
| やはりポルシェは「あの手この手」でガソリンエンジンを延命しようと考えている |
ただし必ずしも出願された特許が「市販車に採用されるわけではない」
- ポルシェが内燃スポーツカーを終わらせる気はまったくない。
- その証拠となる“秘密兵器”が特許資料から明らかに。
- ポルシェは水噴射+ハイブリッドでガソリンエンジンの未来を延命しようとしている。
「EVシフトを緩める」と公にコメントしたポルシェではありますが、今回独自の技術でガソリンユニットの魅力を最大化しようとしている──そんな非常に興味深い特許が公開されています。
内容としては「水噴射」という他の自動車メーカーも採用する技術ではあるものの、ポルシェだけあってこれは単なる“水噴射システム”ではなく、「ハイブリッドだからこそ成立する自己診断機構」を持った新世代のシステムであることがわかります。※ポルシェは別の水噴射システムに関する特許も出願済み
-
-
ポルシェが内燃機関の「出力向上」「クリーン化」を実現するため”ウォーターインジェクション”に関する特許を出願。2つの問題のうち1つをクリアしているが
| 市販車にこの技術を採用するのは非常に困難ではあるが | ポルシェであればその困難を乗り越える可能性も見えてくる さて、自動車業界では保有特許件数ナンバーワンとも言われるポルシェですが、今回「ウォー ...
続きを見る
以下ではその秘密の仕組みをわかりやすく解説しつつ、今後の911やスポーツカーの将来にどんな意味をもたらすのかを整理してみたいと思います。
Image:Porsche
ポルシェが開発中の「新・水噴射システム」は何がスゴいのか
■水噴射そのものは新技術ではない
ターボ車黎明期から吸気温度を下げ、ノッキングを抑制し、点火進角を増やしてパワーを引き出す手法として「水噴射(ウォーターインジェクション)」が存在してきましたが、しかし今回の特許が従来と大きく異なるのは“誤作動を防ぐための自己診断機能”を極めて高度に仕上げている点。
■“水の量”がシビアすぎる世界
- 水が少ない → ECUがノッキングを検知しリタードで対処
- 水が多すぎる → シリンダー内に液水が残り「圧縮不能」→ 最悪はハイドロロックで即エンジンブロー
ポルシェは、この危険性をゼロにするため「走行中にリアルタイムで自己テスト(自己診断)できる仕組み」を設計しているわけですね。
Image:Porsche
従来方式の問題点
通常の水噴射では・・・。
・プレッシャーレールの入口/出口の圧力を比較
・水を“実際に噴射する”ことで作動チェック
するため、「テストできる状況が極端に限られる」という問題が存在します。
新特許の肝:「ハイブリッドモーターで負荷と回転数を自由に作り出す」
そして今回ポルシェが発明した最大のキモはここにあり・・・。
- システムチェックに最適なのは 高負荷 × 高回転
- しかし、ドライバーがわざわざ全開加速してくれるとは限らない
→そこでポルシェは ハイブリッドモーターを使って「意図的に負荷と回転を作り出す」という荒技を発明し、この結果として、
- クルマが停止したままでもテスト可能
- 整備工場や生産ラインでも自己診断が可能
- ハイドロロックの危険性を排除
- テスト頻度を増やし、排ガス試験にも対応しやすくなる
という状況が発生し、まさに「電動化があるからこそ使える逆転の発想」というわけですね。
Image:Porsche
ハイブリッド911の未来を示す“重大ヒント”
文章の中でさらっと書かれているものの、この特許には非常に大きなヒントが隠されており、それは“リアエンジンのハイブリッド車で使う”ということ。
これはつまり──911が本格的なハイブリッド化に向かうことを技術的に裏付ける動きであるとも考えられます。
ポルシェはすでに「高出力なアキシャルフラックスモーター」も特許化していて、
・軽量
・高効率
・超高出力
という“911のためのような”電動アシストの準備が(ここ最近出願された一連の特許から)進んでいることも伺うこともでき、水噴射と合わせると、「過給+電動アシスト+水噴射」というポルシェ史上最も複雑かつ高性能な内燃システムが想定されるわけですね。
なお、ポルシェはこういった複雑なシステムについても「果敢に課題に立ち向かい」、過去にはVTG(可変タービンブレード)を実用化した例もあるため、今回の特許については「いかに複雑化しようとも」ポルシェは市販車への採用を推し進めるのかもしれません。
Image:Porsche
-
-
ポルシェはなぜターボチャージャーを持たないクルマ(EV)にターボグレードを用意し、ターボを持つガソリン車の一部を「ターボ」と呼ばないのか
Image:Porsche | 「ターボ」の半世紀──911からタイカン、マカン /- 開園EVにまで続く革新と伝統の象徴 | ポルシェ「ターボ」という名が持つ意味 今から半世紀以上前、ポルシェは91 ...
