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マクラーレンがW1に採用されるハイブリッドシステムの詳細を公開。「P1に比較し40%の軽量化と90%の出力向上、これだけでホットハッチ並みのパワーを発揮」

マクラーレンがW1に採用されるハイブリッドシステムの詳細を公開。「P1に比較し40%の軽量化と90%の出力向上、これだけでホットハッチ並みのパワーを発揮」

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| マクラーレンW1に採用されるハイブリッドシステムは「10年分の歳月による技術の進化、積み重ねたノウハウ」が反映されている |

「エンジン」と「ハイブリッド」を同時に設計したことで「1+1を2以上に」

さて、マクラーレンは「P1の後継モデル」としてのハイパーカー「W1」を発表していますが、このW1は「V8+ハイブリッド」というP1同様の構成を持っています。

ただし文字上では「同じ」に見えるものの、実際の両者のパワートレーンは全く異なるもので、今回マクラーレン自らがW1に採用されるパワートレーンの「新しさ」について語るコンテンツを公開しています。

参考までに、マクラーレンP1のハイブリッドシステムを理解する鍵は「トルクフィル」というフレーズですが、これはシンプルなコンセプトで、V8エンジンにツインターボを使って大きなブーストをかけ、そこから生じるラグをエレクトリックモーターによる”即時かつ最大のトルク”で補うというもの。

一般にブースト圧が大きくなればなるほどターボラグも大きくなるものですが、このラグをエレクトリックモーターにてカバーしようということですね。

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この10年でハイブリッドシステムは大きく進化を遂げる

そしてP1から10年後に登場したW1では「同じV8ハイブリッド」といえど、全く新しい考え方や技術を採用しており、新しいハイブリッドシステム、そしてエレクトリックパワーと内燃機関を融合させるための新しい哲学を完成させています。

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実際のところ、W1に採用されるハイブリッドシステムはマクラーレンがこれまで行ったことのないもので、マクラーレンのパワートレイン担当チーフエンジニア、リチャード・ジャクソン氏によれば「旧型のトルクフィルアプローチではハイブリッドシステムが過度に負荷をかけられてしまう」。

よってW1では巨大なターボチャージャーを持ちながらもリニアな反応性を持ち、必要な時にモンスターのようなブーストを提供するエンジンを目指したと述べ、そしてこのエンジンはリカルド社との共同開発による新設計の4.0リットルV8「MHP-8」。

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「4リットルV8」というところこそは(P1と)同じですが、このエンジンはハイブリッドシステムとの組み合わせを前提に設計された「完全に新しい」もので、これまでのエンジンに比較してボアが少し縮小され、逆にストロークは長く設計されることに。

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それでもこの新型エンジンは92mmのボアと75mmのストロークを持ち、依然として大きなオーバースクエアエンジンではありますが、レッドラインは9,200rpmに設定され、エンジン単体の出力は916馬力(トルクはP1に搭載されるV8と同じであるが、この新型エンジンのほうがより多くのパワーを発生する)。

そしてこのエンジンにはいくつかの特筆すべき要素があって、まずはマクラーレンの初のデュアルフューエルエンジンで、ポートインジェクションとダイレクトインジェクションの両方を備えていること。

また、最初のナトリウム充填インテークバルブを採用するほか、ボア間隔短縮、プラズマスプレーシリンダーライナー、チェーンドライブ短縮化によってエンジンの全長を縮小しているほか、エンジンの高さと重心を低く保つことを目的としてターボチャージャーは従来通りエンジンの外側に取り付けられています(メルセデスAMGやフェラーリが採用するホットVではない)。

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特筆すべきは、このターボはポルシェやメルセデスAMG、フェラーリ(F80)が採用する電動ターボではなくコンベンショナルな「排気によってタービンを回転させるターボチャージャー」を選択したということで、その狙いは「重量低減」そして「その分の電力を車両駆動用エレクトリックモーターに使用したほうが効率的だと判断したから」。

