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EVOマガジン創業者がフェラーリ296GTSをレビュー。「多くの面で素晴らしく、V6エンジンは”栄光の咆哮”」。ただし「買わない」と語るその理由とは【動画】

EVOマガジン創業者がフェラーリ296GTSをレビュー。「多くの面で素晴らしく、V6エンジンは”栄光の咆哮”」。ただし「買わない」と語るその理由とは【動画】

| フェラーリ296GTB / 296GTSはそのパフォーマンスを絶賛されているが |

一方でハイブリッドシステムの「特殊性」についても言及される

さて、EVOマガジン創業者にしてカーコレークターでもあるハリー・メトカーフがフェラーリ296GTSをレビュー。

同氏はEVOマガジンを売却後にユーチューバーへと身を転じ、さらには農業を営むという異色の経歴を持っていますが、コンパクトカーからスーパーカー、ハイパーカーに至るまで深い造詣を持っており、その発言には多くの人が耳を傾けるという人物です。

そして今回はアセットフィオラノ・パッケージ装着の296GTSに続き「標準仕様」の296GTSについて語ることに。

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ヘリー・メトカーフはフェラーリ296GTSをどう捉えたのか

この動画ではフェラーリ296GTSの細部に至るまでのレビューがなされ、彼はその価格、デザイン、そして特に革新的なV6ハイブリッドエンジンといった特徴についても仔細に考察。

さらに乗り心地、操作性、そして驚くべきパフォーマンスを評価する一方で、重さ、複雑なテクノロジー、そしてバッテリー管理の必要性といった欠点も指摘しており、最終的に、彼はその圧倒的な速さと魅力的なサウンドを称賛しつつも「個人的な購入は控えるだろう」と結論付けています。

フェラーリ 296 GTS 徹底レビュー:約7700万円のV6ハイブリッド、その「驚異」と「葛藤」

今回動画に登場するフェラーリ296GTSの乗り出し価格は(オプション込みで)392,496ポンド、つまり現在の為替レートだと邦貨換算で約7700万円。※カーボンパーツ、ジャッロ・トリプロ・ストラート塗装などが価格を押し上げている

まずハリー・メトカーフはその外観や見える部分での機能パーツを評価し、その洗練された空力マネジメントや巨大なブレーキシステムを評価。

次に室内に乗り込み、「以前試乗した12気筒のスパイダーよりも開放感がある」と発言しているものの、「キャビンのタイトさは否めず、シートがバルクヘッドに非常に近く、キャビンはやや狭く感じられる」。※同氏はかなりの長身である

特に注目すべきは、ドアの分厚さで、マクラーレンが採用すディヘドラルドアとは異なり、一般的な横開きのドアであるため、狭い場所での乗り降りは非常に困難だとコメントしています(ぼくもそう思う)。

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なお、296GTB/GTSのホイールベースは、F8トリブートやそれ以前のミッドエンジンフェラーリと比較して50mm短縮されていますが、これは「(前兆が短い)[エンジン採用による恩恵」でもあり、ある意味でフェラーリは「ホイールベースを短縮したいがため」にV6エンジンを採用したのだとも考えられます。

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さらにハリー・メトカーフ氏はルーフを収納した状態でのルーフの造形、そして「フープ」のようなエレガントなライン(エアロブリッジ)も高く評価していますが、たしかにこれは296GTSにおけるデザイン的ハイライトかもしれません。

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296 GTSの心臓部:V6ハイブリッドエンジンの秘密

296の最大の「特殊性」は、その心臓部にあるV6エンジンとこれに組み合わせられるハイブリッドシステム。

このエンジンは120度のバンク角を持つ非常にワイドなV6であり、かつ「ホットV」構造を採用していますが、2つのターボチャージャーがエンジンの上部に配置されており、しかし熱管理のためにカバーが装着されています。

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エンジンは信じられないほど低くマウントされ、フェラーリがいかに低重心にこだわったかがが分かりますが(バンク角を広く取った理由のひとつも低重心化である)、ハリー・メトカーフは「エンジンを見る楽しみは昔とは違う」とも語っていて、昔のようにガラス越しにエンジンが見えるスタイルではないことを残念がっているようですね。

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フロントのトランクスペースはこの種の極端な車としては悪くない広さを持ち、充電器もここに収納されていますが、フェラーリはバッテリー充電のため駐車時にはこの充電器の使用を推奨しています。

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キャビンはモダンで新鮮な印象を与え、多くのカーボンパーツが(オプションにて選択されているため)採用されており、シートはバルクヘッドに密着しているものの、「小物を置くスペースは確保されている」ために実用性はまずまず。

さらにドアにも収納があり、「浅い」ながらもポケットも備わっています。

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しかし、ハリー氏が最も不満を抱いたのがそのインターフェース。

特にADAS(先進運転支援システム)の設定が面倒で、エンジンを始動するたびにADASの警告を解除する必要があり、走行中に設定を変更することは非常に困難。

昔のレンジローバーのように、ボタン一つで設定をオフにできるような単純さではないことに強い苛立ちを感じていて、これは同氏が296GTSに対して感じる最大の不満点なのだそう(そのため、時にはクルマをシャットダウンせずに駐車するほどだと述べている)。

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路面での真価:圧倒的パフォーマンスと乗り心地

ステアリングホイールには、マネッティーノが配置されており、ハイブリッド、Eドライブ、パフォーマンスモードを選択できるうえ、さらにはスポーツ、レース、CTオフのモードも選択可能。

