
| 次々と明らかになるフェラーリの新型EV「ルーチェ」の詳細 |
あまりに加速が速すぎても「気持ち悪くなるだけ」だと言われるが
「EVの加速は鋭すぎて、時として脳を不快にさせる」。フェラーリのベネデット・ヴィーニャCEOが現在のEVの多くが陥っている「数値競争」へと一石を投じることに。
同氏は最新のインタビューにて、フェラーリ初のEV「ルーチェ(Luce)」の開発段階において、NASAと共同で「人間が不快に感じない加速レベル」を研究したことを明らかにしています。
なお、「理論上」EVの0−100km/h加速は「1秒台前半」も可能だとは言われますが、かつてベントレーの前CEOも「そうなればただただ気持ち悪いだけです」ともコメントしており、まったく楽しくはないのかもしれません。
ここでフェラーリが「単に速いだけではない」、人間の感性に寄り添った「跳ね馬」らしいスリルをどう実現したのか、その革新的なアプローチを見てみましょう。

Image:Ferrari
この記事の要約(30秒チェック)
- NASAとの共同研究: 「脳を乱す加速」を科学的に特定。不快なG(重力加速度)を排除し、エモーショナルな加速を実現
- パドルシフトの正体: 回生ブレーキの調整ではなく、「トルクの伝達量」を操作。擬似的な変速フィールを演出
- DJではない本物の音: 擬似的なエンジン音ではなく、エレクトリックモーターの低周波音を増幅させた「本物」のサウンド
- 航続距離とコンセプト: 航続距離は500km以上。サーキット用ではなく、公道での「走りの悦び」に特化
なぜEVの加速は「不快」なのか?
多くのEVが「0-100km/h加速 2秒切り」を競っていますが、ベネデット・ヴィーニャCEOはこれに懐疑的であり・・・。
- 脳への影響を科学する: NASAの知見を借り、前後方向の加速度(縦G)が人間の脳や平衡感覚に与える影響を分析。「リニアすぎて刺激がない」「唐突すぎて気分が悪くなる」といったEV特有の欠点を克服
- 5つのスリル要素: フェラーリは「縦の加速」「横の加速」「ブレーキング」「シフトチェンジ」「サウンド」の5要素すべてが揃って初めて、フェラーリの名に相応しいスリルが生まれると考えている

Image:Ferrari
つまるところ、同じ0-100km/h加速が同じ3秒であっても「同じ比率で速度が上昇するか」「カーブを描き、加速度的に速くなるか」によってまったく速さの感じ方が異なるはずで、かつフェラーリは「減速」「コーナリング」という”加速だけではないG”にも注目したということになりそうですね。
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フェラーリ『ルーチェ』の革新的なメカニズム
今回明かされた「ルーチェ」に採用される機能をまとめると以下のとおりですが、これまでに判明している「ローンチコントロール」のほかにも、これまでにフェラーリが申請した特許が盛り込まれていることがわかります。
| 機能 | 特徴 | 期待される効果 |
| トルク制御パドル | ステアリング裏のパドルでトルクの掛かり方を調整 | マニュアル車のような「操っている感」の創出 |
| オーセンティック・サウンド | モーターの低周波音を拾い、リアルに増幅 | 「高周波の不快なノイズ」を「官能的な咆哮」へ |
| NASA監修G制御 | 加速度の立ち上がりを人間工学に基づき最適化 | 長時間運転しても疲れず、かつ刺激的な加速 |
| 非サーキット仕様 | バッテリー重量を考慮し、公道での楽しさを優先 | 日常域での圧倒的なハンドリングと快適性 |

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サウンドへのこだわり:DJは不要
「そもそも電気自動車は無音ではない」とヴィーニャCEOは語ります。
さらにフェラーリは、スピーカーから録音したエンジン音を流すような「DJのような真似はしない」とも。
特許情報によると、ルーチェは電気モーターが発する独特の音の中から、人間が心地よいと感じる周波数を抽出し、それを物理的に増幅させるシステムを採用しているものと推測でき、これによって既存のEVとは一線を画す、メカニカルでオーガニックなサウンド体験を提供するというわけですね。

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結論
フェラーリ『ルーチェ』は、これまでの「スペック至上主義」のEVに対するアンチテーゼでもあり、NASAの科学、ジョナサン・アイブのデザイン、そしてフェラーリのパッション。
これらが融合したとき、EVは単なる「速い家電」から、再び「魂を揺さぶる相棒」へと進化することになるものと思われますが、問題は消費者や市場がそれを理解できるかどうか。
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もし理解できなければルーチェは大勢のEVの中に埋没してしまい、逆に理解されたならばEV業界のトレンドを大きく変えるパイオニアに。
すべてが明らかになるのはあと数ヶ月先ということになりますが、今までのフェラーリのニューモデルの発表とはまた異なる緊張感があるように思います。

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(フィオラノ・サーキットのラップタイムを重視するフェラーリだけに)意外かもしれませんが、ルーチェは「サーキットでのラップタイム」を追っておらず、これは現在のバッテリー技術ではサーキット走行に必要な連続負荷と重量のバランスがフェラーリの求める水準に達していないと判断したため。
その代わり、ワインディングやハイウェイでの「世界最高のグランドツーリング体験」を目指したのがこのルーチェというわけですが、「失ったものもあれば得たものもある」完全電動化には要注目ですね。
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