| BACのクルマはどうやっても「それを強く求める人」以外が購入するものではない |
であれば、それを求める人の要望・要求を掘り下げるのが正解である
さて、英国の少量生産メーカー、BAC(ブリッグス・オートモーティブ・カンパニー)が8月17日に開催されるモータースポーツ・ギャザリング「ザ・クエイル」にて新型車を発表するとしてYoutubeへとティーザー動画を公開しています。
このBACはアリエル・アトムのような「非常に」スパルタンなクルマを作ることで知られますが、欧州にはほかにケータハム、ドンカーブート(ドンケルフォールト)といったメーカーも存在するので、現地ではこういった ”極限まで研ぎ澄まされた、ピュアな” スポーツカーの需要がけっこうあるのだと思われます。
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新しいBACはどんなクルマに?
動画を見るに、この新しい「BAC」はこれまでの既存車種”MONO”と大きく差はなく、しかしBACによれば「対照的な "ビハインド・ザ・ホイール "の哲学を提供するために設計された」「伝説的なきらめくパフォーマンス、パワー、ハンドリングの特性を維持しながら、現在の製品ラインナップに新たな次元を加えることになる」と述べており、これまでのBACのコンセプトを維持したモデルであることもわかります。
つまり、ケータハムが発表した「プロジェクトV」のようにルーフを装着した3人乗り、そして日常性を考慮したスポーツカーではなく、これまでのMONOと同じく超シンプルなスパルタン路線を貫くものと考えていいのかも(ケータハムは新しい顧客と路線を模索した新型車を発表したが、BACはそうではなく、現行路線を極めるつもりだということになる)。
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ちなみにですが、BACはつい最近、元マクラーレンCEOであったマイク・フルーイット氏を会長に迎えており、今回の新型車は同氏着任以後にリリースされるものなので、マイク・フルーイット氏の意向が盛り込まれている可能性が大。
そこから推測するに、BACは利益率を高めるべく「高度なパーソナリゼーション」を導入するのかもしれません。
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BACのクルマは万人受けするものではない
というのもBACのクルマは非常に特殊であり、その価格や性格を考慮すると「スポーツカー好きであっても、その中の1%以下の人しか買わないであろう」とも考えられ、BACのクルマ(現在だとMONOしかない)に惹かれる人はけっこう多くとも、実際にこれを購入する人はごくわずかだと思われます。
そしてたとえBACがMONOの廉価版を発売したとしても購買層の裾野を広げることはまず無理だろうと思われ、むしろ既存のMONOの利益を侵食してしまうだけなのかもしれません。
そう考えると、「どうやったとしても、一定の、ごく小数の人しか買わないだろう」と割り切って、さらには「そういった人々は、いかに高額であっても自身が満足できるものであればその対価を支払うであろう」という考え方にシフトして、よりMONOの価値を引き上げることに専念するほうが正解なんじゃないかと思うわけですね。
となれば、MONOにパーソナリゼーションプログラムを取り入れ、オーナーの希望に応じたカラーはもちろん、ボディ(というかパネル)の形状や素材などを求められるままにカスタムし、そのぶんの代金をもらうことが「利益がプラスに働く」という可能性がありそうです。※顧客も満足し、またBACのクルマを買う可能性も高まる
参考までに、マイク・フルーイット氏はマクラーレンにてMSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)の展開に注力し、そこで様々なカスタムを請け負うことで「1台あたりの」利益を押し上げることに成功しており、その方程式をBACにも持ち込もうと考えているのかもしれません。
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そしてこういったパーソナリゼーションはMONOのようなクルマにこそマッチしており、オーナー層の変化(これまでは純粋に走りを求める人が多かったと思われるが、現代では”変わったものが欲しい”という富豪が少なくない割合を占めるものと思われる)に対応するということまで考え合わせると、BACの利益を大きく押し上げることになるのでは、とも考えています。
加えて、BACはオーナー、そしてポテンシャルカスタマーとの接点が(その会社規模や露出、拠点から推測して)希薄だと思われ、しかしこういった「パーソナリゼーション」につき、ある意味では有効なコンタクトポイント、プロモーションとして機能する可能性もありそうです。
BACが公開した、ナゾの新型車のティーザー動画はこちら
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参照:BAC