
Image:Rolls-Royce
| ロールス・ロイスは常に「未来」を見続けてきた |
ロールス・ロイス 101EX、102EX、103EXはそれぞれ20周年、15周年、10周年
世界最高峰のラグジュアリーカーブランド、ロールス・ロイス。
彼らが完璧を追求する裏側には、一般には市販されない「EX(Experimental=実験車両)」と呼ばれる特別なクルマたちが存在していますが、この2026年、グッドウッド時代に誕生した3台の重要な実験車両がそれぞれ「20周年、15周年、10周年」という大きな節目を迎えます。
「なぜロールス・ロイスは電気自動車(EV)への移行がスムーズだったのか?」「あの独創的なデザインはどこから生まれたのか?」
その答えはすべて、今回スポットライトを当てる「101EX」「102EX」「103EX」に隠されており、ここでは「コンセプトカーの枠を超えた」ロールス・ロイスのEXシリーズの真髄に迫ります。

【この記事の要約:3つのポイント】
- 101EX: 伝説の「ファントム・クーペ」の母体となり、今や定番の「スターライト・ヘッドライナー」を初採用した一台
- 102EX: 2011年に登場した初の完全電気自動車。最新EV「スペクター」へと続く電動化への壮大な布石
- 103EX: 完全自動運転とAIアシスタントを具現化。未来のラグジュアリーを定義した「ビジョン」の結晶
ロールス・ロイスの魂「EX」とは何か?
ロールス・ロイスにおける「EX」とは、市場の反応を見るための「コンセプトカー」ではなく、それは、クライアントの潜在的な欲望を具現化し、実際に走行可能なレベルまで作り込まれた「走る実験室」。
その歴史は古く、1919年の「1EX」まで遡ることができるそうで、ロールス・ロイスの創業者のひとり、ヘンリー・ロイスは、自ら開発したクルマをさらに軽量化・高性能化するために実験車を作り続け、この「現状に満足せず、常に最高を再定義する」という伝統が現代のグッドウッド時代にも脈々と受け継がれているというわけですね。

アニバーサリーを迎える3台の軌跡と革新
1. 101EX(2006年発表・20周年)
2006年のジュネーブモーターショーで発表された101EXはのちの「ファントム・クーペ」のベースとなったモデルです。
- 特徴: アルミニウム・スペースフレームを採用し、カーボンファイバー製のボディを纏ったドライバーズ・カー
- 革新: 天井に無数の光ファイバーを配した「スターライト・ヘッドライナー」を初搭載。これは今やブランドを象徴するカスタマイズ(ビスポーク)要素となる

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とくにこの満天の星空がきらめく「スターライナー」はロールス・ロイス「純正オプション」の域を超え、マンソリーなど様々なチューナーが採用する「チューニングカーの定番」ともいえる存在に。

2. 102EX(2011年発表・15周年)
別名「ファントム・エクスペリメンタル・エレクトリック(EE)」。
ロールス・ロイス初のBEV(電気自動車)として、世界中を驚かせており・・・。
- 特徴: 当時世界最大級のバッテリーを搭載し、ワイヤレス充電システムも試験導入
- 意義: 1年以上かけて世界中を巡り、オーナーたちの生の声を収集。この時のデータが、2022年に発表されたブランド初の市販EV「スペクター」の完成度を支えている

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ここで示す通り、この102EXがスペクターへと繋がるわけですが、実際に発売されたスペクターは「初動こそ良かったものの」その後動きが鈍ってしまい、これはアーリーアダプターと「その後」の製品に対する捉え方の差、そして「予想外の」アナログ / ガソリン回帰という計算できなかった要素によるものなのかもしれません。
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3. 103EX(2016年発表・10周年)
ロールス・ロイスの次の100年を見据えた「ビジョン・ネクスト100」として登場。
- 特徴: ステアリングホイールのない完全自動運転車。車内はシルクのソファが浮かんでいるような「グランド・サンクチュアリ(至高の聖域)」を実現
- AI: デジタル・アシスタント「Eleanor(エレノア)」を搭載。オーナーの好みを先読みし、シームレスな体験を提供

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なお、ここで提示された「自動運転」が現行のロールス・ロイスに導入されていないところを見るに、それらをオーナーに提示したものの「反応が良くなかった」のかもしれませんね。
車種スペック比較表
| 項目 | 101EX (2006) | 102EX (2011) | 103EX (2016) |
| パワートレイン | 6.75L V12 エンジン | エレクトリックモーター (BEV) | エレクトリックモーター (BEV) |
| 主な役割 | クーペモデルの技術実証 | 電動化技術の公開テスト | 未来のラグジュアリー定義 |
| 象徴的機能 | スターライト・ヘッドライナー | ワイヤレス誘導充電 | AIアシスタント「エレノア」 |
| 市販への影響 | ファントム・クーペ | スペクター (2022) | Whispers(アプリ)等 |
豆知識:なぜロールス・ロイスはEVと相性が良いのか?
ロールス・ロイスが102EXから15年以上かけて電動化を追求した理由は「環境対策」ではなく、実は、電気モーターが持つ「圧倒的な静粛性」と「立ち上がりから最大トルクを出す特性」が、ロールス・ロイスが理想とする「魔法の絨毯(Magic Carpet Ride)」のような乗り心地と完璧に合致するから。
創業者のチャールズ・ロールスは1900年の段階ですでに「電気自動車は騒音も振動もなく、完璧だ」と予言しており、ぼくらが今目にしているロールス・ロイスのEVシフトは、実は100年以上前からの「約束」だったということになりそうです。
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特別な「赤いバッジ」が示す誇り
これらのEXモデルには、共通する特別な意匠があるといい、それは、グリルに輝く「赤いRRロゴ」。
通常、現代のロールス・ロイスが採用するのは黒いロゴではあるものの、これらEXモデルは創業当時の「赤」を用いており、それを冠するということは「その車両がブランドの歴史を動かす重要な”実験車両”である証。
この「赤バッジ」は、1905年の最初期モデルや75周年記念モデルなど、極めて限定的な車両にしか許されない聖域というわけですね。

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結論
2026年にアニバーサリーを迎える3台のEXは「過去の遺産」ではなく、101EXがもたらした「究極のパーソナライズ」、102EXが挑んだ「静寂の電動化」、そして103EXが描いた「AIとの共生」。これらはすべて、現在のロールス・ロイスが提供する価値そのもの。
「EX」を知ることは、未来の自動車の姿を知ることに他ならず、次にロールス・ロイスが「赤いバッジ」を掲げる時、ぼくらの移動体験はまた新たな次元へと引き上げられることになるのかもしれません。
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