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新型ポルシェ911(992.2)の試乗レビュー解禁。ハイブリッドは「NAともターボとも異なる新感覚」、望むままに反応するドライバビリティを持つも「唯一の欠点」とは?

新型ポルシェ911(992.2)の試乗レビュー解禁。ハイブリッドは「NAともターボとも異なる新感覚」、望むままに反応するドライバビリティを持つも「唯一の欠点」とは?

| 新型ポルシェ911カレラGTSは「ドライバーの求めることをすべて実現してくれるクルマでもあるようだ |

反面、(やむをえないものの)その価格を見ると購入には二の足を踏んでしまう

さて、ポルシェは992世代の911にフェイスリフトを(一部)実施して992.2へと進化させていますが、この目玉はなんといっても(現時点ではGTS系に積まれる)超軽量ハイブリッドシステム、「T-ハイブリッド」。

ポルシェはこれまでにも911に対し「水冷化」「電動パワステ化」「(全モデルの)ターボ化」など様々な変化を加えているものの、今回のハイブリッド化については911史上もっとも大きな進化と言って良いかもしれません。

新型ポルシェ911の試乗レビューが一斉公開

そこでポルシェは(スペイン南部にある)アスカリ・サーキットにてメディア向けの試乗イベントを開催しており、本日そのレビューが一斉公開されることに。

これまで通り「最良のポルシェは最新のポルシェ」であることは間違いがないようで、いずれのメディアも(ポルシェの新型車発表時の通例として)高い評価を与えているものの、そのフィーリングについては(ネガティブではないものの)これまでの911との若干の相違もあると見え、一部テスターは”かすかな戸惑い”を感じているようですね。

この新型911カレラGTSにつき、ハイブリッド化に際して大きくパッケージングが変わっており、まずエンジンは3.6リッターへと排気量がアップし、トランスミッションとの間にエレクトリックモーターを組み込むこととなりますが、ターボチャージャーは2つから1つに減り、この中にもエレクトリックモーターが仕込まれます。

そしてこれら2つのモーターを駆動するのはフロントトランク内に取り付けられた1.9kWh/400Vのリチウムイオンバッテリーで、システム合計だと541馬力(先代比で+61馬力) / 610Nmとなり、0-100km/hわずかに3.0秒、最高速度312km/hというスペックを達成します。

そこでそれぞれのレビューからコメントを拾ってみたいと思いますが、まず今回の試乗会にてポルシェのエンジニアが強調したのは「新型911カレラGTSはハイブリッドではあるものの、ハイブリッドのようには感じられない」「このハイブリッドシステムは可能な限り軽く作られている(先代911カレラGTS比で車体重量は約50kg増加したにとどまる)」「ユーロ7に対応するため、あらゆる速度/回転域においてエンジンは理想的な空燃比である14.7:1で動作できるように設計されている」。

実際に試乗を開始してみると、ポルシェ伝統のキー(あるいはデコイ)を捻る動作がなくなってプッシュボタンによるスタートへと変更され、さらにエンジンスターターは新しく(トランスミッションとエンジンとの間に)組み込まれたエレクトリックモーターが引き継ぐこととなるものの、このあたりの違和感は全くないもよう。

一方、「これまでとは違う」と感じるのは低速域で高いギアを使用したときで、これまでの911のようにトルク不足を感じたり、エンジン回転数の上昇とともに盛り上がるトルクを待つ必要がなく、瞬時に必要なトルクが発生するとコメントするテスターが多く、これは電動ターボによって(これまでの排気を利用したターボチャージャーでは不可能であった)リニアな加給を実現しているためだと考えられ、要は「大排気量自然吸気エンジン」に近いフィーリングなのかもしれません。

イグニッションキー同様に「アナログメーター」も失われ、代わりに設置されたデジタルメーターについては「イマイチ」、そしてインフォテイメントスクリーンに表示されるエネルギーモニター(電気の流れを表している)の表示が新鮮であるという声も多いようですが、ポルシェのエンジニアが言うように「ハイブリッドらしくない」ドライブフィールを持っているようで、同じようにエレクトリックモーターを積むEVやPHEVのように強烈な(モーターによる)トルクを感じさせず、あくまでもスムーズなトルクデリバリーを行っているようですね。

そしてこのハイブリッドパワートレーンについては「大排気量自然吸気エンジンよりもトルクが大きく感じる」「(ターボラグがないので)ターボエンジンのようにも感じられない」、まったく新しいキャラクターを持つパワーユニットようだとも評されています(従来のどのエンジンともフィーリングが異なるようだ)。

ちなみにですが、エネルギーモニターを見て「いま、電力の流れがどうなって、どのコンポーネントがどういった役割を果たしている」と認識したとしても、実際にそれを感じ取ることは不可能だといい、つまり「モーターがアシストを開始した瞬間」「回生が始まった瞬間」「電動ターボによる加給が始まった瞬間」などはまったくわからないのだそう。

そしてこの新しい感覚は主に「電動ターボ」によってもたらされたところが大きく、しかし通常のターボチャージャーとは異なって低回転から高回転まで一貫して加給を行うことになりますが、アクセルペダルを離しブレーキングを開始するとエレクトリックモーターがタービンを(許容回転数上限である)12,000回転にまで押し上げ、この際のサウンドが「甲高い独特の音」であったり、そこからアクセルを踏み込んで加給を開始するとまた異なる性質のサウンドが聞かれるなど、聴覚としても”新しさ”を感じることとなるもよう。

