| フェラーリの限定モデルを購入できたとしても、そこからさらに顧客によって「選べる仕様」と「選べない仕様」があるようだ |
ブルネイ王室はフェラーリにとって「最重要顧客」に位置づけられているものと思われる
さて、フェラーリはいわゆる「スペチアーレ」として288GTO、F40、F50を発売しており、その後のフェラーリ55周年記念として発売されたのがこのエンツォフェラーリ。
1998年に亡くなったフェラーリ創業者、エンツォ・フェラーリの名にふさわしく、新しく設計された自然吸気の5,998cc V型12気筒エンジンを搭載し、ライバル車の出力を完全に凌駕する660馬力というパワーを手に入れることに成功。
トランスミッションにはグラツィアーノ製のロボタイズMT「F1」を採用し、パドルシフトを駆使することでアグレッシブなウィップクラック・シフトアップと8,200rpmというレッドラインを存分に楽しめるように設計されています。
ボディデザインはピニンファリーナ
エンツォフェラーリはカーボンファイバーとアルミニウムで構成された最新鋭のシャシーを持ち、そこへピニンファリーナに在籍していた奥山清行氏の手によるカーボンコンポジット製ボディパネルを組み合わせることに。
風洞実験に加え、ミハエル・シューマッハが世界チャンピオンを獲得したF1マシンにインスパイアされ、先代モデルであるF50が持っていた巨大なリアウイングを廃止し、グランドエフェクトを活用したエアロダイナミクス、それによるダウンフォースを重視した近未来的なデザインとなっています。
F50やそれまでのススペチアーレと同様、このエンツォフェラーリはパフォーマンスとスタイリングの水準を大きく引き上げ、カーボンセラミックディスクブレーキなどフェラーリ初の試みを次々と取り入れ、現代で最も魅力的で人気のあるハイパーカーのひとつとなったといえるかもしれません。
このエンツォフェラーリは特別中の特別
エンツォフェラーリは399台のみが限定生産されており、後にヨハネ・パウロ2世がチャリティオークションへと出品するために1台のみを別途注文しているため、トータルでの製造台数は「400台」。
今回出品されている個体はシャシーナンバー136069で、見てのとおり「マットブラック」にペイントされています。
参考までに、F40はすべてロッソ・コルサにペイントされており、F50はこれに加えてイエロー、ブラック、シルバーが少量生産された程度だと言われていますが、このエンツォフェラーリもカラーバリエーションが非常に少なく、というのも当時フェラーリはさほどパーソナリゼーションを重視していなかったため。
これまでのスペチアーレ同様にロッソ・コルサが大半で、そのほかはイエロー、ブラック、ブルー、シルバー程度のカラーバリエーションにとどまり、先日は「唯一」ホワイトにペイントされた個体がオークションに登場していますね。
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ただ、そういった特別なボディカラーを選ぶには、エンツォフェラーリを購入することが許されたという資格のほか、さらに「特別な影響力と地位が必要であった」といわれ、そしてこのマットブラック(ネロ・オパコ)のエンツォフェラーリをオーダーしたのはブルネイ王室メンバーだと聞くと「なるほど」と腑に落ちます。
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このエンツォフェラーリは2004年6月8日に建設が開始され、10月15日にフェラーリから完成車が出荷されていますが、マットブラックのボディカラーにブラックのレザー、そしてブラックのカーペットという「トリプルブラック」。
ちなみにシートは「ラージサイズ」なのだそう(フェラーリはシートサイズを選択できる)。
このマットブラックのエンツォフェラーリは、納車後にロンドンのにて保管され、その時期にはハムステッド、メイフェア、ナイツブリッジの街角を走る姿が時折見られたといい、その後にはアジア太平洋地域に持ち込まれた、と紹介されています。
最近になってカロッツェリア・ザナシ(フェラーリのハイパーカーシリーズ、テーラーメイド車両、イコーナ・シリーズの公式ペイントショップ)により内装と外観の修復が施され、その総額は11万ユーロ(約1600万円)。
非常に高額ではありますが、内装のスイッチ類、ヘッドライトやテールランプ、リアガラスなどを交換し、もちろんオリジナルのネロ・オパコへのフルリペイントも行われることに。
なお、ヴィンテージカーの世界では、「王室御用達」の証明は非常に望ましい(価値を向上させる)とされており、その意味ではこの個体はこれ以上ないほどの価値を誇ると考えてよく、超VIP顧客にしか許されなかったワンオフカラー、王室御用達の実績、低走行距離という希少性を考慮すると、まず「これまでで(エンツォフェラーリとしては)もっとも高い」金額にて落札されると考えて良さそうですね。
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