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フェラーリV12至上主義を打ち破った「ディーノ」の真実とは。フェラーリに特別招待されたジャーナリストが動画を公開

フェラーリV12至上主義を打ち破った「ディーノ」の真実とは。フェラーリに特別招待されたジャーナリストが動画を公開

| そのジャーナリストとは「EVOマガジン」創業者である |

【この記事の要約】

V12絶対主義の崩壊:フロントエンジンV12にこだわっていたエンツォ・フェラーリを変えたのは、愛息「ディーノ」の情熱だった

悲劇から生まれたV6:病床の息子と共に構想した小型V6エンジンが、フェラーリに新たな歴史を刻む

異例のフィアット提携:レースのホモロゲーション(量産規定)をクリアするため、フィアットと手を組み驚異的なスピードで量産化を実現

超高回転型エンジン:1960年代にして8,000rpmまで回る2リッターV6エンジンを搭載し、ポルシェ911Sなどと肩を並べる存在に

現代への継承:最新モデル「296」や「F80」にもV6が採用され、ハイブリッド化による重量増を相殺する究極のコンパクトエンジンとして大活躍

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かつて、そして現代においても「V6」フェラーリは大きな議論を呼んでいる

人気YouTubeチャンネル「Harry's garage」のオーナー、ハリー・メトカーフ氏がフェラーリ本社(マラネロ)に特別招待されて撮影したドキュメンタリー映像が公開に。

ここではフェラーリの歴史的モデル「ディーノ(Dino) 」の誕生秘話に迫る内容が明かされており、その内容をかいつまんで説明したいと思いますが、さすがにフェラーリに招待されただけあって貴重なアーカイブ資料にも触れており、中には「エンツォ・フェラーリが1969年4月18日、シャシーナンバー412のディーノ246GT(ボディカラーはブルー、内装はレッド)を注文したという記録、エンツォ・フェラーリであっても値引きは一切なかったという記録」も紹介されています。

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EVOマガジン創業者がフェラーリ296GTSをレビュー。「多くの面で素晴らしく、V6エンジンは”栄光の咆哮”」。ただし「買わない」と語るその理由とは【動画】
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なぜエンツォ・フェラーリはV6エンジンを世に送り出したのか

1960年代、フェラーリといえば「フロントに巨大なV12エンジンを積む」のが当たり前の時代。

しかしそこに突如として現れたのが、ミッドシップレイアウト(車体中央にエンジンを配置)を採用した2リッターV6エンジンの「ディーノ 206 GT」です。

これは当時のフェラーリにとって、あまりにも異端で物議を醸すクルマであったのですが、現代においても296シリーズ、そしてF80といった「V6エンジン搭載モデル」は大きな議論を呼んでおり、今も昔もフェラーリファンにとって「V6エンジン」は理解することが難しい存在なのかもしれません。

フェラーリとV6エンジンの物語。「病床で描かれた夢」ディーノに始まり、最新F80に至るまで受け継がれる伝統とは
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なぜ、頑固な(V12エンジンこそが至高とする)エンツォ・フェラーリが自らの哲学を曲げてまでこのクルマを作ったのか?

そこには、父と息子の深い絆と、未来を見据えたレース戦略、そして現代の最新フェラーリへと繋がる「V6エンジンの魔法」が隠されているのは御存知の通り。

エンツォの息子アルフレード(愛称:ディーノ)は、筋ジストロフィーという難病を患い、24歳という若さでこの世を去っているのですが、この若き天才エンジニアが命を懸けて父に遺したアイデアが「V6エンジン」であり、それを積んだクルマが「ディーノ」というわけですね。

ただ、エンツォ・フェラーリは「息子への愛」のみでディーノを市販したわけではなく、そこには非常に複雑な「商業的理由」も絡んでいます。

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フェラーリV6エンジンの軌跡:ディーノの遺志を継ぐ魂と技術の進化とは
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今回の映像で語られた重要なポイントを簡潔にまとめると・・・。

  • フェラーリ・クラシケでの発掘:マラネロの最古の工場跡地にある「フェラーリ・クラシケ」のアーカイブから、ディーノ誕生に関する当時の貴重な設計図や販売記録が公開
  • ディーノ誕生の背景:V6エンジンの構想は1950年代後半に遡り、息子ディーノのアイデアをもとに、軽量でパワフルなエンジンがレース向けに開発される
  • フィアットとの提携:1960年代後半、F2レースの規定変更により「(エンジンサプライヤーとなるには)年間500基のエンジン量産」が義務付けられる。これをクリアするため、フェラーリはフィアットと提携し「フィアット・ディーノ」を発表、その翌年に自社の「ディーノ 206 GT」を発表するという離れ業をやってのける
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  •  現代のV6ハイブリッドへの回帰:現代の最新モデル「296 Speciale」や次世代ハイパーカー「F80」においてフェラーリは再びV6エンジンを採用。ハイブリッドシステムの重量を補い、最高の運動性能を引き出すためにはV6の軽さとコンパクトさが不可欠であるという理由から
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車種概要、性能・デザイン・スペックなどの特徴

