| たしかに理論的にはいい方法ではあるが、車体デザイン的にはけっこう無理があるのかも |
ただしフェラーリはもちろんそこも考慮しており、すでに対策があるのかもしれない
さて、様々な特許を出願しているフェラーリですが、今回は「サイクルフェンダー」的なパテントを出願することに。
このサイクルフェンダーとはスーパーセブンやモーガンのクルマに取り付けられているような、つまりは自転車の泥除けのようなフェンダーです。
フェラーリはいったいなぜサイクルフェンダーを?
そこで気になるのが「なぜフェラーリがサイクルフェンダーを?」ということ。
ただしこの特許を見るに「オープンホイールカー(フォーミュラカー)を市販する」という意図ではなく、あくまでもロードカーの空力的問題を改善したいという目的を持っているようです。
改善すべき課題については申請された特許に記載されていて、ひとつは「既存の市販車のタイヤとホイールハウスとの隙間が(サスペンションの可動域を確保する必要があるので)大きく、そしてサスペンションが伸び縮みするたびにその隙間が変化し、そこを通るエアの量が変わるため、車体の挙動に影響が出る」こと。
そしてもうひとつは「サスペンションが縮んでもホイールハウスのインナーにタイヤが当たらないようにフェンダーを盛り上げる必要があり、そのため前方の視界を遮ってしまうこと」。
サイクルフェンダーでは多くを解決可能
そこでフェラーリが考えたのがサイクルフェンダーであり、サスペンションアームにこのフェンダーを取り付けてタイヤをカバーすれば、サスペンションが上下しようとも「タイヤとフェンダーとのクリアランス」は変わることがなく、その間を流れるエアの量を一定に保つことが可能というわけですね。※ただし特許申請時に添付された画像を見ると、このクリアランスはサスペンションの稼働時にややその大きさが変わるようだ
そしてこの方法だとフェンダーの高さを下げることが可能となり、よって車体前部を低くすることが可能となるほか、ダッシュボードの位置そのものを下げることができ、これによって”より広い”前方視界を確保することができることになりますが、フェラーリはかねてより視界についてはかなりの注意を払っていて、今回のサイクルフェンダーによって革命的な進化を遂げるようになるのかもしれません。※ホンダは前方視界について「スポーツカーが達成すべきの性能のひとつ」とコメントしたことがある
ただ、フロントの構造が複雑になること、今度はボディパネル表面が「可動すること」によって別のエアロダイナミクス的問題が生じる可能性もあり(デザイン的にも複雑になりフェラーリの美しいボディラインを阻害することも考えられる)、このサイクルフェンダーにはいくつかの解決すべき問題が潜んでいるようにも思えます。
フェラーリもこのサイクルフェンダーの問題を認識
そしてフェラーリもこのサイクルフェンダーについては問題があるという認識を持っており、それは「フロントタイヤを左右に切ったとき、エアフローが大きく変わる」こと。
フェラーリの特許では、このサイクルフェンダーはサスアームに取り付けられていて、つまりはナックルに装着されているわけではなく、下の図(サスペンションを上から見た状態)のように「タイヤが左右に切れたとしても、フェンダーは動かない」わけですね。
そうなると、タイヤがフェンダーの外から出てしまい、これによってエアの流れが変わってしまうので(これは現在のフロントフェンダーであっても同じである)、フェラーリの意図する「いかなる状況でもエアフローを一定に保つ」ことが不可能となってきます。
ただ、この場合であっても、現在の大きな問題2つ(サスペンション伸縮時のエアフロー変化、そして前方視界)を改善できることに変わりはなく、今回の特許は「ベスト」ではないものの「ベター」だと言えるかもしれません。
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参照:CARBUZZ