
| 主要サプライヤーが挑む製造・業務改革の真価 |
コスト削減は「追い込まれなければ」意外とできないものである
自動車産業において原材料費の高騰やEVシフトに伴う巨額の投資が求められる中、いかにして利益率を維持・改善するかは世界中のメーカーにとっての最重要課題です。
そうした中、トヨタ自動車の主要サプライヤーであるトヨタ紡織が提示したコスト削減のアプローチは驚くほどシンプルで、それは「作る部品の種類そのものを減らし、構造をシンプルにすること」。
単に部品代を叩いて安くするのではなく、開発や製造、物流のムダを根底から削ぎ落とすトヨタグループならではの合理的な取り組みについて見てみましょう。
この記事の要約
- トヨタの主要サプライヤーであるトヨタ紡織が2030年に向けて部品の種類を33%削減する取り組み「RPT33」を推進中
- ヘッドレスト構成部品の76%削減や会議時間の42%削減など、製造から業務プロセスまで徹底した「ムダ取り」を実施
- 単なる値引き要請ではなく、「作る部品そのものを減らしシンプル化する」というトヨタらしい原点回帰のコスト削減策として注目されている

トヨタ紡織による「部品削減」と経営目標の概要
トヨタ紡織は、シートやインテリア構成部品を手掛けるトヨタグループの主要サプライヤーですが、同社は今期の予想営業利益率を現在の3.8%から2030年までに7%へと大幅に引き上げるという目標を掲げています。
この利益率向上の核となる取り組みが「RPT33」と呼ばれる戦略で、これは「部品種類の33%削減(Reduction in Part Types by 33%)」を意味しており、製造や製品設計の複雑さを大幅にカットすることを目的としています。
部品の種類を減らすことで、設計・開発だけでなく、購買、製造、在庫管理、物流に至るサプライチェーン全体の負担とコストを削減する狙いがあるとされ、「部品点数を減らす」ということは「様々な、それにかかわる業務や輸送・保管にまで影響し」、ひいては大きなコストの削減になるというわけですね。

RPT33:概要
トヨタ紡織が推進する取り組みの具体的な成果や次世代製品の仕様、業務効率化の数値は以下の通りとなっていて・・・。
主な取り組みと効果
- ヘッドレスト部品の76%削減: 自動車メーカーとの協業により、ヘッドレストを構成するパーツ数を従来の76%削減。製品の質を落とすことなく、よりシンプルな構造で製造可能に
- 薄型・軽量な次世代シートフレーム: 新世代のシートフレームは製造工程を減らしつつ自社生産比率を向上。競合の最も薄い製品と比較して20%薄く、最も軽い製品と比較して5%軽量化を実現
- 会議時間を42%削減: 製造現場だけでなく社内業務の「ムダ取り」も推進。「やめる、変える、より良い方法を見つける」取り組みの一環として、総会議時間を42%削減
- AIとプロセスイノベーションの活用: 設計ツールの自動化にAIを導入し、製造・物流過程でのムダを排除
参考までに、日産もコスト削減案を提示した際に「ヘッドレスト」にまで言及しており、つまるところヘッドレストには意外とコストがかかっているのかもしれません(たしかにモデルによっては昇降機能があり、様々な素材を用いた多様なパーツで構成されている)。

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トヨタ紡織の改革・数値目標一覧
| 項目 | 詳細・達成目標 |
| 営業利益率目標 | 今期予想3.8% → 2030年に7%を目指す |
| 部品種類削減(RPT33) | 全体の部品種類を33%削減 |
| ヘッドレスト部品削減率 | 構成部品を76%削減 |
| 次世代シートフレーム | 最薄競合比20%薄型化 / 最軽量品比5%軽量化 |
| 会議時間削減 | 社内総会議時間を42%削減 |
| 他社(非トヨタ)向け売上目標 | 2030年までに2022年比で3倍に拡大 |
参考までに、マツダは「ステアリングホイールのステッチ(の縫い方)を変更する」ことでコストを削減しているとも報じられ、自動車は非常に多くの素材を使用し、多くの工程を経て製造されるプロダクト故に「まだまだ削減できるところ」が大量に潜んでいるのかもしれませんね。

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他社の「コストダウン」
「製品や選択肢の複雑さがコストを押し上げている」という課題意識は、トヨタグループに限ったものではなく、例えば、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループも同様の戦略を推進していて、VWはモデルラインナップを最大50%削減し、ユーザーが選べるオプション設定を最大75%削減する方針を打ち出しています。
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しかし、両者には明確なアプローチの違いが見られるのが面白いところであり・・・。
- フォルクスワーゲン: グレードやオプションの「選択肢」を削減し、仕様の共通化でスケールメリットを狙う
- トヨタ(トヨタ紡織): 製品の内部構造や構成パーツ、さらには会議時間などの「製造・業務プロセス」そのものを徹底的に簡素化する
どちらも「少ない種類の構成でより多くの数量を売り、開発・製造・物流コストを分散させる」という思想は共通していますが、トヨタ側は現場の「カイゼン」思想が根底に流れている点が特徴的です。

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補足情報
今回の取り組みで非常に興味深いのは、トヨタ紡織が「ただコストを下げること」だけを目指しているわけではないという点で、同社は高品質・軽量化・低コストを両立した製品力を武器に、トヨタ以外の自動車メーカーへの外販を強化しようとしています。
具体的には2030年までに非トヨタ系の売上高を2022年レベルの3倍に引き上げる計画を掲げており、単なる親会社への奉仕的なコスト削減ではなく、競合他社に対しても圧倒的な価格・性能競争力を持つ強い製品を生み出すための「前向きな構造改革」である点が現代の自動車サプライヤーとしての生き残り戦略を象徴しているようにも感じられます。
結論
トヨタのコスト削減の秘訣は、下請けへの価格交渉や安易な安物買いではなく、「パーツ数を減らし、構造と工程をシンプルにする」という徹底した合理化が背景にあり、部品の76%削減や会議時間の42%削減といった具体的な成果は複雑化しすぎた現代の自動車づくりに対する強力な解法ともいえるもの。
トヨタ紡織が進めるこの徹底的なシンプル化と効率化は、今後の自動車業界における収益性向上モデルとして大きな注目を集めることとなりそうですね。

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参照:トヨタ紡織