このあたり、4リッターという排気量がこれを可能にしたのだと考えてよく(小排気量であれば電動ターボで加給しないと低回転域でのトルクがスカスカになる)、各社各様の考え方があって面白いところではありますが、フェラーリだとSF90ストラダーレにおいて「ガソリンエンジンを(低速トルクを犠牲にして)高回転型に設計し、低速域はエレクトリックモーターによるアシストによってカバーする」という思想を取り入れています。

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話をマクラーレンW1に戻すと、そこに用いられるハイブリッドシステムのもう一つの目標は、「パワーを増加させる一方で、重量を減らすこと」。

この目的に従い、マクラーレンはP1のハイブリッドシステムに比較して約40kgの軽量化と90%もの出力向上を実現し、実際にハイブリッドシステムのみでも「ホットハッチ並みの」342馬力を発生させます。

なお、マクラーレンW1のバッテリーは、(驚くべきことに)P1に比較してかなり小さく、P1では4.7kWh、しかしW1では1.4kWhにとどまり、さらにその重さはP1での106kgに対してわずか50kg。

これは「バッテリーの進化」がそのまま反映されたと考えてよく、しかしマクラーレンはP1に対してもバッテリーアップグレードを提供しており、「当初装着されるバッテリーの半分の重量」を実現できるというプログラムを提供していますね。

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一方でW1の「ピュアエレクトリックモード」での走行距離はP1の13kmからW1では2,5kmへと減少しているものの、ここについてはマクラーレンの言う通り「誰も気にする人はいない」のかも。

つまりマクラーレンはパフォーマンスを重視した軽量ハイブリッドシステムの創出に注力していて、エンジンと同時に設計することで「ガソリンエンジンとエレクトリックモーター」双方のメリットを最大化し、それぞれ単体では達成できない領域に踏み込んでいることがわかります。※つまり単にガソリンエンジンにハイブリッドシステムを付与しただけのものではなく、しかしP1に採用されていたエンジンはもともとハイブリッド化を想定して設計されたものではない

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参考までに、W1に積まれるバッテリーはスピードテールにて採用された「円筒形セル」バッテリーを発展させたもので、しかしW1のほうがより容量が小さく軽いと言うので、やはりW1では「軽量性とパフォーマンスとの最適化」が徹底して行われていると考えていいのかも。

そしてもう一つ参考までに、アルトゥーラに積まれるバッテリーは7.4KWhと比較的大きく、重量も90kgあるため「かなり大きい」ということに(アルトゥーラに積まれるのは3リッターV6であり、これはこれでエンジンとのマッチングを考慮した仕様だと思われる)。

W1のエレクトリックモーターとその制御ユニットについては、マクラーレンが「E-モジュール」と呼ぶ単一ユニットに搭載されており、その重さはわずか20kgしかなく、これは8速デュアルクラッチトランスミッションの横に取り付けられていますが、この配置によって各部に過度な負荷をかけることなく高トルクを吸収できるようになったといい、これはマクラーレンの現在および過去のすべてのハイブリッドシステムとは異なるアプローチです。

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マクラーレンはまた、ドライバーエンゲージメントを高めるために多くの工夫を施していて、コンポーネントの剛性を最適化を行い、長いエキゾーストマニホールドを取り付け、タイミングシステムを後部に配置することによって「より良い音と心地よい振動」を提供しているのだそう。

そのほか注目すべき詳細として、MHP-8には中空カムシャフト、バルブトレインのフィンガーフォロワー、そして水冷ジャケット内には3Dプリントされたコアが採用されて、エンジン単体だとP1に採用された4リッターV8に比較して10kg軽量で、しかし出力性能は15%向上しています。

そしてこのエンジンは「ハイブリッド」との組み合わせのみによって最高のパフォーマンスを発揮すると見え、実際にマクラーレンは今後「非ハイブリッドモデルを作る予定はない」ともコメントしています。

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