
| いずれこの時がやってくるとは考えていたが |
この記事のポイント(30秒でわかる要約)
- 2025年の世界販売台数で、中国メーカー(約2700万台)が日本メーカー(約2500万台弱)を初めて上回る見通し
- 中国国内でのNEV(電気自動車・PHV)普及率が6割に迫り、BYDや吉利が世界トップ10入りを果たす
- 日本車の「牙城」だった東南アジアでも中国勢が猛追、欧州や新興国でも輸出を急拡大
ついに「その時」が来た。20年続いた日本車王者の座に異変
長年、世界の道路を席巻してきたのは「Made by Japan」の車たち。
壊れにくく、燃費が良く、信頼できる。そんな日本車の圧倒的な優位性がいま「歴史的な転換点」を迎えています。
日本経済新聞のレポート(S&Pグローバル・モビリティ等のデータに基づく)によると、2025年の年間販売台数で中国メーカーが日本メーカーを追い抜くことが確実視されており、これは20年以上にわたって日本が守り続けてきた「自動車王国」の称号がついに隣国へと渡ることを意味しています。
H2:詳細:なぜ中国車はこれほどまでに「爆売れ」しているのか?
この逆転劇の背景にあるのは、単なる「安さ」ではなく、中国メーカーが(および中国が国家として)仕掛けた「エネルギー革命」と「全方位への輸出攻勢」が実を結んだ結果だとも言えるもの。
特に注目すべきは、中国国内市場の変貌で、乗用車販売の約60%が、電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)といった「新エネルギー車(NEV)」に置き換わる中、この波に乗ったBYDや吉利(Geely)が世界販売トップ10に食い込み、業界の勢力図を塗り替えてしまったというのが直近の状況です。
【データで比較】中国 vs 日本:2025年世界販売予測と市場動向
現在の勢力図を具体的な数字で見てみると、中国メーカーが「攻め」に転じている地域が明確に浮かび上がりますが、恐ろしいのは「北米」「日本」という自動車販売上位国における中国車のシェアがまだ(著しく)低いことで、もしこれらの国で中国車が販売を伸ばすことになれば中国車が「圧倒的王者」となるのは間違いのないところです。
| 比較項目 | 中国メーカー (2025年予測) | 日本メーカー (2025年予測) |
| 世界合計販売台数 | 約2,700万台 | 約2,500万台弱 |
| 中国国内シェア | 約70%を自国ブランドが占有 | 緩やかに減少傾向 |
| 東南アジア販売数 | 約50万台(急成長中) | 依然として強いがシェアを奪われつつある |
| 欧州販売数 | 約230万台(PHEVで関税を回避) | 横ばい、または苦戦 |
| 新興国成長率 | 中南米・アフリカで30%以上の増加 | 既存市場の維持に注力 |
参考までに、かつての日本では「アメリカ車(ほとんどフォード)のシェアが95%を誇っていたものの、その後日本の自動車メーカーが力をつけることでアメ車のシェアが「ほぼ無くなる」までに縮小しており、いまの中国市場ではこれと同じことが繰り返されようとしていて、しかし今回日本車は「シェアを奪うのではなくシェアを失う側」となるわけですね。
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中国メーカー躍進の3大要因
- 圧倒的なNEV比率: 国内販売の6割が電動車という「環境先進国」化
- 関税をかいくぐる戦略: 欧州の輸入関税に対し、関税対象外となるPHEV(プラグインハイブリッド)を大量投入
- 新興国への浸透: アフリカ(前年比32%増)や中南米(同33%増)など、かつての日本車のお家芸だった市場を席巻
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市場での位置付けと「日本車の危機」の正体
かつて2018年に世界販売3000万台に迫った日本車メーカーではあるものの、現在は米国市場での伸び悩みや中国市場でのシェア喪失が響いて販売台数は「縮小傾向」。
これまで日本車は「シンプルで壊れない」ことで世界を制してきましたが、現在の市場は「コネクテッド(接続性)」「電動化」「エンタメ性」という新しい価値観へとシフトしています。
そして中国メーカーはこの変化をチャンスと捉え、スマートフォンを作るようなスピード感で新型車を投入しているという現状があり、世界中の自動車メーカーが中国の勢いに飲み込まれつつあるのが2025年の現実というわけですね(日本は「自動車輸出ナンバーワン」の座を中国に奪われただけではなく、自動車販売台数においても中国に抜かれるということに)。
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日本車は再び「世界一」を奪還できるのか
2025年の逆転は日本車の絶対的な価値や魅力が下がったわけではなく、「戦うルールが変わった」ことの現れであるとも考えられ、中国勢の強みは圧倒的なスピードと電動化への集中ですが、一方で急速な拡大にはアフターサービスやブランドの定着といった課題も残っています。
対する日本メーカーも、全固体電池の開発やハイブリッド技術の再評価、そして「ライバル」である中国の自動車メーカーとの提携による新型車投入など逆襲の種は蒔かれており、ぼくらは今、「自動車の歴史の転点」を目撃しているのかもしれません。
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参照:Nikkei Asia















