| そして今回、ポルシェは新型パナメーラにつき、さらに快適性を向上させてきたようだ |
もっとも快適なクルマを作ることと、もっとも速いクルマを作ることは根本で繋がっている
さて、ポルシェが11月24日にデビューする新型パナメーラのティーザー画像を公開。
今回2024年モデルとして登場するパナメーラはフェイスリフトモデルとなるものの、先ごろ同様にフェイスリフトを受けたカイエン同様、「フルモデルチェンジに匹敵する」変更が加えられるものと見られています。
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新型ポルシェ・パナメーラ「最後の仕上げ」はバルセロナにて
新型ポルシェ・パナメーラの最終テスト走行はスペインのバルセロナで行われており、主な変更そしてテスト内容はパワートレイン、新しいPDK(トランスミッション)、アクティブダンパーコントロールを備えた新開発シャシーだと紹介されています。
ポルシェはすでに北米、アジア、ヨーロッパ、アフリカといった4大陸にてテストを行っていますが、同社いわく、新型パナメーラのハイライトは「ハイブリッドシステムを中心としたパワートレーンと足回り」。
パワートレーンについては完全に刷新されることになり、やはり注目すべきは「4種類ものハイブリッドパワートレーン」。
従来型パナメーラに用意されていた「3つ」に加えて「4つ目」が投入されることになりますが、これは「販売国によっては、パナメーラの100%がE-ハイブリッド」であることを考慮し、顧客の要望をに応えたためだと説明されています。
現時点でポルシェはこれらハイブリッドシステムについて詳細の言及を避けたものの、パナメーラ製品ラインナップ責任者であるトーマス・フリームート博士によれば、すべてのE-ハイブリッドモデルの核となるのは、新しいデュアルクラッチトランスミッションのハウジング内に組み込まれた新型エレクトリックモーター。
新型ポルシェ・パナメーラには「史上最強モデル」が追加か
ポルシェによると、この新しいエレクトリックモーターはより軽量で、エネルギー回生に優れているといい、これに組み合わせられるのは従来よりもはるかに大きなバッテリー。
そのサイズは25.9kWhにも達し、11kWのオンボード充電器のおかげで充電時間は大幅に短縮されることとなるようですね(エレクトリックモード時の走行距離も増加するはずだが、それについては今回隠されたままである)。
さらにポルシェはエレクトリックパワートレーンのみではなく、ガソリンエンジンに「根本的な」変更を加え、効率と性能を向上させたと述べていますが、注目すべきはパナメーラのすべてのドライブトレインが将来の排出ガス基準、つまりユーロ7に適合していること。
新型パナメーラの開発においてドライブトレイン・プロジェクトマネージャーを務めるアルノ・ボーグル氏によると「パナメーラの2つの(燃焼式エンジンとエレクトリックモーターとの)ドライブシステムの統合と組み合わせは、まったくシームレスで調和がとれています。新しいドライブトレインによって、このクルマは加速する際に非常にスムーズ、そして信頼性の高いものとなりました」。
現時点では出力に関しての言及はないものの、おそらくは新型カイエンと同様だと考えてよく、そして4種類ものハイブリッドパワートレーンが積まれるとなると、カイエン・ターボ Eハイブリッドに搭載される「739馬力」を発生するシステムがパナメーラにも用いられる可能性が高く、これが実現すると「史上最強のパナメーラ」となり、さしものBMW M5もこれには敵わないのかもしれません。
ただ、これまでにウワサされていたような、911でのGT3、718ケイマンでのGT4に相当するようなハードコアモデルが追加される可能性は低く、(新型パナメーラの)トップレンジはあくまでも「サルーンとしての快適性を保ったまま」高いパフォーマンスを発揮するという”ビジネスエクスプレス”としての性格付けがなされるものと考えられます。
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新型ポルシェ・パナメーラでは乗り心地も大きく向上
そしてポルシェは新型パナメーラのサスペンションに対しても変更を加えており、オプションでアクティブダンパーコントロール付きのハイエンドシャシーが用意されることが明かされています。
標準使用だと2バルブショックアブソーバーを備えたセミアクティブシャシーとなるそうですが、こちらも新たに開発されたデバイスであり、圧縮段と伸側段を独立して調整できるため、ドライブモード間での「キャラクターの変化」幅を大きく広げることができた、と説明されています。
これについて、前出のトーマス・フリームート博士は「このアクティブシャシーによって、私たちは新たな基準を打ち立てようとしています。バルセロナの港の石畳では非常に快適で、郊外の曲がりくねった田舎道では非常にダイナミックで俊敏です。比類なく幅広いレンジに対応するのです」。※これによって、快適性を掘り下げるとともに、スポーツ性もさらに高められることが可能になったのだと思われる
ちなみにですが、ぼくが今までに運転したクルマの中でもっとも乗り心地がよく快適だと感じたのは現行ポルシェ・パナメーラ。
ロールス・ロイス・ファントムよりも、ベントレー・コンチネンタルGTよりも、メルセデス・ベンツSクラスよりも、BMW 7シリーズよりも、レクサスLSよりも優れるということですが、これはにわかには信じられないかもしれません(SUVにおいても同様で、数ある高級SUVの中で、ぼくはカイエンがもっとも乗り心地に優れると考えている)。
ただ、ポルシェのエンジニアは(古い話となりますが)1989年に初代レクサスLS(トヨタ・セルシオ)が発表された際、実際に試乗して「我々が作りたかったのはまさにこのクルマである」とコメントしたといい、意外なことではありますが、ポルシェは「快適なクルマ」を好むということになりそうです。
実際に、ポルシェのクルマは同クラス、同じキャラクターを持つライバルに比較して、たとえスポーツカーであっても恐ろしく快適であるとも捉えていますが、この快適性というのは、NVHのコントロール、姿勢制御など、自動車の開発でもっとも難しい要素を完全に支配下に置かなくては実現できないもので、よく言われるように「(遮音材や制振材などで)覆い隠すだけ」では実現できないもの。
しかしポルシェは高いレベルで快適性を実現していて、つまりこれは「どの部分をどうすれば、クルマそのものやアッセンブリーがどのように反応し、それによってクルマがどういった挙動を示し、ドライバー含む乗員がどう感じるのか」を完璧にポルシェが理解しているからこそ可能になっているのだと考えます。
そしてこういった「理解」はスポーツカーを作る際にも存分に効果を発揮することになり、そう考えると「自動車業界の中で、もっともクルマを知り尽くしたポルシェが、自動車業界においてもっとも快適なクルマを作ることができる」のは不思議なことではないのかもしれませんね。
参照:Porsche