一方、シャーシに関しては先代911カレラGTSと非常によく似ているといい、しかし後輪のサイズが10ミリ広がって315ミリとなったこと(911ターボと同じ。新しいエンジンの幅が狭くなったので、ボディを拡大せずとも幅広タイヤを装着できるようになった)、これによってサスペンションコンポーネントの一部が変更されて安定性が増したこと、さらにはハイブリッド化の恩恵として(オプションの)ダイナミック シャシー コントロール (PDCC)と アクティブ アンチロールバーが400ボルトシステムで”より迅速に、かつ正確に”動作するようになったことにも言及されています。

ブレーキシステム(標準のスチールローター)は従来型911カレラGTSと同じサイズ、しかしオプションのカーボンセラミックディスクブレーキ(PCCB)を選択すると、これも911ターボと同じ「フロント10ピストン」へとアップグレードされ(リアは911カレラGTS専用サイズ)、いずれの場合であっても回生ブレーキが介入したとしてもそれを全く感じさせず、(これまでの911同様に)ペダルを踏み込みはじめたとき、ターンイン時に踏力を緩めるときには必要な圧力を正確に測ることができるという美点を維持しているようですね。

なお、ぼくの考えるポルシェのもっとも偉大なところは「操作したままの反応を見せる」ということだと考えていて、つまりアクセルを踏んだらそのぶんだけ加速して、ステアリングホイールを切ったらそのぶんだけ曲がって、ブレーキを踏めばそのぶんだけ減速し、そしてそれらの動作が「予期したもの」とピタリと一致しているところです。

つまりは「思ったよりも加速しなかったりしすぎたり」「思ったよりも曲がりすぎたりそうでなかったり」「思ったよりも止まらなかったり急激に制動力が発生したり」ということがなく、望むときに望むだけのことをしてくれ、あるいは「予測可能」であるとも言い換えることができるかもしれません。

新型911カレラGTSは「エレクトリックモーター」という”これまでにない要素”を押し込み、しかし様々な状況でアクセルペダルを踏んだとき、「ガソリンエンジンとエレクトリックモーターと加給の割合をどうするか」を瞬時に判断し、その状況に適したトルクを駆動輪に伝えることになりますが、実際にクルマがその裏でどういった計算を行い、どういった制御を行い、どのコンポーネントを作動させているかをまったくドライバーに感じさせず、しかし「どんな場面でも必要なトルク」を提供するというフレキシビリティを持つようです。

たとえば、タイトなコーナーで、これまで「2速で」脱出していたところを「3速で」駆け抜けたとして、少しトルクが足りないと感じたとしても、さらにアクセルペダルを踏み足せば「そのぶんトルクがついてくる」というイメージなのだそう。

ちなみにですが、後輪駆動(911カレラGTS)と前輪駆動(911カレラ4GTS)との差はほとんど感じられないといい、ターンインとコーナーの途中ではほぼ同じ動きを示し、カーブからの脱出時に若干(前輪駆動のほうが)「フロントタイヤで引っ張ってゆく感」があるくらいだそうで、実際のところ、ポルシェのファクトリードライバー、ヨルグ・ベルクマイスター氏によれば「グリップの限界をはるかに超えたときにのみ、この2つの大きな違いが本当に明らかになる」。

こういった点を総合すると、新型911カレラGTSは(2WDであろうと4WDであろうと)ドライバーが望み、期待して行った操作(入力)を、なんら苦労なく、そして不自然さもなく出力してしまうクルマであり、ポルシェ創業時から受け継がれている「ドライバーに負担をかけないクルマ」という思想をさらに進化させたクルマなのかもしれません。

ちなみにですが、996-997世代の911は「リアエンジン」ということを強く意識させられるクルマであり、991世代になるとそれが希薄になったうえ、992では「もうエンジンが前にあるのか後ろになるのかわからない」ほどにフィーリングが変化していて、しかしそれは悪い意味ではなく、ポルシェが「ドライバーが望んだままの動きを実現するため」に様々な試行錯誤を繰り返してきた成果のだと考えています。

そして992.2(911カレラGTS)では、もうエンジンの位置(重心)どころか、駆動方式や、さらにパワートレーンの種類(ガソリンなのか、ハイブリッドなのか、もしかするとピュアエレクトリックなのか)すら乗り手に感じさせることなく、しかしステアリングホイールを切ったら切っただけ曲がって、アクセルを踏んだら踏んだだけ加速して、ブレーキを踏んだら踏みつけただけ減速し、そして気がついたらとんでもなく速く走れているクルマなのかもしれませんね。

ただし新型ポルシェ911カレラGTSにも欠点はある

しかしながらこの新型911カレラGTSは「手放しでオススメできるクルマではない」といい、その理由は大きく跳ね上がった価格。

911カレラGTSだと22,540,000円、911カレラ4GTSでは23,650,000円にも達しますが、先代911カレラGTSの価格は20,590,000円だったので、大幅な値上がりということに(それでも日本国内価格は抑え気味だと思う)。

さらにはオプションを組み込んでゆくと、あっという間に3000万円近くに達してしまい、そのパフォーマンス同様に価格も「スーパーカーの領域」に達することとなり、「であれば1694万円の911カレラのほうがお買い得なんじゃないか・・・」と(いずれのテスターも)考えてしまうようですね。

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