ここでは、フェラーリの歴史を変えた「ディーノ 206 GT」とその後の大ヒット作「246 GT/GTS」の特徴、および驚きのスペックをまとめてみたいと思います。

【ディーノ 206 GT / 246 GT の主なスペック・特徴】

ボディ素材の変遷

    ◦ 206 GT(1967年〜):レースカー譲りのオールアルミ製ボディを採用し、乾燥重量わずか約900kgという超軽量を実現

    ◦ 246 GT/GTS:量産性を高めるためスチール製ボディへ変更し、ホイールベースも延長される

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驚異の超高回転型V6エンジン

    ◦ 206 GTの2リッターV6エンジンは極端なショートストローク設計(ビッグボア)で、なんと8,000rpmという当時の常識を覆す高回転で最高出力を発揮※当時、8,000回転まで回るエンジンを積むロードカーは皆無に等しかった

デザインとブランドの独自性

    ◦ フェラーリ初のミッドシップ市販車であり、息を呑むほど美しいプロポーションを持っている

    ◦ 発表当初のディーノには「フェラーリの跳ね馬ロゴ」が一切付けられておらず、「Dino」の専用バッジのみ(V12エンジン搭載モデル以外はフェラーリではないというエンツォ・フェラーリの信念を反映。ここを見ても、息子よりもフェラーリブランドを重視していたことがわかる)。しかしディーラーやオーナーがフェラーリエンブレムに交換していたという記録も残り、エンツォ・フェラーリ自身も顧客の要望があればそれに応じ、最終的にディーノブランドを閉じる際にはすべて在庫車のエンブレムやバッジを「ディーノからフェラーリに」交換するよう指示持を出している

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市場での位置付けと最新モデルへの継承(競合比較)

当時の市場での位置付け

ディーノは、強力で高価なV12フェラーリを運転できない層、あるいは買えない層に向け、フェラーリの魅力を開放するための重要な役割を担っていたクルマです。

当時のポルシェ911Sなどに対抗しうるパフォーマンスを持ちつつも、8,000rpmまで吹け上がる「フェラーリらしい」高揚感をも持ち合わせており、結果として246 GT/GTSは数千台規模で生産され、フェラーリにとってかつてない大きな商業的成功を収めることに。

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現代の市場での位置付けと継承

ハリー・メトカーフ氏の「なぜ今、再びV6なのか?」という疑問に対し、296スペチアーレの開発責任者であるマヌエラ・セッコー二氏は明確にこう答えています。 

「現代のスーパーカーは環境性能を満たすためにハイブリッド化が避けられませんが、それにより車体後部が重くなります。その重量増を相殺し、俊敏なハンドリング(敏捷性)を取り戻すための最適解が、コンパクトで軽量なV6エンジンなのです。」

実際のところ最新の296スペチアーレでは、V6エンジン単体でリッターあたり234馬力という業界トップクラスの出力を誇り、さらには8,500rpmまで吹け上がることによって、「フェラーリらしい」官能的なサウンドを響かせているわけですね。

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なお、動画内では「(フェラーリのエンジニアが)ハイパフォーマンスカーとしての要求を満たせる限界がV6である」と断言しており、エンジンの小型化とフェラーリらしいエモーショナルな走りのギリギリのバランスを実現できるのが現代のV6エンジンなのだとも考えられます。

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結論

「ディーノ」はV12エンジンとフロントレイアウトを何よりも愛したエンツォ・フェラーリが、愛する息子の声に耳を傾け、自らの哲学を打ち破ってまで生み出した「革新の象徴」。

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当時の180馬力から始まったV6エンジンの旅は、現在、800馬力以上ものパワーを誇る最先端のハイブリッドカー「296シリーズ」や「F80」へと受け継がれています。

フェラーリのエンジンは「そのクルマの魂」と比喩されることもありますが、その魂の中には、今もなお、若きエンジニア「アルフレード・ディーノ」の情熱が甲高いエキゾーストノートと共に生き続けている、ということになりそうですね。

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ハリーズガレージが公開した「フェラーリV6」に関する動画はこちら

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参照:Harry's garage

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