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ランボルギーニはなぜレヴエルトとテメラリオを「いまだかつてないほど、機械的、そして数値的に」近づけたのか?一方でキャラクターの差は「これまで以上に」

ランボルギーニ・テメラリオ

Image:Lamborghini

| ランボルギーニの各ラインアップに対する考え方は「大きく変わった」ようだ |

それもやはり「アウディ」という呪縛から逃れたためであろう

さて、ランボルギーニはテメラリオを発表し、レヴエルトとウルスSEとあわせて「すべてのラインアップをプラグインハイブリッド化」することとなっています。

ただ、このテメラリオで衝撃的であったのは(ぼくにとって)V8エンジンを採用したこと以上に「レヴエルトと同様の3モーターセットアップを採用し、レヴエルトとの馬力差が100馬力以内に収まっていること」。

ランボルギーニはガヤルド、そしてウラカン時代において「V12モデルとの差異」を徹底して設けており、両者の間には超えられない一線を設け、エンジンはもちろんトランスミッションやステアリングホイールなど(目に見える)パーツの共有すら許されなかったわけですが(ポルシェやフェラーリはトップエンドとエントリーモデルとの間でも多くのパーツ、デザインディティールを共有する)、レヴエルト、そしてテメラリオではパッケージング(エンジンやエレクトリックモーターの配置など)、トランスミッションやその他パーツについても多くを共有しており、つまり「フラッグシップとベイビーランボルギーニとの境界線が曖昧に」なってしまっているわけですね。

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Lamborghini

ランボルギーニは今後「よりランボルギーニらしく」

しかしながら、レヴエルトとテメラリオの接近についてはいくつかの理由があるものと思われ、その一つが「テメラリオは、ガヤルドやウラカンのように、アウディのクルマとの共通性をもたせる必要がなくなったこと」。

ガヤルドとウラカンでは「アウディR8との兄弟車であるべし」という制約があり、これがある意味でのランボルギーニらしさを阻害していたとも考えられますが、今回のテメラリオではそういったリミッターが外されており、よってランボルギーニは自由にテメラリオを「イチから」設計することが可能となっています。

ランボルギーニ
ランボルギーニ「ウラカン後継モデルについて、専用に設計された車体を持つことになります。妥協なしのね。現在は十分な利益があり、R8のような兄弟車は必要ありません」

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つまりはコスト的な(アウディR8に引っ張られた)制限も撤廃されたと考えて良いかと思いますが、それが現れている端的な例が新設計のV8エンジン。

これについてランボルギーニの最高マーケティング・セールス責任者、フェデリコ・フォスキーニ氏は以下のように語ります。

テメラリオの最大のセールスポイントの1つは、エンジンを共有していないことです。どのアウディのボンネットの下にも、そのツインターボ V8は見当たりません。ランボルギーニは、テメラリオ専用にゼロからエンジンを作り上げました。これは、同社が最初からやらなければならないことだとわかっていたことです。そしてこのような特性を持つエンジンは他にはありません。通常のV8ツインターボ4リッターではなく、予想外のエンジンを作り上げました。確かに、(フォルクスワーゲンが持つ、既存の)。ポートフォリオからV8を取り出し、そのまま押し込むこともできましたし、おそらくそれでも十分な働きをしたと思います。しかし、ゼロから作り上げることは、最初から必須だったのです。」

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つまり、これまで「ランボルギーニのV12モデルと、ガヤルド/ウラカンとの間にあった溝は、ガヤルド/ウラカンがアウディ寄りである必要があったために生じていた」可能性が高く、しかし今ではそういったリミッターもないので、ランボルギーニがやりたいことをやった結果、レヴエルトとテメラリオとが接近してしまい、よってレヴエルト、テメラリオともにランボルギーニらしさを妥協なく追求した究極の形なのかもしれません。

そしてテメラリオに積まれるV8エンジンは90度の「ホット V」レイアウト、フラットプレーンクランクシャフト、最大圧力36psiを生み出す2 のターボチャージャーを備え、さらにはアルミニウム合金のシリンダーヘッドとチタン製コネクティング ロッドによってエンジンの軽量化を実現し、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングされたフィンガーフォロワーによってバルブ トレインはレッドラインまで信頼性を保ちます。

ただ、自動車史上もっとも魅力的なエンジンのひとつとも評された(ガヤルド/ウラカンに積まれていた)V10エンジンに比較すると2気筒が削られたことは間違いなく、「自然吸気V10」という排他性も失ってしまったわけですが、これについてフェデリコ・フォスキーニ氏は「ランボルギーニのファンはV10エンジンを懐かしがると思うでしょうか」と尋ねられ、以下のように回答しています。

「V10からV8になったのではなく、”10から10,000”です。つまりこれは飛躍的な進歩であり、私は同社のファンがこのユニットを気に入ると確信しています。」

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レヴエルトとテメラリオはどのように棲み分けるのか?

