| しかも、かつてテスラに講義をしたほかの人々もNIOのブースで働いているようだ |
さて、上海モーターショーにて、「展示されているテスラ・モデル3の上に女性が登り、テスラをさんざん批判する」という珍事件が発生したのは記憶に新しいところ。
このインパクトは中国人にとっても相当に大きかったと見え、現地メディアやSNSでも広く報じられており、多くの人がテスラにとってネガティブな感情を持つきっかけになったとも考えられます。
なお、そこまで中国で大きな扱いとなったのには理由があり、「自動車メーカーとして世界で最も高い時価総額を誇る、そして中国を侵略しようとする横暴なアメリカの巨大企業に対し、たったひとりの勇敢な中国人女性が立ち向かった」という構図ができあがったから。
これによって、多くの愛国心あふれる中国人が心を動かされたと言えるでしょう。
ただし事態は思わぬ方向へ
ただ、現在中国ではこの図式が崩れ去ろうとしており、逆に「テスラ優勢」になりつつある模様。
その理由は、この「たったひとり、テスラに立ち向かった女性が、テスラのライバル自動車メーカー、NIOの関係者ではないか」という疑いが濃厚になっているため。
これにはいくつかの根拠があり、まず彼女(張さん)はNIOのクルマに乗って上海モーターショーへとやってきたこと(彼女のSNSにて確認できる)。
そして次の疑惑は、事件の発生した4月19日は「プレスデー」であり、ジャーナリストやメディアパスを持っている人だけが入場できる日程であって、彼女が自身のSNSにアップした入場パスが、NIOのサプライヤーのひとつであるベバスト社発行のものだったこと。
ただ、このメディアパスはお金さえ出せばネットでも会場ででも購入できるので、彼女がNIOとの関係を持つと証明する決定打ではないものの、現時点で彼女はこれらの投稿をすべて削除済みです。
4月19日の抗議活動は見事に「組織化」されていた
そしてもっとも重要なのが、4月19日に行動していたのは張さんのほかに(少なくとも)3名おり、1人は彼女と同じTシャツを着ている女性、もうひとりはレポーターのような人物、そしてもうひとりはカメラマン。
そして張さんが警備員に引きずり降ろされ連行された際、このレポーターはカメラマンに対し、周到に準備されたテスラを批判するコメントを読み上げ、「テスラは中国国民を踏みつけて利益をあげている」と愛国心に訴える発言にはじまり、最後に「いったい誰がこんなクルマを買うのか」という衝撃的なセリフで締めくくっています。
こういった「組織化された」抗議活動を見るに、中国ネット民の間でも、「これは個人ユーザーのみで行われたものではなく、なんらかの団体が裏で手配を行っているのではないか」という見方が大きくなっているようですね。
さらにテスラに講義したメンバーはNIOで働いていた
そして、さらにこの憶測を現実だと思わせるのに十分なのが、「4年前の上海モーターショーにて、テスラに抗議した(当時)モデルXのオーナーが、今回の上海モーターショーにて、NIOのボランティアとして働いている」という事実。
すべては「間の悪い偶然」なのかもしれませんが、張さんはすべての情報を消し、わざわざ「抗議活動はNIOとは関係ない」というコメントを発していて、NIO自身も(張さんや、ボランティアの件に関し)「これらは抗議活動とは関係がない」というコメントを即座に発表しています。
つまりは「わざわざ言う必要がないようなことを」反射的に、かつ声を大にして主張しているところがさらに疑惑を助長しているわけですが、もしこれが「(NIO側の)ギルティ」であれば、世論が一気に傾くことになり、「人を呪わば穴2つ」を地でゆくことになりそうですね。