| マクラーレンがSUVを作らない、3つの理由が明らかに |
マクラーレンはSUVに対して「NO」という姿勢を貫いていますが,今回改めてマクラーレンのマイク・フルーイットCEOが「マクラーレンがなぜSUVを作らないのか」を英国トップギアへと語っています。
まず、前置きとしては「現在、世の中には、消費者が必要とする以上のSUV」がある、というもの。
これに加えて「マクラーレンがSUVを作らない3つの理由」を述べています。
マクラーレンがSUVを作らないのはこういった理由から
マクラーレンがSUVを作らないという理由はこれまでも何度か紹介されていますが,今回はこれまで語られなかったものも。
ここでその理由を見てみましょう。
SUVはマクラーレンのブランドにマッチしない
マクラーレンとしては,そのブランドにおけるコアバリューを「モータースポーツと、素晴らしいドライバーズカー」にあると定義。
その上で「SUVは素晴らしいクルマではある」としながらも「しかし、素晴らしい”ドライバーズカー”ではない」とも。
そのドライビングエクスペリエンスは曖昧であり、それは我々にとって意味をなさない、とマイク・フルーイットCEOは語っています。
マクラーレンはSUVを作る技術を持ち合わせていない
続けて同氏は「マクラーレンは、そもそもSUVを作る技術を持ち合わせていない」と主張。
現在高級SUVは”特定のグループ”によって作られており,マクラーレンはそれらと競うだけの技術やノウハウがない、ということですが、これはもちろん「フォルクスワーゲングループ」を指しており、ポルシェ・カイエンやベントレー・ベンテイガ、アウディQ7/Q8、ランボルギーニ・ウルスを指しているのだと思われます。
「我々はSUVを作るとなるとゼロからのスタートとなり、一夜にしてレンジローバーや、ポルシェ・カイエンを超えるだけのSUVを作れると考えるほど思い上がってはいない」とのこと。
マクラーレンはSUVで利益を得ることはできない
最後は「財政上」の理由で、SUVは投資効率が悪い、としていますが、今からSUVに投資してももはや市場に「空き」はなく、投下した資金を回収できないだろう、と説明しています。
マクラーレンは今後どうやって利益を得る?
こうやってみるとマクラーレンはブランディング上の理由だけではなく「他と競争できないから」SUVを作らないようで、これは今まで語られなかっただけにちょっと意外。
スーパースポーツ市場は「今のところ」伸びてはいるものの,いずれ飽和になるのは目に見えていますし、それぞれのメーカーも利益のために販売台数を伸ばすと希少性が損なわれるのも確か。
よってランボルギーニは現在の販売台数(年間5000台ペース)からスーパースポーツは増やさず、そこから先の利益はウルスによって得る方針。
フェラーリも同様で、10,000台まではスーパースポーツを販売するものの,おそらくそこから先は「台数を増やさず」、新規投入するSUVによって利益を得るものと思われます。
そしてマクラーレンも6000台を上限とすると以前に公表していますが、ここで気になるのは「マクラーレンは1万台以上を生産できるキャパシティを持つ工場を建設した」ということ。
6000台までしか生産しないのであれば、余った生産能力はどうするのか、ということですね。
一つは他社のスーパースポーツを生産するという可能性で(BMWブランドのスーパースポーツを生産するという話も)、そしてもうひとつは「やっぱりSUVに手を出す」という可能性。
実際にどうなるかはわからないものの、今回のコメントをみる限り、「チャンスがあればSUVもありうる」というようにもぼくには聞こえます。
関連投稿:マクラーレンが4シータースポーツを投入か。それでも「SUVは絶対にない」
マクラーレンが4座スポーツカーを投入するかもしれない、というウワサ。
ポルシェ・パナメーラやフェラーリFF(GTC4ルッソ)に対抗する意図があるようですが、そのカテゴリは「けっこう儲かる」と考えたのかもですね。
※画像マクラーレンX-1コンセプト
なおマクラーレンは市販車部門を立ち上げる際には4シーター含む「総合ラインナップ」メーカーとなることを標榜していましたが、つい最近には「2シータースポーツカーにこだわる」とコメントしたばかり。
その際はハイパーシリーズ、スーパーシリーズ、スポーツシリーズの3つのラインナップを超えることはないと語っていましたが、スポーツカージャンルにもちょっと限界を感じたのかもしれません。
なお、たとえ4シーターをリリースすることになろうとも「SUVは無い」としており、あくまでもスポーツ性にはこだわる模様。
スーパーカーメーカーではフェラーリも「SUVは絶対にない」としていますが、アストンマーティンはSUV生産を決めており、ランボルギーニもウルスの生産を決めるなど方向性が分かれています(ランボルギーニの場合は過去にLM002を生産しているので他とは事情が異なる)。
マクラーレンCEO語ったところによると、お金のためにSUVを作る必要は無い、とのこと(いくつかのメーカーを皮肉ったものと思われる)。
その上で、マクラーレンが集中するのは3つのこと、としています。
1)セールスを拡大させる。現在は20%が欧州、35%が北米、30%がアジア
2)開発にかかったコストを、より多くのモデルに使用させることで吸収してゆく(これはカーボンモノコック、3.8L/V8エンジンの使用が該当)
3)常に競争力を高めるために投資を行う
ということですが、これは他の会社たとえばポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニとは大きく方針が異なるものです。
F1と同じような考え方で、常に最高の競争力を発揮することで顧客の注意を惹きつけるということだと思いますが、そうなると「前に車を買った顧客」はおいてきぼりを食らう可能性があるのでは、とも考えています。
たとえばMP4-12Cはほんの僅かな期間で650Sに取って代わられることになり、650S登場後は「650Sの生産を行うために12Cの生産はいったん休止」としながらも、その数カ月後には「12Cの生産は終了」というアナウンスが流れています。
こうなると12Cを購入したオーナーはちょっとツライわけで、すぐに650Sに買い換えることができる資力があるオーナーさんでないと「マクラーレンから見捨てられた感」が出てしまうのではと危惧するのですね。
そうなると影響が出るのは中古相場で、12Cはガクっと下がることも予想され、これはマクラーレンのブランドイメージにも響くと思います。
そして、一度痛い目を見ると、次もマクラーレンを購入しようとは思わないでしょうし、マクラーレンを購入できるユーザーは世界中に無限ではないので、いつか頭打ちになる日もくるのではないか、という懸念もありますね。
家電メーカーでもアップデートを繰り返して新規ユーザーを追い求めて既存ユーザーをやや蔑ろにするメーカーもありますが、マクラーレンがそうだとすると、マクラーレンは「(次々買い替えができるような)相当なお金持ちの乗り物」と言わざるを得ない、と考えています。
なお、来年の販売目標は3300台。ランボルギーニを超え、アストンマーティンを捉える勢いですね。