このサイトについて

ブガッティのデザイナー「車両のカスタマイズについて、様々な要望が顧客から寄せられるのですが、あまりに奇抜なものは”さりげなく”軌道修正して顧客に提示しています」

ブガッティ

| ブガッティのカスタマイズは「デザイナー直々」 |

顧客といえど、「奇抜な」カスタムは制限される

ブガッティのクルマは1台1台がオーダーメイドであり、顧客の要望に応じた仕様をもって仕上げられることで知られていますが、ちょっと前には「ありとあらゆる要望を実現できる」という説明がなされています。

ただし現在の「ブガッティ・リマック」時代に移ってからは少し方針の変更がなされたようで、いかに顧客の要望といえども「ブガッティの意向に沿わない」仕様は指定できなくなっているもよう。

ブガッティが顧客によってカスタムされたディーヴォ4台を公開!「仕様を決めるだけで1年」「アジア人は斬新な色を好む」「子供の絵を入れてほしいという人も」

| ブガッティはほか自動車メーカーとは全く異なるところにリソースを割いていそうだ | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/49866040856/i ...

続きを見る

なお、「メーカーの意にそぐわないカスタム」を受け付けなくなったというのはフェラーリでも同様ですが、これはハイエンドセグメントにおけるひとつのトレンドと言えるのかもしれません。

フェラーリ
フェラーリ「カスタムカラーの範囲を制限し、今後”奇妙な”カラーのクルマを作りません」。ブランドイメージを守り、中古市場での流通可能性を重視

| フェラーリはクルマを売るよりも「ブランド価値を維持・向上させること」を考慮している | フェラーリは「中古市場で好まれない」仕様のクルマを作らない さて、フェラーリは非常に幅広い純正カスタムの選択 ...

続きを見る

ブガッティのカスタムには「デザイン部門責任者が直接関与」

この事実はモントレー・カーウィーク2025での取材によって明らかになっており、ブガッティ・リマックのデザインディレクター(デザイン部門の一番偉い人)、フランク・ハイル氏は次のように語っています。※フランク・ハイル氏は前任のアキーム・アンシャイト氏からこの任を引き継ぎ、トゥールビヨンがそのデビュー作である

L1012050

ブガッティの新しいデザイン責任者はこんな人。「私の夢は、いつの日か孫たちとコンクール・デレガンスの芝生を歩き、私がこの時代に作ったクルマを見せること」
ブガッティの新しいデザイン責任者はこんな人。「私の夢は、いつの日か孫たちとコンクール・デレガンスの芝生を歩き、私がこの時代に作ったクルマを見せること」

| ブガッティでのフランク・ヘイル氏の最初の作品はシロン後継のハイパーカー | ブガッティのクルマづくりに対する姿勢は今でも創業当時と変わらない さて、ブガッティは先日「19年もの間、ブガッティのデザ ...

続きを見る

「毎週、世界中から送られてくるトゥールビヨンの仕様をチームと一緒にレビューしています。現在は『シュル・ムジュール』と呼ぶカスタムオプションも豊富に揃い、クリスタルガラスの色、特注のファブリックやカラーコンビネーションまで可能です。
ただ、私の使命は顧客の要望を実現するだけではありません。真に求められるのは、トゥールビヨンを100年後も価値を持ち続ける仕様へと導くこと。極端な配色や、流行に左右される要素は、さりげなく軌道修正していきます」

L1012004

「時を超えるデザイン」のために

なお、この「100年後」という言葉はブガッティ・リマック時代になってから登場したもので、「トゥールビヨン」という、これまでのブガッティの(レーシングドライバーの名を関するという)命名法則から外れる車名もその考え方を如実に示したもの。

ブガッティが「トゥールビヨン」のデザインプロセスについて語る。「我々の場合、単にハイパーカーを作るのではなく、次の100年を定義しているのです」。なお限定250台は一瞬で完売
ブガッティが「トゥールビヨン」のデザインプロセスについて語る。「我々の場合、単にハイパーカーを作るのではなく、次の100年を定義しているのです」。なお限定250台は一瞬で完売

Image:Bugatti | ブガッティは「10年に一度」しかモデルチェンジを行わないため、デザイナーの仕事は他の自動車メーカーとは大きく異なる | トゥールビヨンでは「歴史」を重視し、これまでに発 ...

