視
- ワンオフ製作の「ソリティア・プログラム」で究極の顧客体験を提供
- SUVは「絶対に作らない」という明確な線引き
- 将来的な過去モデル復活の可能性も
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参照:CARBUZZ