マネッティーノの中央を押すと「バンプロードオプション」が選択でき、ダンパー設定を柔らかくすることで、路面からの衝撃を和らげることができますが、同氏いわく「この機能は非常に有効」。

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なお、V6サウンドについては、ハリー・メトカーフ曰く「驚異的」。

V8エンジン搭載モデルよりも良い音がするとまで言及しており、これはフェラーリが「ターボチャージャーに入る前の排気音をドライバーに届ける」よう設計したデバイスのおかげなのかもしれません(アクセルを踏んだ瞬間から轟く、まさに「栄光の咆哮」とも表現)。

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ステアリングは非常にシャープで、オフセンターからの反応は驚くほど機敏であり、タイトなターンではロックトゥロックが少し大きいと感じるものの、そのダイレクトな感覚は”際立っている”。

そして、最大のハイライトはそのパフォーマンスだと述べ、830馬力の合計出力は文字通り「異次元」の加速を生み出すこととなり、特にエレクトリックモーターによる瞬時のパンチは衝撃的で、文字通りの「ターボラグなし」。

一方でその重量については疑問符が付き、フェラーリは1540kgと公称しているものの、ハリー・メトカーフ氏の測定では1740kgにものぼっていて、これはF8トリブート・スパイダーよりも約100kg重い数字です(ただ、ハイブリッド化によって重量が増加したものの、その圧倒的なパワーがそれを感じさせないともコメント)。

そのほか、乗り心地については「これほどエクストリームなマシンとしては非常に優れており、日常使いも可能」だと評価する反面、オープンモデルであるがゆえ、ルーフからの微細な揺れやシマー、ホイールからの構造的な振動が感じられることも指摘しています。

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ハリー・メトカーフによるフェラーリ296GTSの総評は?

今回の試乗において同氏は以下のように296GTSの「好きな点」「不満点」をピックアップしています。

296 GTSの「好きな点」

•V6パワートレイン: V6だと侮るなかれ、これはフェラーリの真骨頂であり、驚くほどエキサイティング。マクラーレン・アルトゥーラとは比較にならないほどの興奮を与えてくれる

•外観: その美しいデザインは「ワオ!」という要素に満ちており、非常にモダンでエレガントな外観

•ブレーキフィール: エレクトリックブレーキ(回生ブレーキ)を併用しながら、違和感がなく、フィーリングも素晴らしい

•パフォーマンス: まさに「規格外」の性能を発揮しV6フェラーリがこれほどの速さを持つとは予想外で、何度乗ってもその速さに驚かされる

296 GTSの「不満点」

•煩わしいインターフェース: 特にADASの警告と設定解除のプロセスはこのクルマの良さを台無しにするほど不満が大きく、フェラーリには不要な機能

•重量: アルミニウムの使用、ホイールベースの短縮、V6エンジンへの移行など、軽量化を謳っているにも関わらず、1740kgという重量は納得がいかない(同氏はかねがね、軽さがパフォーマンスの要だと述べている)

•バッテリー管理: ハイブリッド車であるにも関わらず、バッテリー残量が3ブロック以下で一晩駐車すると、翌朝クルマが動かなくなる可能性があるという「バッテリー管理」の必要性。他のハイブリッド車では経験したことがない問題である

•価格: オプション込みで約7700万円という価格は、非常に高価

•小さな燃料タンク: 65リットルの燃料タンクは、かつての458の86リットルと比較して小さく、燃費も良くないため、頻繁な充電や給油が必要になる。特に、バッテリーを充電するためにクオリファイモードを頻繁に使用しなければならず、ガソリンを消費することも

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なぜハリー・メトカーフは296 GTSを買わないのか?

ハリー・メトカーフはこの296 GTSを「素晴らしい、驚くべきクルマ」と認めつつ、個人的には購入しないと結論付けています。

その理由は、主に「複雑すぎるテクノロジー」と「そのテクノロジーがもたらす管理の手間」にあり、特にインターフェースの煩わしさとバッテリー管理の必要性は、ハリー・メトカーフによれば「クルマの楽しみを阻害する」。

つまりフェラーリがターボチャージャーの導入を急ぎすぎたこと、そしてV12自然吸気を継続した成功例などを勘案し、このV6ツインターボハイブリッドがもたらす複雑さを指摘しているわけですが、これはレーシングカー(499P)の技術と合致するものの、同氏としては余計な「複雑さ」だと感じているわけですね。

実際のところ市場もこの複雑さに反応しているようで、ハリー・メトカーフが見た限りでは、多くのオプションが追加された新車同様の296GTSが「大きく値下がり」して売られているケースが散見され、この現象については「非常に魅力的なクルマであるはずなのに、オーナーにとっては飲み込みがたい現実であるはずだ」とも。

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ハリー氏は、このクルマの性能や見た目を「驚異的」と評価しつつも、「よりシンプルなテクノロジー」を求めていて、将来的には(自身のクルマとして)V12エンジン搭載車や、ハイブリッドではないであろうローマの後継モデルなど、よりシンプルなフェラーリの購入を検討すると締めくくることに。

フェラーリ296GTB / 296GTSは「素晴らしいクルマ」であり、フェラーリがこのような技術を作り上げ、問題なく動いていることは賞賛されるべきであり、しかしそれはあくまでも「適切な管理」を伴うものという但し書き付きのもので、ハリー・メトカーフにとっては、その「特殊性」がクルマの楽しさを阻害し、さらにはテクノロジーの複雑さに見合っていないと感じているわけですね。

ハリー・メトカーフがフェラーリ296GTSを評価する動画はこちら

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参照:Harry's garage(Youtube)

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  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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