| 今年の第1四半期に製造されたロールスロイスはすべてオーダーメイド |
これからのロールスロイスの方向性としてはこれが「正しい」のかも
さて、ロールスロイスが今後ワンオフモデル事業を拡大すると発表。
今回正式に(ワンオフ車輌を制作するための)コーチビルド部門を正式に再構築すると述べており、新しくなったコーチビルド部門では”アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー”を使用することで、顧客が「既存の制約を超えてほぼ無限の可能性」を追求することが可能になるとコメント。
実際にここで製作されるモデルは「プラットフォームの基礎とパワートレーン以外、すべてが個別の仕様を持つことになる」とのことですが、プラットフォームやドライブトレーンを変更すると、形式が変わったり、そうなると様々なテストが必要となるのでしょうね。
それでも変更できるポイントはかなり多い
今のところロールスロイスは詳細を語ってはいないものの、4箇所のみの固定されたポイントを除くと「バルクヘッド、フロア、クロスメンバー、シルパネル」を伸縮させることができるといい、これはつまり(それを望む人がいるならば)ショートホイールベースや、おなじみロングホイールベースモデルを自由に作れるということになりますね(このあたりの変更は許容できるようだ)。
そしてアーキテクチャー・オブ・ラグジュアリーを使用することで「顧客が想像しうるすべてのボディ形状に対応が可能」であるとも述べていますが、おそらくはすでにいくつかのプランがあるのだと考えていいのかもしれません。
かつて、自動車はすべて「ワンオフだった」時代も
なお、ロールスロイスによると、自動車の黎明期においては「自動車メーカーがパワートレーン含むローリングシャシーを製作し、それをコーチビルダーに送って車体を制作するのが一般的だった」。
この頃の自動車はラダーフレームにボディを載せるという構造を持つのが一般的で、そのため顧客は自由に「上に乗せるボディ」を選ぶことができたわけですね。
つまりはクーペだろうがスピードスターだろうがセダンだろうがワゴンだろうが好きなボディ形状、そして内装を選ぶことができたということになります(逆に、予定するボディ形状にあわせてローリングシャシーを注文していた)。
ただ、1920年代になると自動車メーカーはコーチビルド(ボディの架装)を内製化するようになり、さらにはモノコックやセミモノコックフレームを採用した「大量生産」がはじまると、自動車は「受注生産」から「作り置き」へと変わってゆくことに。※ベントレーが当時のコーチビルダー「マリナー」を吸収した理由もここにある
こうなるともう顧客の要望に応じたクルマを自動車メーカーが製造することは難しくなり、「内外装のちょっとした変更を行うことはできても」モノコックシャシーに手を入れることはかなわず、状況がすっかり変わってしまうことに。
ロールスロイスはかつてこういったワンオフモデルを作ってきた
ただ、ロールスロイスはもともと量産車メーカーとは異なる立ち位置にあり、さらに限られた顧客を対象にエクスクルーシブなクルマを販売してきたという状況があり、1965年にシルバーシャドウが(シルバークラウドにかわり)登場した際に”量産”へと移行することになりますが、その後も限られた部分ながらも顧客の要望に応じてカスタムを行ない、1993年までは子会社のH.J.マリナー・パークワード社を通じてワンオフ車輌の製作を行ってきたそうです。
ただ、ロールスロイスはそういったワンオフ車輌についても「カスタムの制限」を設けており、たとえば代表的なものは「ラジエターの後ろのバルクヘッドの寸法」。
これによって「ロールス・ロイスであることを視覚的に示す本質的なプロポーションを維持する」ことができた、と言われます。
ただ、その後自動車がワールドワイドに販売されるようになったり法規制がきつくなったりするのに合わせ、「カスタムの幅がどんどん狭くなっていった」のでしょうね。
なお、これから「時代はエレクトリック」へと向かいますが、そうなると1900年代はじめの頃、「ラダーフレームの上にキャビンを載せた」時代とおなじように「スケートボード型プラットフォームにキャビンを載せる」時代が来るものと思われ、高級車業界は当時と同じ状況に”逆戻り”するのかもしれません。
最近のカスタム傾向やワンオフ車輌がロールスロイスの新しい方向性へと導く
なお、ロールスロイスが今回の方向性を決めたのにはいくつかの要素があり、ひとつは「ここ最近に製造された車輌の多くがオーダーメイドだった」こと。
さらには今年の第1四半期に製造されたすべての車両がオーダーメイドだったといい、こういった事情がロールスロイスをして「時代はオーダーメイドに逆戻り」だと思わせたのでしょうね。
そしてもうひとつの要素は2017年に発表された「スゥエプテイル」。
これはその価格10億円とも言われるワンオフモデルですが、ボディの構造を大きく変えており、そのために法規含めて相当な困難を乗り越えることになったそうですが、それらをクリアすることでむしろ「何でもできるということがわかった」といい、それが新しいチャレンジへの活路につながったとも述べています。
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