続きを見る
この技術がもたらすメリット
●1. 燃費・排ガス規制への対応が容易
自己診断の精度が上がることで、排ガス試験でのリスクが減る。
●2. サーキット走行の耐久性が向上
吸気温度管理が安定すると、周回を重ねてもパワーが落ちにくい。
●3. チューニングの自由度が上がる
点火時期やブーストを積極的に使える→レスポンスもパワーも向上。
●4. 「内燃911」の寿命そのものが延びる
EV化規制が強まる中でも、こうしたテクノロジーが内燃スポーツカーの延命に直結する。
主要ポイントの整理
- ポルシェが“水噴射+ハイブリッド”を組み合わせた新特許を取得
- 水噴射はパワー増大に効果があるが、誤作動はエンジンブローの危険
- ハイブリッドモーターで負荷と回転数を人為的に作り出し、自己診断可能に
- 走行中・停止中を問わず安全にテストできる
- リアエンジンハイブリッド=911の将来像を強く示唆
- 内燃スポーツカーの延命技術として極めて重要
Image:Porsche
結論──ポルシェはまだガソリンスポーツカーを諦めていない
今回の特許が示しているのは、ポルシェが内燃エンジンを“延命させるための投資”をこれからも続けるという強い意思。
EVの勢いが一段落した今、ポルシェは“電動化とガソリンのハイブリッド”という独自のバランスを探り始めており、「911はまだ終わらず」、むしろこれからが最も面白くなる時代がやってくるのかもしれません。
-
-
ポルシェ、商品戦略の最終的な再編を決定。カイエン上位SUVは「EVではなく」内燃機関モデルで登場へ。苦しい財政状況についても明かされる
| ポルシェがついに「EVオンリー」という圧力に屈せず「独自」の決断を行う | ポルシェが商品戦略を全面的に再編 ポルシェAGが「経営執行役会および監査役会の決定により、中長期的な商品戦略を大きく見直 ...
続きを見る
合わせて読みたい、ポルシェ関連投稿
-
-
ポルシェはなぜターボチャージャーを持たないクルマ(EV)にターボグレードを用意し、ターボを持つガソリン車の一部を「ターボ」と呼ばないのか
Image:Porsche | 「ターボ」の半世紀──911からタイカン、マカン /- 開園EVにまで続く革新と伝統の象徴 | ポルシェ「ターボ」という名が持つ意味 今から半世紀以上前、ポルシェは91 ...
続きを見る
-
-
ポルシェの次なる「神業」:特許出願から判明したT-ハイブリッド・ツインターボの隠された真価
| ターボチャージングの王者がもたらす革新 | ポルシェにとって「ターボ」はいつの世も特別な存在 ポルシェは、自動車の歴史において常にターボチャージングの最前線に立ってきたことでも知られ、世界初の量産 ...
続きを見る
-
-
ポルシェが新特許を申請、「第三の」次世代ハイブリッドシステムは911GT3にとっても理想的な構造?
| ポルシェ、第三のハイブリッドシステムを開発中か | PHEV、T-ハイブリッドに次ぐ「新しい」ハイブリッド ポルシェは現在、パナメーラとカイエンに積まれるE-ハイブリッド(PHEV)、そして911 ...
続きを見る
参照:CARBUZZ
