続きを見る

そもそも「トゥールビヨン」とは1795年に時計技師であるアブラアン-ルイ・ブレゲによって考案された複雑機構なのですが、そこから230年経過した現代であっても「腕時計に関わる最高技術のひとつ」あるいは象徴として語られることが多く、よってブガッティ・リマックは「時間が経っても色褪せない」存在の象徴として”トゥールビヨン”という名を車名として採用したわけですね。

L1012001

実際のところブガッティ・トゥールビヨンそのものにも「時代の変遷による影響を受けない」機構やデザインが採用され、もっとも有名なのは「機械式腕時計のように動作するメーター」。

これは現在主流となっているデジタルメーターが「いずれ廃れる、あるいはほかの技術に取って代わられる」ことを想定したための選択であり、「大画面インフォテイメントスクリーン」を用いなかったことも同じ理由から(トゥールビヨンでは、格納式の小ぶりなインフォテイメントスクリーンが採用される)。

L1011989

「大きなディスプレイはすぐに時代遅れになります。初代iPhoneを今欲しがる人はいませんよね。100年後にはARやホログラムの時代かもしれない。だからスクリーンではなく、永遠に残る“体験”に投資するのです」

つまり、現在のブガッティは「現代を象徴するテクノロジー」「性能数値」よりも「ドライバーズシートに座ったときの感覚」を大切にしている、と考えることが可能です。

ブガッティがトゥールビヨンのデザイン決定過程を語る。「我々のクルマは100年後にも輝きを失ってはならないので、過去100年で色褪せていない技術に目を向けました」
ブガッティがトゥールビヨンのデザイン決定過程を語る。「我々のクルマは100年後にも輝きを失ってはならないので、過去100年で色褪せていない技術に目を向けました」

| たしかにブガッティの考えることは「もっとも」である | このブガッティ・トゥールビヨンが実際の100年後に「どう見えるのか」は非常に興味のあるところである さて、ブガッティのチーフデザイナーはアキ ...

続きを見る

ソリテール・プログラム:究極のワンオフ製作

そしてブガッティは前体制時に「通常のオプションを超える」範囲のカスタムを行うプログラムとして「シュル・ムジュール」を立ち上げていますが、つい先日発足がアナウンスされたのがコーチビルド部門の「ソリテール」プログラム」。

8

Image:Bugatti

【世界限定1台】ブガッティが「創業者の愛馬」に捧げた特別モデル「ブリュイヤール」公開。新たなコーチビルドプログラム「ソリテール」の第一弾
【世界限定1台】ブガッティが「創業者の愛馬」に捧げた特別モデル「ブリュイヤール」公開。新たなコーチビルドプログラム「ソリテール」第一弾

Image:Bugatti | 新プログラム「ソリテール」から誕生した、唯一無二のクーペ「ブリュイヤール」 | 今後、ブガッティからは数々の「世界に一台」、唯一無二のハイパーカーが誕生しそうだ ブガッ ...

続きを見る

ここではその第一号である「ブルイヤール」のような、完全に独立したワンオフモデルを製作することが可能であり、ボディ形状やパワートレーンすらも変更が可能だとされています。

ただ、こちらについても「ブガッティらしくない」「永続して価値を維持・発揮できない」クルマは受け付けることができず、それはフランク・ハイル氏の以下の言葉に現れているのかもしれません。

「もしお客様が『SUVを作ってほしい』と言ったら、私はノーと言います。私がSUVを嫌いということもありますが、なによりそれ(SUV)はブガッティらしくありません」

過去モデルの復活はあるのか?

