| フェラーリはおそらく「F163」設計時に「今後のフェラーリの(パフォーメンス面での)フラッグシップのエンジンはすべてV6」と考えていたようである |
現在のF1(SF-24)、499P、F80はすべてV6エンジンを積んでいる
さて、発売から少し経過した後もホットな話題を振りまいているフェラーリの最新ハイパーカー「F80」。
その話題の中心はスタイリングそしてV6エンジンの搭載ですが、フェラーリはこのV6エンジンについて「ピッコロV12(小さなV12)」と呼んでいます。
実際のところ、このV6エンジン単体で「900馬力」という6.5リッターV12エンジンを超える出力を発生させ、現在手に入るロードバージョンのフェラーリだと「もっともパワー密度の高い」エンジンとなっているわけですね。
-
フェラーリF80はなぜ「V6、4WD」という記念限定モデルの伝統に合致しない構成を採用したのか?フェラーリ自らV12を採用しなかった理由を語る
Image:Ferrari | フェラーリの記念限定モデルは「過去を振り返る」のではなく「新しい未来」を創ってゆく存在となるべきである | そのためには「新しい道」を示さねばならない さて、ついにダイ ...
続きを見る
フェラーリが「V6エンジン」を選択した例は(ロードカーだと)多くない
そこでこの「V6エンジン」について掘り下げてみたいと思いますが、まずフェラーリがV6エンジンを市販車に採用した例は「296GTB / 296GTS」のみで、”ディーノ”ブランドにまで拡大したとしてもディーノ 206 GT、ディーノ 246 GT、ディーノ 246 GTSの3車種のみ。
参考までに、レーシングカー、かつV6エンジンをリアミッドに搭載したフェラーリだと1961年の246SP7,1961年の156 F1、1981年の126 CK、1982年の126 C2、1983年の 126C3、2014年以降のF1マシン、そしてル・マン24時間レースの覇者である499P。
もちろんフェラーリの最新F1マシン、SF-24もV6エンジンを採用しているので、現在のフェラーリの「モータースポーツの最高峰(F1とル・マン)、そしてロードカーのフラッグシップ(F80)はすべてV6エンジンを積んでいる」ということになりますね。※F1マシンはともかく、499P、F80にこのV8エンジンが積まれているとなると、フェラーリはこのV6エンジン開発時から現在の展開を見越していたのだと考えられる
まず、296GTBとともに登場した「フェラーリブランド、そしてロードカーとしては初の」V6エンジンである”F163”は(1961年の156 F1と同じ)バンク角120度という構造を持つものの、もちろん最新の技術を用いて設計された新型ユニット(エンジン単体では663馬力を発生)。
エキゾーストマニホールドとシングルテールパイプが圧力波を増幅し、さらには等間隔爆発を採用していますが、統合されたインテークプレンムとエンジンサポートがシリンダーヘッドのインテーク側に配置され、”非常に”コンパクトで軽量であることも大きな特徴です。
そしてこの120度というレイアウトは(90度など一般的な構造に比較して)Vバンクの間が広く、そこにターボチャージャーを押し込む「ホットV」を可能とし、これによってエアが燃焼室に届く距離が短くなり、結果的にターボラグが減少するわけですね(このモノスクロールターボチャージャーは18,000rpmまで回転することが可能で、ブースト効率が大きく向上している)。
さらにアルミニウム合金製のシリンダーヘッドとエンジンブロックは、増加した燃焼室圧力に対応するよう設計され、このエンジンは新しいバルブトレインを特徴とし、専用の吸気および排気バルブプロファイル、オイルポンプアセンブリ用チェーン、さらにはニトリド処理を施したニトリウム鋼製のクランクシャフトも採用しています。
なお、これは性能とは直接の関係がないものの、(特許取得済みの)ホットチューブによってエキゾーストシステムの上流(ターボチャージャーに排気が送り込まれる前)からキャビンにサウンドを届けることが可能となっています。
フェラーリF80のV6エンジンは更に高性能である
そしてフェラーリF80に積まれるエンジンは「F163CF」と呼ばれるF163の発展形で、499Pからの直接のフィードバックが組み込まれており、フェラーリいわく「点火およびインジェクションのタイミングを重視し、エンジンのパフォーマンスを極限まで引き上げた」。
さらにフェラーリのラインナップで初めて(最新の)ノックコントロールを導入しており、ノック限界に近い状態で動作し、高い(効率的な)燃焼室圧力を活用することが可能となっています。
F80のエンジンも2つのターボチャージャーを搭載していますが、F80のターボチャージャーには、(296GTB / 296GTSとは異なって)タービンとコンプレッサーハウジングの間に設置されたエレクトリックモーターが組み込まれ、中~高回転域でのパワーを最適化して低回転域でのターボラグを減少させることできるわけですね。※F80に採用されるインジェクターは296GTBよりも高圧な350バール
なお、フェラーリはF80においてV6エンジンをより低く配置し重心を改善しており、これはアンダートレイにできるだけ近くなるように積まれるほか吸気と排気経路を短縮し、加えてチタン製コンロッドとピストン、インコネル製排気マニホールド、エンジン全体にわたってチタン製ビスを採用することで軽量化と高剛性化を図っていると説明され、大きく改良されていることもわかりますね。
合わせて読みたい、フェラーリ関連投稿
-
フェラーリF80は「近代のフェラーリの考え方を反映した技術上の頂点」。フェラーリはF430以降大きくそのあり方をシフトし、ロードカーにおいては常にこういった革新を行ってきた
Image:Ferrari | フェラーリは常に変化し続けており、ボクらはその考え方を理解し総合的にラインアップを捉える必要がある | 現時点でF80はフェラーリのロードカーの一つの到達点である さて ...
続きを見る
-
フェラーリは当初F80を「より攻撃的にすべく」シングルシーターとして企画していたようだ。実現すれば”座席あたり”もっとも高額なロードカーになっていたかも
Image:Ferrari | もしかすると、それくらい”振り切った”ほうが499Pゆずりのパワートレーンを搭載するエクスキューズになっていたのかも | さたにはシングルシーターのほうが後世の価値が高 ...
続きを見る
-
マクラーレンW1、フェラーリF80、ブガッティ・トゥールビヨンがこぞって採用する「3Dプリンティングサスペンション」は今後のスタンダードに?そのメリットとは
Image:McLaren | 今後この技術は車体構造、ホイールなどさらに広い範囲へと拡大してゆくだろう | それにしても3Dプリンタによるパーツがここまで急速に拡大しようとは さて、マクラーレンは「 ...
続きを見る