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フェラーリ初のEV「ルーチェ」正式発表、iPhoneのデザイナーが贈る”フェラーリ史上もっとも空気抵抗が低く、もっとも快適な”新世代の電気自動車

フェラーリのEV、ルーチェ(ブルー)のエクステリア〜フロント

Image:Ferrari

| これまでのフェラーリとは全く異なる「新しいフェラーリ」が登場 |

スポーツでもラグジュアリーでもない、新しいカテゴリを創出したと考えていい

フェラーリがついに同社初の電気自動車「ルーチェ」を発表。

このクルマ最大のトピックは「EV」というよりも「iMacやiPhoneのデザイナーとの共同開発による」というところにあるかと思います。

正確に言うならば、アップルのデザインを長年牽引してきたサー・ジョニー・アイブが設立したLoveFrom、そして共同経営者であるマーク・ニューソンとフェラーリのデザインオフィス”チェントロルティーレ”とのコラボレーションによるもので、いままでのフェラーリとは全く異なる思想をもって、そして異なる領域へと進出した意欲作ということになりますね。

フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜リア

Image:Ferrari

この記事の要要約(30秒でわかるポイント)

  • 歴史の転換点: フェラーリ初となる完全電動(BEV)の5人乗り4ドア・スーパーセダン「フェラーリ・ルーチェ(Ferrari Luce)」がローマでついに世界初公開
  • 圧倒的なスペック: 自社開発の4基の独立エレクトリックモーターを搭載し、最高出力は1,000馬力以上(ブーストモード時)。0-100km/h加速はわずか2.5秒、最高速度は310km/hオーバー
  • 鬼才たちの競演: デザインはフェラーリ・チェントロ・スティーレ、そして元Appleのチーフデザイナーであるジョニー・アイブ氏とマーク・ニューソン氏率いる「LoveFrom」が共同担当
フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜フロント

Image:Ferrari

フェラーリ「ルーチェ」はこんなクルマ

「電気自動車になっても、フェラーリはフェラーリであり続けるのか?」――。世界中のカーガイが抱いていたこの最大の疑問に対し、イタリア・マラネロの跳ね馬が出した究極の解答、それが「フェラーリ・ルーチェ(Ferrari Luce)」。

ローマの「Vela di Calatrava」で世界初公開されたこのモデルは、フェラーリの78年に及ぶレースの血統を引く初の100%電気自動車であり、パワートレインをガソリンエンジンからエレクトリックモーターに置き換えただけのクルマとは異なり、「テクノロジー起点ではなく、フェラーリという原点から出発する」という概念のもと、5年の歳月と60以上もの新規特許を投入してゼロから開発されたクルマです。

フェラーリのEV、ルーチェ(ブルー)のエクステリア〜俯瞰図

Image:Ferrari

フェラーリにとってはプロサングエに次ぐ「4枚ドア」ということになりますが、意外でははあるもののフェラーリ創業者、エンツォ・フェラーリは「自分のクルマ」として4シーターを好んだといい、最初に選んだフェラーリ製の”自家用車”は1960年製の250GT 2+2。

一方、「フェラーリブランド」からは4ドア車を発売することを頑なに”拒否”したといい、ピニンファリーナが4ドアコンセプトを制作したものの、それ以降は議論すらなされなかったそうですが、エンツォ・フェラーリは4ドアの利便性と快適性を十分に理解していたとされ、もし彼が存命であればこのルーチェを「自分用として」乗っていただろうな、と思わせるクルマでもありますね。

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フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜フロント

Image:Ferrari

このフェラーリ・ルーチェは完全なBEV(バッテリーEV)であり、しかし既存の他社製電動車とは一線を画す数々の独創的なアプローチが採用されています。

最大の特徴は、その開発のすべてが(多くのEVがサプライヤーの供給によるエレクトリックコンポーネントによって組み立てられるのに対し)マラネロの自社工場で行われたことにあり、4基のモーターから880Vの超高電圧バッテリーパックにいたるまでがインハウスによって設計され、新設された電動車専用工場「E-Building」で生産されます。

ジョニー・アイブ氏らが手がけた「引き算の美学」

エクステリアおよびインテリアのデザインは、フラビオ・マンゾーニ氏率いるフェラーリのデザインセンターと伝説的なプロダクトデザイナーであるサー・Jony Ive(ジョニー・アイブ)氏、Marc Newson(マーク・ニューソン)氏が結成したクリエイティブ集団「LoveFrom」とのコラボレーションによって生み出され、外観は「滑らかで連続的な「ガラスハウス(キャビン)」を、流れるようなエアロダイナミックシェルで包み込んだ非常に純粋なフォルム」を採用しています。

フェラーリのEV、ルーチェ(ブルー)のエクステリア〜リアサイド

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さらにはフロントとリヤに配置された”フロート”ウィングの下を空気が通り抜けるという構造を採用することで、マラネロのロードカー史上最も低い空気抵抗係数(Cd値)を達成した、とのこと。

