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まさかのロールス・ロイス×オーデマ ピゲのコラボが実現。開発費43億円以上、「ドロップテイル」公開。フランスの顧客が「バラ」をモチーフにオーダー

まさかのロールス・ロイス×オーデマ ピゲのコラボが実現。開発費43億円以上、「ドロップテイル」公開。フランスの顧客が「バラ」をモチーフにオーダー

| ロールス・ロイスらしくないデザインにロールス・ロイスならではの技術を詰め込んだ「もっとも高価なワンオフモデル」

可能な限り凹凸を抑え「フラッシュサーフェス」に

さて、ロールス・ロイスが最新コーチビルド「ドロップテイル”ラ・ローズ・ノワール”」を発表。

これはロールス・ロイス近代史上初のロードスター(2ドア、2シーターのドロップトップ)で、1912年のシルバー・ゴースト「スラガード」、1925年のシルバー・ゴースト・ピカデリー、1930年のファントム・ブルースター・ニューヨーク・ロードスターからインスピレーションを得たとされ、しかしあくまでも、これらからは「インスピレーションを得たのみ」にとどまり、このドロップテイルのデザインは独自のものと考えて良いかと思います。

なお、このドロップテイルはロールス・ロイス市場もっともコストがかかった一台だとされ、「開発費用のみ」でおおよそ3000万ドル(現在の為替レートにて約43億6000万円)。※ドロップテイルは合計で4台が製作される予定だとされるので、開発コストをその4台で分担することになる

にわかには信じがたい額ではあるものの、その理由はモノコックそのものがこのドロップテイル専用に製作されているためで、アルミニウム、スチール、カーボンファイバーの複合素材にて構成されている、と紹介されています。

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ロールス・ロイス・ドロップテイル”ラ・ローズ・ノワール”は究極のカスタム仕様

つまりこのドロップテイル・ラ・ローズ・ノワールは「ちょっとやそっと内外装を変更して終わり」ではなく、「本物の」オーダーメイドということになりますが、そのぶんこれまでのロールス・ロイスに見られない仕様やデザインが多々見られ、たとえばパンテオングリルのベーンは初めて上部が折れ曲がり、「テンプルブロウ」と呼ばれる張り出しがアッパーフェイシアに被さるように。※グリルフレームも非常に小さい

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その一方、ボディラインは非常になめらかであり、これまでのロールス・ロイスに比較するとフラッシュサーフェス化が図られているようにも思います(クラシカルさよりも近代的・未来的な印象がある)。

できるだけ構成部品を少なく見せることを考慮しているのか、ドアハンドルにはロック機構とインジケーターランプ(ウインカー)を内蔵し、かつ通常モデルではフロントフェンダーに備わるロールス・ロイスの「バッジ・オブ・オナー」も見られないようですね。

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ホイールはブレード状のスポークを持つ立体的なデザインで、カラーシフト塗装を施した後に切削加工を行っています。

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そしてこのロールス・ロイス・ドロップテイル最大の見所はリアのデッキセクションと「セイル・カウル」。

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特に注目すべきは、そのテーパー形状にもかかわらずダウンフォースを発生させているリアエンドで、スポイラーなしでこれを機能させるには、2年以上の歳月と20回もの繰り返しが必要であった、とのこと。

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そのほか、縦型のテールライト、大型リアディフューザー、デタッチャブルルーフなどは「ドロップテイル特有のデザイン」となっていますが、このルーフはカーボンファイバー製で、エレクトロクロミック・セルフティントガラスが採用され、ホットロッドにインスパイアされた「トップチョップ」的な外観を演出しています。

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ちなみにルーフを外すとこう。

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このロールス・ロイス・ドロップテイル・ラ・ローズ・ノワールは「フランスのコレクター」によって発注がなされ、「光の加減で色が変化するベルベットのような花、フランス産のブラック・バカラ・ローズにインスパイア」されたといい、これは日陰では黒に近い濃いザクロ色に見え、陽が当たると燃えるようなレッドへと変化するのだそう。

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よってボディカラーは(画像ではわかりにくいものの)光の当たり具合によってトーンが変化する色合いを持つものと思われ(つまりカラーシフト塗装)、これらの色合いにつき、濃い方の色合いは「ミステリー」、明るい方は「トゥルー・ラブ」と名付けられています。

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ボディはベースコートとして濃いほうの「ミステリー」にて塗装された後にクリアラッカーが5層重ねられ、それぞれ微妙に異なるトーンのレッドがブレンドされることで「トゥルー・ラブ」が生成されることになり、しかしこれにはまったく新しい塗装工程が必要で、完成までに150回以上もの試作が繰り返されたようですね。

