| EVはさらに、そして急速に進歩する可能性が高そう。普及初期に手を出すと痛い目にあいそうだ |
ポルシェが「4モーター」を持つエレクトリッククロスオーバーのテストが最終段階にある、とアナウンス。
現在ポルシェの持つピュアエレクトリックシステムは「2モーター(もしくはシングルモーター)」となり、つまりはタイカンに採用されるもの(プラットフォームは”J1”」。
このシステムでは、前後に配置された1個づつのモーターのトルクをそれぞれの「左右ホイール」へと振り分けることでトルクベクタリングを実現していますが、「4輪それぞれが独立したモーターを持てば」その必要がなくなる、ということになりますね。
なお、ピュアエレクトリックではなく「PHEV」だと、918スパイダーがフロントに独立したモーターを2つ持ち、左右のトルク配分を可能としています。
4個のモーターは簡単に制御できない
ちなみに4個のモーターをコントロールするのは容易ではなく、ポルシェいわく「一つのエンジンが4個のモーターに置き換わる」というのはつまるところ「エンジンが4個あって、アクセルが4つあるのと同じ」。
そしてその4つのアクセルペダルを「1つのアクセルペダルですむよう」適切にコントロールするための制御システム構築が非常に困難だとしています。
実際のところ、ごく単純な構造を持つ電動可倒式ドアミラーであっても「左右が完全に同じタイミングで」閉じたり開いたりしないため、「4つの車輪(モーター)を完全に同期させる」のは並大抵のことではないのでしょうね。
さらに4輪ベクタリングについては、ステアリングホイールに連動して4輪それぞれの駆動力を連続的に変化させることになりますが、理由は不明であるものの(コストとしか考えられない)ポルシェのエンジニアたちは現在のセンサー数量を増加させることを禁じられ、そのため今あるセンサーを有効活用すべく「ドライビング・ステート・オブザーバー」なるソフトウェアを開発し、これによって「一つのシステムで」ステアリングホイールの切れ角や加速減速状況、ブレーキの動作状況、4輪のグリップなどをモニターすることが可能になったとしています(必要は発明の母)。
ポルシェはすでにこの「4モーター」エレクトリックシステムを2年に渡りテストしているとのことで、「じき、プロダクションモデルにも搭載され、他を圧倒する評価を獲得するだろう」とコメント。
現時点ではどういったクルマに搭載され、どういった役割をメインに考えているのか(サーキット、それともオフロードか。ただし異テスト内容からするとオフロード)不明ではあるものの、ポルシェのことだけに「びっくり」させてくれるような走行性能を見せてくれそうですね。
ポルシェのルーツはもともと「4モーター」にある
なお、ポルシェ創業者が最初に作ったクルマは「4輪インホイールモーターの電気自動車」、通称ローナー・ポルシェ。
これは1899年の作品だとされますが、120年も前に「電気自動車の最適解」とも言えるレイアウトを実現していたというのは驚き以外のなにものでもありません。
ちなみに、4モーターを持つEVだとRIVIAN RT1(エレクトリックトラック)が存在。
未来的なルックスの「エレクトリックトラック」、Rivian R1Tが登場!4モーターを備えオン/オフ両方で高い走破性を発揮
リマックC_Twoも4モーターですが、この前身でもあるコンセプト・ワンも4モーター。
つまりリマックは現代において4モーターに関してかなり豊富なノウハウを持つということになります。
ポルシェは(今回出資比率を引き上げるより)以前からリマックに投資を行っていますが、リマックのバッテリー技術のほか、こういったモーター制御技術も獲得したかったのかも。
そして、ポルシェがリマックと関係を持つようになった後、ポルシェと同じグループに属するアウディも「4モーター」を搭載するコンセプトカーを次々発表しており、これは偶然ではなく「必然」であったと考えて良さそうです。
アウディがインホイール4モーターのエレクトリックオフローダー「AI:TRAIL quattro」発表。未来の自動車デザインはこうなる
そのほかコンセプトモデルだと中国テックルールズ、最近では三菱が発表した「マイテックコンセプト」も4モーターですね。
今後続々と4モーターEVが登場することになりそうですが、こういった状況を見るに、なかなかEVの「買い時」を見極めるのは難しい、とも思います(次々に新しい技術が登場するので、購入したモデルがすぐに”旧型”に)。
まるで砂上のランエボ、三菱「Mi-TECH(マイテック)コンセプト」発表!ガソリンのほか軽油、灯油、アルコールも燃料にできるガスタービンPHEV