たしかに連続性のあるフォルム、こだわりのディティールは「新しく」、ジョナサン・アイブやマーク・ニューソンが得意とする「それが属する製品カテゴリの常識や固定概念にとらわれない」デザインがなされており、これがフェラーリへと刺激を与えたことも間違いないのでは、と考えています(よって、少なからず今後のフェラーリ各モデルにはルーチェのデザイン的・思想的影響が反映されるであろう)。

フェラーリのEV、ルーチェ(イエロー)のエクステリア〜テールランプ

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ちなみにテールランプは「非点灯時にはブラックアウトして完全にツルっとした表面になる」そうなので、このあたりは「スマホ的」と言えそうです(フェラーリらしい丸4灯で、1980〜1990年代のフェラーリを連想させる)。

そして興味深いのは、今回フェラーリがルーチェの発表に際し「ロッソ」「ジャッロ」に加え、「アッズーロ(ブルー)」を用意してきたこと。

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フェラーリは1990年代辺りの新車発表イベントでは、スクーデリア・フェラーリを示す「ロッソ」、フェラーリのカンパニーカラーである「ジャッロ」の二台を用意することが常となっていましたが、今回はその手法を「復活」させたのかもしれず、そしてそれに加えて「新しいフェラーリ」を示すため、これまで”一般的ではなかった(しかしフェラーリとは縁が深い)”ブルーを用いてきたのかも。

なお、このホイールは275GTB(1966年)、365GT2;2(1967年)、ディーノ208GT4(1975年)などを連想させるスタイルですね。

フェラーリのEV、ルーチェ(イエロー)のエクステリア〜フロントサイド

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「レッド」の前には「ブルー」だった。フェラーリは1960-1970年代にレーシングドライバーのスーツ、スタッフのユニフォームにブルーを使用していた
「レッド」の前には「ブルー」だった。フェラーリは1960-1970年代にレーシングドライバーのスーツ、スタッフのユニフォームにブルーを使用していたことがある

| 当時のフェラーリのレーシングカーのシートも「ブルー」である | フェラーリのエンブレムにも「ブルー」が採用される可能性があったとも言われ、エンツォ・フェラーリは”ブルー好き”であったのかもしれない ...

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フェラーリ・ルーチェのインテリアは「エクステリアとシンクロ」

ルーチェのインテリアは昨今の「過剰な液晶ディスプレイ天国」に対するアンチテーゼとも言えるデザインを持ち、美しく削り出されたアナログな物理スイッチ、トグル、そしてギヤセレクターに使用されるプレミアムなガラスやポリッシュドスチール、アルミニウムなど、「素材の純粋さ」が強調されたラグジュアリーな空間に仕上がっています。

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フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜全景

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そしてこれもまた、ジョナサン・アイブがiPhoneでこだわった「高品質」がよく再現されている部分であり(アルミニウムは高精度な加工に向いている)、iPhoneだと(最新モデルではなくなってしまいましたが)「SIMカードトレイ」などに恐るべき加工精度を見ることが可能です。

フェラーリ「ルーチェ」が証明した「新時代の」脱ヒエラルキー・インテリア。どこが最初に模倣するかは見ものである

Image:Ferrari

さらにステアリングホイールも往年のフェラーリを連想させるもので・・・

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜全景

Image:Ferrari

センターコンソールや各ディスプレイが「非使用時にはブラックアウト」となるところも「エクステリアとの連動性」を感じさせるところであり、そしてこういった連動性については、「単に表層のデザインのみをLoveFromが担当した」のではなく、「コンセプトそのものをLoveFromとフェラーリが一緒に考えた」からなのかもしれません(LoveFromは製品のデザインのみを行うのではなく、製品を使用する人やポジショニングを考え、総合的に製品のプロデュースを行うオフィスである)。

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フェラーリ ルーチェのセンターコンソール

Image:Ferrari

ちなみに定員は「4名」ではなく「5名」で、つまり後部座席は「独立したシートによるラグジュアリー空間」ではなく「ファミリーユース的」で、これはもちろんLoveFromそしてフェラーリの意図が反映されたものと考えてよく、そしてプロサングエとの棲み分けを図ったという可能性も考えられます。

なお、シートやドアインナーパネルの「横方向のパディング」もまた、かつてのフェラーリを連想させる部分でもありますね。

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜俯瞰図

Image:Ferrari

「エレキギター」から着想を得た官能のサウンド

そしてフェラーリのDNAである「エモーショナルなサウンド」にも、驚くべき特許技術が投入され、フェラーリは疑似的なエンジン音を合成してそれをスピーカーから鳴らすという安易な方法を拒絶しています。

その代わりとなるのが「4基のエレクトリックモーターが実際に稼働する際の微細な”振動”をアセロメーター(加速度計)でダイレクトに拾い上げ、それをアコースティックに増幅して車内外に放出するシステム」で、これはエレキギターが弦の振動をピックアップで拾い、アンプで唯一無二の音色を奏でるように、ルーチェは独自の「リアルなモーターの咆哮」を響かせるというわけですね。