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さらに、通常ならクロームメッキが施されるはずのブライトワーク(シルバーのパーツ)は無塗装にて仕上げられ、こちらはハイドロシェードと呼ばれる新開発の加工方法を用いているそうですが、メッキ工程で特定のクロム電解液が使用され、各ステンレススチール基材にわずか1ミクロンの厚さで蒸着された後、手作業で研磨されてこの美しい風合いをもたせることに成功しています。

なお、このパンテオングリルのベーン内には「明るい方のレッド」、トゥルー・ラブがペイントされることに。

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さらにフロントグリル下部には「202個のステンレス・スチール・インゴットを手作業で磨き上げた」エレメントが装着済み(こちらにも部分的にトゥルー・ラブがペイントされている)。

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ロールス・ロイス・ドロップテイル”ラ・ローズ・ノワール”のインテリアはこうなっている

このロールス・ロイス・ドロップテイル”ラ・ローズ・ノワール”のインテリアもまたロールス・ロイスっぽくはなく、非常にシンプルそしてスポーティー。

なお、ロールス・ロイスによれば、このインテリアは「開発、テスト、ホモロゲーションに4年を要した」とされ、たとえばダッシュボードは"ロールス・ロイス史上最も複雑なパルケトリーの表現 "。

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乗員を包むのは、1,603ピースの手作業で並べられたブラックウッド単板の三角形を用いて作られた ”舞い落ちるバラの花びらの抽象的な表現” ですが、木材はフランス産のブラックシカモアを使用し、1,603枚の三角形の木材は、ひとつひとつ手作業でカットされ、やすりがけされ、隙間なく配置されています。

この木目に「明るいグレーと暗いグレー」とが混在するのは、自然な色合いをそのまま生かしたからだと説明されており、つまり色の違いは異なる原木を使用したことに起因するそうですが、塗料は赤い部分にのみ使用され、この発色を長持ちさせるための新しいラッカーの開発に1年を費やした7こともアナウンスされています。

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ちなみにこのアームレスト下のウッドパーツ(サーフボードみたいな)はスライドが可能です(スライドさせることで、操作系が見え隠れする)。

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なお、このパルケトリー(寄木細工)はたった一人の職人によって製作されていて、加工に際しては”最大限の集中力を確保し、気が散らないようにするため”、職人は遮音された空間で1日合計5時間以内の完全な静寂の中で作業を行ったのだそう(この芸術作品は、それだけで9ヶ月の制作期間を要している)。

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今回ロールス・ロイスとオーデマ ピゲとのコラボレーションが実現

そして今回、このカスタムカーの製作に合わせ、オーデマ ピゲのスイス人時計職人によってワンオフのカスタムタイムピースが製作されたことも大きなトピックです(ぼく的にはこのクルマのハイライトではないかと考えている)。

43ミリの「ロイヤル オーク コンセプト スプリットセコンド クロノグラフ GMT ラージデイト」をベースに、カウンターとインナーベゼルはレッドで仕上げられ、ブラックの文字盤にはロジウム調の加工が施されているそうですが(腕時計本体の画像は公開されていない)、ダッシュボードにはこんな感じで「ボタンに触れるだけで時計が現れるパワード・クラスプ機構」が採用されており、オーナーが腕時計を身に着けているときはこのブランクヘッド(ローズが刻まれている)が埋め込まれ、しかしオーナーは(ブランクヘッドを外して)このスペースへと腕時計本体を装着することができる、とのこと。

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パワード・クラスプ機構が開くとこう。

ここで腕時計のストラップ(インターチェンジャブル)を外して本体を取り付けるのだと思われます。

なお、オーデマ ピゲはこれまで自動車メーカーとのコラボレーションを行ったことはなく、(コラボを行っていない)最後の大物だとも捉えていたのですが、ついに奇跡の協業が実現したということになりますね。

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参考までに、ロールス・ロイスは「ボートテイル」にてボヴェとのコラボレーションを行っており、今後も「そのテーマにあわせた」ハイエンド・ウォッチブランドとのコラボレーションを見ることができそうです。

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そしてもう一つ参考までに、スピーカーのグリルにもバラ。

いたるところに手が入っていることがわかります。

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さらには「ボタンを押すと開くユニークなシャンパン・チェスト」も備わっており、その中には手吹きクリスタルのフルート、寄木細工、「ミステリー」仕上げのブラックアルマイトとカーボンファイバー製のシャンパンクーラーが入っており、チェストの蓋を開くと、この蓋部分は同じブラック・シカモア材にステンレスのインレイを施したサービング・トレイに変身する、と紹介されています。

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このロールス・ロイス・ドロップテイルの販売価格については公表されていないものの、「数十億」そして自動車史上最高額である可能性が非常に高く、それだけのお金を一台のクルマに投じることができる人がいるということにも驚かされます。

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参照:Rolls-Royce

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