たしかにこの「10,000回転まで回る」「リッターあたり200馬力を発生する」新型4リッターV8エンジンを否定する人はいないと思われますが、ここで気になるのはレヴエルトとテメラリオの生息領域のオーバーラップ。

エンジン型式こそ異なれど、「ミドシップレイアウト、リアに1モーター、フロントに2モーターを配置する4WD」というところは同じ構成をとなっていて、レヴエルトは1,015馬力、0-100km/h加速2.5秒、最高速350km/hというスペックを誇り、しかしテメラリオも920馬力、0-100km/h加速2.7秒、最高速342km/hと「かなり接近した」スペックを持っています。

つまり、ランボルギーニのV12フラッグシップモデルとベイビーランボとが「これまでにないほど、メカニズム的、パフォーマンス的に接近した」ということになりますが、これについてフェデリコ・フォスキーニ氏は以下のように言及することに。

「結局のところ、両社にはほぼ100馬力の差があります。加速が異なり、最高速度が異なり、顧客の要件という点では、このクルマは2つの異なるニーズを持っていると言わざるを得ません。1台はランボルギーニの象徴的なクルマです。もう1台は運転が楽しいだけでなく、より多用途で使いやすいクルマです。つまり、異なるニーズに応えており、多くのお客様が両方を購入することは明らかです。つまりこれらは2台の、完全に異なるクルマです。ですから、それが今日の当社のポートフォリオの強みだと思います。非常に差別化された2つの製品がありますが、いずれも最高級です。」

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これは非常に興味深いコメントで、つまりレヴエルトについては「象徴」であり、テメラリオは「ファン・トゥ・ドライブ」だと表現しているわけですが、これはフェラーリが12チリンドリにおいて「V12フラッグシップ」の役割を変化させ、それまでの「トップレベルのパフォーマンスを持っていなくてなならない」という絶対的物理的王者的な存在から「フェラーリの象徴」というスピリチュアルな存在へと変化し、パフォーマンス面でのトップレンジをミドシップモデルに任せたのとよく似ています。

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なお、現時点ではテメラリオのサーキット走行タイム等は公開されていないものの、今後徐々に「驚くべきパフォーマンス」が明かされてゆく可能性もあり、テメラリオに関する追加発表には期待したいところでもありますね。

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「テメラリオの発表により、ポートフォリオ全体のハイブリッド化の実行がついに終了しました。これで3つのモデルが一列に並んでいます。3月にレブエルトからスタートし、4月に北京でウルスSEを発売し、そしてテメラリオで製品ラインナップのハイブリッド化を締めくくります。これはランボルギーニにとって歴史的なことです。今日ほど強力なラインナップはかつてありませんでした。しかし、バッテリーが増えると重量と重量配分が複雑になり、レブエルトではランボルギーニが対処しなければならなかった問題です。テメラリオでは、ランボルギーニは3.8キロワット時のセルを巧みにセンタートンネルに押し込み、クルマの重心を低く保つためにできるだけ低く取り付けました。よって、我々のスポーツカーは完璧にバランスが取れています。

実際に、重量が増しても(テメラリオの乾燥重量は1,690kgである)、テメラリオはサーキットで十分な性能を発揮し、場合によっては、ウラカンよりも優れています。もちろん重量の影響があり、これは電動化のマイナス効果かもしれませんが、しかしもう一方では、2つのフロントモーターがアクティブトルクベクタリングとして機能するというプラスの効果があり、非常にパワフルな状態で、サーキットにおける完璧なハンドリングを実現できます。そのため、この組み合わせは、前モデルと比較してサーキット体験の面でアップグレードされています。

ランボルギーニ 最高マーケティング・セールス責任者 フェデリコ・フォスキーニ

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参照:Motor1

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