■そのほか自動車関連/ネタなど

北米ではEVの事故請求が38%増加、修理費用は一般的なガソリン車の25%増し。しかし最新のガソリン車は「高度に複雑化」しているため修理費用はEV並み

EV

| 現在自動車業界は大きな波の間で揺れ動いている |

そして「なるようにしかならない」のもまた事実である

さて、2024年の米国ではEVの衝突事故請求が2023年に比べて38%増加したとの報道。

たただしこれは「EVの事故率が高い」というわけではなく、EVの販売増加に伴っての数値上昇であるとも捉える必要があり、その内容は慎重に見る必要がありそうですが、ここで衝突事故管理ソフトウェア提供会社、ミッチェルにて提供された内容を見てみましょう。

今後EVの事故件数が「増加してゆく」ことが予想される

この調査によると、2024年に米国で行われた全事故請求のうちEVが占めるのは2.71%で、これは前年に比較して38%の増加です。

カナダではその割合が3.84%と若干高く34%の増加となっていますが、これらの数字は北米全体でのEVの急速な拡大を示しています。

実際のところ、アルゴンヌ国立研究所とエレクトリック・オートノミーによると、米国では100種類以上、カナダでは75種類以上のEVモデルが販売されていて、年内にはさらに多くのモデルが登場する予定であり、この傾向は電気自動車が確実に定着しつつあることを裏付けるもの。

事故の頻度に関してだと、EVは2023年の8%から2024年には10.2%に増加しており、ミッチェルはこの2%の増加が「主に2024年後半の重大な事故請求の増加によるもので、すべての車両のパワートレインで一貫して見られた傾向」だと指摘しています。※事故増加の理由は不明である

L1011571

そして現時点で世の中のEVの大多数がテスラであることからもわかるとおり、テスラ車がEVの衝突事故請求では「支配的な立場」となっていて、モデルYとモデル3だと米国での請求頻度がそれぞれ31.43%と29.86%となっており、2024年での修理可能なEVの衝突事故請求の60%以上を占めることに。

さらにモデルS(5.53%)とモデルX(4.58%)を加えると、テスラのシェアは71.4%に達するといい、「テスラでない」BEVでトップ5に入ったのはフォード・マスタング・マッハE、そして請求頻度は6.37%。

ちなみに今回の調査では「EVの普及率上昇とEVの事故率の上昇」、そして「現時点でのEV登録台数におけるテスラの比率」を示していないため、いくつかの要素について判断できないことは要注意ですね。

保険会社「EVの事故はEVの特殊性に起因して修理費用が高額になる傾向がある。なおEVの事故は加速時に多く、ガソリン車に比較して50%多い」
保険会社「EVの事故はEVの特殊性に起因して修理費用が高額になる傾向がある。なおEVの事故は加速時に多く、ガソリン車に比較して50%多い」

| このままではEV普及のツケはそのユーザーに回ってきそう | これもまた急速にEVを普及させようとした副作用なのかもしれない さて、保険会社アクサ(AXA)がEV(電気自動車)の事故に関する特殊性を ...

続きを見る

ただしEVの修理費用が高額なのは「間違いない」

上述の通り「EVの事故”率”が内燃機関車(ICE)に比較して高いのかどうか」はわからないものの、同じくミッチェルの調査によると、2024年の衝突事故車両の修理費用の平均値を見る限り、EVと従来の内燃機関車(ICE)との間に顕著な違いがあることが明らかになっていて、もちろんEVの修理費用は高額にのぼり、米国では平均修理費用が6,236ドル、内燃機関車(ICE)は平均修理費用が5,066ドルということがわかっています。

これを見ると「意外とEVと内燃機関車(ICE)との差がないんだな」という印象ではありますが、驚くべきは「最新の内燃機関車(ICE)」の修理費用がEVに匹敵するほど高額になっており、これは最新の内燃機関車(ICE)に装備されるデバイスの高度化・複雑化が原因でもあるようですね。

カナダでもEVの高額な修理費用が話題に。450万円のEVのバッテリー交換費用が250万円、そのほかPHEVのバッテリー交換に220万円を要した例も
カナダでもEVの高額な修理コストが話題に。450万円のEVのバッテリー交換費用が250万円、そのほかPHEVのバッテリー交換に220万円を要した例も

|日本だとそれほど多く走る人が少ないせいか、あまり問題とはなっていないようだが | EVは維持費は安いものの、購入時は「高価」、売るときは「安価」、そして保険料やもしもの際のコストが高く、トータルで見 ...

続きを見る

なお、ここで気になるのは「事故後に修理できなかった」EVと内燃機関車(ICE)の比率で、ぼくとしては「EVはガソリン車に比較すると廃車になる確率が高いのでは」とも考えており、ここもちょっと気になるところ。

パワートレイン米国カナダ
BEV6,236ドル7,241カナダドル
I内燃機関車(ICE)5,066ドル5,576カナダドル
ハイブリッド4,726ドル6,104カナダドル
PHEV5,583ドル6,261カナダドル
最新の内燃機関車(ICE)6,127ドル6,818カナダドル

このほか、ミッチェルは「EVの価値が他のパワートレインタイプよりも早く減少している」ことを指摘していて、つまりは買取価格や中古価格が下がっているということですが、2024年の米国ではEVの平均総損失市場価値が大幅に減少して33,346ドル(-22%)、カナダでは40,203ドル(-18.5%)となったのだそう(これについても内燃機関車との比較はない)。

L1013582

合わせて読みたい、関連投稿

テスラ
EVの修理費用が高額なことはわかっていたが。最新調査ではガソリン車よりも20%高額なこと、しかし「廃車率」は同等、フレーム修復を要する確率も低いことが判明

| もう少しEVが普及して修理手法が確立されたり、パーツ代が安くなったりすると逆にEVの修理費用がガソリン車よりも安価になる可能性も | なお、現在データの多くを占めるのは「テスラ車」である さて、米 ...

続きを見る

「EVの整備を担当できる工場」「電気技師」が圧倒的に不足しているとの統計。このままでは修理期間の長期化、費用の高騰、保険料の上昇が懸念される
「EVの整備を担当できる工場」「電気技師」が圧倒的に不足しているとの統計。このままでは修理期間の長期化、費用の高騰、保険料の上昇が懸念される

| やはり何事も「自然に」任せないと色々な物事がついてこない | 急激に、そして無理やり物事を進めてしまうと必ず歪みが生じることに さて、現在世界中でEVの普及が加速している状態ですが、そこには様々な ...

続きを見る

メルセデス・ベンツ
「ちょっとした事故でも車両購入金額の2倍の修理費用を請求された」。中国にてEVオーナーから苦情が噴出。いったいなぜこんなことに?

| EVのコストの40~60%がバッテリーパックによって占められ、これを損傷すると「全交換」に | 加えてEVは販売台数がまだ少なく、パーツ価格が割高だとも指摘されている さて、現在「EV先進国」とい ...

続きを見る

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

-■そのほか自動車関連/ネタなど
-, , , ,