つまるところ、ルーチェに用いられるサウンドは「実際にパワートレインが発生する音」ということになり、フェイクサウンドを採用するEVとは一線を画するということに。※ホイールはフロント23、リア24インチという巨大サイズ

フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜ホイール

Image:Ferrari

フェラーリ_ルーチェ:車種概要、性能・スペック

フェラーリ・ルーチェのエンジニアリングにおける驚異的な数値を分かりやすく一覧表にまとめると以下の通り。

フェラーリ・ルーチェ(Ferrari Luce)主要諸元・スペック

項目詳細スペック・特徴
ボディタイプ5ドア・5人乗り スーパーセダン / シューティングブレーク
全長 / 全高約5,026mm / 約1,544mm
車両重量(車重)2,260 kg(全アルミシャシー、75%リサイクル素材)
パワートレインF1由来のHalbach(ハルバッハ)配列・独立4モーター(4WD)
最高出力1,000 cv(ブーストモード時)
最高回転数フロント:30,000 rpm / リヤ:25,500 rpm
0-100 km/h 加速2.5秒(0-200 km/h は6.8秒)
最高速度310 km/h 以上
バッテリー容量122 kWh(880Vアーキテクチャ、自社開発パック)
航続距離>530 km(WLTPモード) / EPA予測値:約450 km
最大充電出力350 kW 急速充電対応(最大0.5メガワットの受電能力)
足回り・サスペンションF80由来の第3世代48Vアクティブサスペンション、4輪操舵(4WS)
タイヤ・ホイールフロント:23×9.5インチ / リヤ:24×11.0インチ(フェラーリ史上最大)
欧州予定価格約550,000ユーロ〜(日本円換算で約9,000万円以上)
フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜サイド

Image:Ferrari

競合比較と市場でのポジショニング

電気自動車市場における、フェラーリ・ルーチェが持つ圧倒的な優位性と競合ハイパフォーマンスEVとのアプローチの違いを見てみると・・・。

1. 「重量の呪縛」を打ち破る圧倒的な軽量化

EVの最大の弱点は重いバッテリーによる車重の増加であり、しかしルーチェの車重は2,260kgに抑えられていて、これはV12エンジンを搭載する同社の4ドアモデル「プロサングエ(2,180kg)」と比べてもわずか4%(80kg)の増加にとどまります。

ポルシェ・タイカン(2,300kgオーバー)やBMW i4 M50(2,290kg)といった、車格がワンサイズ小さい一般的なスポーツEVよりも軽く仕上げられている点は、マラネロの軽量化技術(75%リサイクルアルミニウム製 chasis など)がいかに突出しているかを証明するものといえそうですね。※ただしルーチェの重量表記は「乾燥重量」なのかもしれない

フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜フロントサイド

Image:Ferrari

2. コントロールの自由度を高める「左右パドル」の新しい役割

多くのEVがパドルシフトを「回生ブレーキの強弱調整(ワンペダルドライブの調整)」に使う中、フェラーリは独自の特許システムを導入しています。

ドライバーは左のパドルを引くことでコーナリング進入時の回生ブレーキ(エンジンブレーキに相当)をコントロールし、立ち上がりでは右のパドルを操作することで、加速のプログレッシブな感覚を維持したまま、さらに強力なトルクを追加(ブースト)することができるとされ、これによって従来のガソリン車でマニュアル(MT)やDCTを操っていた時のような、「自らマシンをコントロールしている感覚」がEVでも完璧に再現されている、ということに。

フェラーリのEV、ルーチェのインテリア〜ステアリングホイール

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フェラーリのステアリングホイール〜エンジンスターターボタン(ロッソレザー)
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結論

「フェラーリ・ルーチェ」の登場は、自動車の電動化が必ずしも「没個性で退屈な未来」ではないことを世界に証明するもので、大容量122kWhのバッテリーを床下に敷き詰め、F1由来のハルバッハ配列を採用した高回転モーターを4基独立制御する。

これほど先進的なデジタル技術の塊でありながら、キーを差し込んだ瞬間に高精度の有機ELディスプレイに伝統のフェラーリ・イエローが波打ち、走り出せばエレキギターのように咆哮するその姿はまさに「新世代の跳ね馬」そのものだと考えています。

価格は約550,000ユーロ(日本円だと9000万円超)に設定され、限られたエンスージアストのための雲の上の存在ではありますが、効率や数値、自動運転の便利さばかりが語られるEVの世界において、「走る歓びと官能性」のためにここまで狂気的な情熱を注げるブランドが健在であるという事実は、すべてのカーガイにとって大いなる希望となりそうですね。

フェラーリのEV、ルーチェ(レッド)のエクステリア〜フロントサイド

Image:Ferrari

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