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はじめて「カーボンモノコック」シャシーを持つロードカーを発売したマクラーレン。先駆者としてカーボンファイバーの製造方法に革新をもたらし、その可能性を押し広げる

はじめて「カーボンモノコック」シャシーを持つロードカーを発売したマクラーレン。先駆者としてカーボンファイバーの製造方法に革新をもたらし、その可能性を押し広げる

| 新しいカーボンファイバー製パーツの製造手法はW1へと盛り込まれる |

マクラーレンW1には3Dプリンタ製サスペンションも採用され、「技術の見本市」に

さて、マクラーレンが「ART」と呼ばれる新しいカーボンファイバー製造技術を実用化し市販車に導入すると発表。

なお、市販車におけるカーボンファイバーの歴史はパガーニ創業者であるオラチオ・パガーニ氏とともにはじまったというのが通説で、同氏はランボルギーニにて技術主任を務めていた時代にこの素材に着目し、まずはカーボンファイバー満載の「カウンタック・エボルツィオーネ」を試作することに。

そこでカーボンファイバーの「未来」を確信した同氏はランボルギーニに「カーボンファイバーを焼成するための釜」を購入してくれるよう上申するもののあっけなく断られ、そこでランボルギーニを辞した後、ブガッティを経て自身の自動車メーカーを設立しているわけですね。

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2025年、カーボンファイバーに革新が起きる

そこで今回マクラーレンが「カーボンファイバー製パーツの製造に革新を興した」として”ART”なるテクノロジーを紹介しているのですが、これは簡単にいうと「カーボンファイバー製パーツをより速く、適切な強度と形状・構造で、無駄なく作れる技術」です。

これまでカーボンファイバーを使用したパーツを製造しようとなると、(一般には)カーボンファイバーによって織られたシートを切り出して「型」の上に職人が貼り付け、そこに樹脂を浸透させて硬化させるというもので、非常に手間がかかっていたわけですね。

そこでマクラーレンは「完全なカーボンファイバーモノコックを持つロードカー(F1)を初めて史上投入した」という知見を活かして今回その製造方法の革新を行っており、それがこの「ART」。

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「より軽く、無駄なく、より優れたカーボンファイバー製パーツ」の製造が可能に

これはいったいどういった手法なのかというと、「大きなプリントヘッドがカーボンコンポジットテープを必要な位置に細く連続的に貼り付けてゆく」というもので、この方法を用いると「テープを異なる角度や量で配置し、柔軟性や強度を調整することができる」のだそう。

これによってもたらされるメリットは数しれず、まずはこれまでのようにシートを貼らないために作業スピードが速いこと。

そして一枚のシートでは不可能であった「同じパーツ内において、一部を薄く、一部を厚く」といった作り方が可能となったこと(同じカーボンファイバー製パーツであっても、今までより軽く作ることが可能となり、これは車両の設計そのものに変革をもたらす可能性がある)。

さらにマクラーレンはこの新しい方法の最大の利点として「材料の無駄を減らせること」を挙げており、これまでの手法だとシートから切り取った残りの部分は無駄になりやすく、それが環境にも経済的にも問題を引き起こすのですが、しかしARTでは必要な分だけ材料を使用するために無駄が大幅に削減され、このプロセスでは生産されたカーボンシートの95%が最終的に部品として使われる、と述べています。

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マクラーレンはこの「より軽く、無駄なく、より優れたカーボンファイバー製パーツ」をW1へと導入することについてもコメントしており、たとえばフロントウィングの固定部分にこのパーツを導入することにより、従来のカーボンファイバー製造方法によって作られたパーツと比較して「10%硬くなる」とも。

現在まだまだW1は開発の途中であると思われ、そして開発が完了した時点では、これらのパーツによって「発表時よりも軽いハイパーカー」に仕上がっているのかもしれませんね。

マクラーレンの新しいカーボンファイバー製造方法「ART」を紹介する動画はこちら

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参照:McLaren Automotive

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