現在ブガッティはリマック傘下において独立し、VWグループから離れたという状態です(ただしポルシェを通じて繋がったおり、トゥールビヨンの開発においてもVWの承認が必要だったと説明されているので、完全に分離したわけではないようだ)。

L1011991

これによってベントレーやアウディとパーツを共有することはなくなりましたが(ヴェイロンはアウディTTのドアミラーを採用していた)、ヴェイロンやシロン、さらにはEB110といった伝説のモデルを将来的にリバイバルする可能性については「否定しない」とも。

つまり、現在のブガッティは以前の体制とは「やや」方針が異なり、よりエクスクルーシブに、そしてより歴史を重視した展開を行うとともに、より「長いタームでの未来」を見据えているということなのだと思われます(そしてフォルクスワーゲングループという足かせが外れることで、より自由になった)。

ブガッティ
ブガッティはトゥールビヨンの他にも様々なモデル展開を考えている?「ブガッティはスポーツカーだけを作ってきたわけではありません。フロントエンジンも可能です」

| たしかにトゥールビヨンの「250台」のみでは足りず、ブガッティは他の展開を考える必要がある | おそらくはロールス・ロイス同様、コーチビルドをビジネスの新しい柱とすることとなりそうだ さて、ブガッ ...

続きを見る

まとめ

  • ブガッティのカスタマイズはデザインディレクター直々の監修付き
  • 流行を避け「100年後も色褪せない」タイムレスデザインを重視
  • ワンオフ製作の「ソリティア・プログラム」で究極の顧客体験を提供
  • SUVは「絶対に作らない」という明確な線引き
  • 将来的な過去モデル復活の可能性も
ブガッティ・リマックCEOが語る「やりたくないこと」2つ。「ブガッティはもはやVWとはなじまなくなった」とも
ブガッティ・リマックCEOが語る「やりたくないこと」2つ。「ブガッティはもはやVWとはなじまなくなった」とも

| ブガッティ、リマックともに究極のパフォーマンスを標榜するブランドではあるが、構成される要素はそれぞれ異なる | いずれも重要なのは「ほかのクルマとは異なる、完全オーダーメイドであること」 さて、昨 ...

続きを見る

あわせて読みたい、ブガッティ・関連投稿

100年前に発表されたブガッティ タイプ35と100年後に発表されたトゥールビヨンには意外な共通点があった。「いずれもボルト1本に至るまで目的志向であり、ドライバーとの機械的な繋がりがあります」
100年前に発表されたブガッティ タイプ35と100年後に発表されたトゥールビヨンには意外な共通点があった。「いずれもボルト1本に至るまで目的志向であり、ドライバーとの機械的な繋がりがあります」

Image:Bugatti | ブガッティ「全てのパーツが明確な目的を持って設計され、独自のストーリーを語らなければなりません」 | ブガッティは「ブガッティ・リマック」へと耐性が変化したものの、ブガ ...

続きを見る

「他と比べられるようであれば、それはブガッティではない」。創業者の信念、卓越性の追求とブガッティの変遷(1)
「他と比べられるようであれば、それはブガッティではない」。創業者であるエットーレ・ブガッティの信念、卓越性の追求と経営破綻、そして再生(1)

Image:Bugatti | 序論:ブガッティの不朽の遺産 | ブガッティ創業者の魂はいまも製品に根付いている ブガッティは、自動車の歴史において最も崇拝されるブランドの一つとして、比類のない豪華さ ...

続きを見る

ブガッティ・ヴェイロンという“常識を超えた夢”を実現した人物──フェルディナント・ピエヒとは何者だったのか。けして限界を受け入れなかった男
ブガッティ・ヴェイロンという“常識を超えた夢”を実現した人物──フェルディナント・ピエヒとは何者だったのか。けして限界を受け入れなかった男

| 2005年当時、「1,000馬力」はまだ空想上の産物でしかなかった時代にヴェイロンを市販 | 限界を受け入れなかった男、それがフェルディナント・ピエヒである 自動車の技術が大きく進歩する時代(ある ...

続きを見る

参照:CARBUZZ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

-このサイトについて