| たしかにSUVはアクティブに見えて所帯臭くはなく、しかし人もモノもたくさん乗るというメリットがある |
正直、ボクもSUVは大好きである
さて、今回S&Pグローバル・モビリティが公開した統計によると、「SUVユーザーは、次もまたSUVを購入する比率が高い」もよう。
アメリカではこういった「顧客維持率」あるいはロイヤルティ調査と呼ばれる統計が非常に重要視されており、というのも製品市場は基本的に限られた顧客の奪い合いであって、生き残りをかけるならば(企業もまたリソースが限られているために)より可能性が高い市場にシフトすべきであると考える傾向があるため。
SUVユーザーがSUVに乗り換える確率は73%
そこで今回の統計を見てみると、SUVユーザーが次にSUVを購入する確率は73%もあり、それに対してピックアップトラックのユーザーがまたピックアップトラックを買う比率は48.8%、そしてセダンユーザーがまたセダンを購入する比率はわずか35.6%。
こういった数字を見るに、自動車メーカーはセダン市場からさっさと資本を引き上げてSUV市場に集中すべきであり、さらに言うならばSUVを「エントリーからハイエンドまで」ラインアップすべきで、たとえばエントリーモデルを購入したユーザーが、家族が増えたり所得が増えたりした場合に「ステップアップ」できる状況を整えることが最も重要だと考えられます。
ちなみに「SUVユーザーがSUVに乗り換える」という状況は11四半期連続で70%を超えていますが、こういった数字を見るに、フォードが「セダンやコンパクトカーから撤退してSUVとトラックに集中する」というのは至極正しい判断だったということになりそうです(実際にフォードの収益性は大きく改善し、株価もそれを示している)。
日本は基本的にこの考え方が難しい
一方で日本は「選択と集中」が苦手な企業が多く、取りこぼしを嫌う傾向にあるので、特定ラインアップに偏らず「フルラインアップ」を目指す傾向があり、これはこれで広く需要を拾うことができるものの効率がよろしくはなく、かなりロスが出てきます。
こういった「フルラインアップ」の端的な例はトヨタですが、日産はフルラインアップでありながらも各セグメントに「ヒーロー」を一車種だけ設けることで効率化を図っており(コンパクトカーだとノート、ミニバンだとセレナ、SUVだとエクストレイルといった感じ)、一方でスバルは「(ワゴンも含めて)SUV」に(ほぼ)集中することでブランディングを強化するといった方針を採用しており、これは日本の企業としてはかなり珍しい部類です。
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なお、イギリスだと日本とは反対の傾向が強く、ランドローバーのように「オフローダー専業」、ロールス・ロイスやベントレーの「高級車専業」、マクラーレンの「スポーツカー専業」、ロータスのスポーツカー専業、そのほかケータハムやノーブル、アリエル、モーガンなどを見てもそれがわかるかと思います(他国の資本が入り、性質を変化させつつあるブランドもある)。
そしてSUVに話を戻すと、日本の自動車メーカーは「総合ラインアップを目指すがためにリソースを分散させてしまい、そのためSUVを投入するのが遅れることになり、ラインアップに占めるSUV比率が低いために「同じブランド内で買い換える」比率が低くなっている、とも言われていますね(逆にSUVとトラックに特化したフォードは、フォード内での買い替え率が高い)。
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参照:S&P Global Mobility