日本の道路環境は欧米や他の国とは大きく異なる
2/4の午後5時頃、六本木交差点にて目撃されたという新型トヨタGRスープラ(情報提供いただき、ありがとうございます)。
現段階では「プロトタイプ」ということになるかと思いますが、日本の環境に合わせてテストを行っている最中なのだと思われます。
今回目撃されたスープラは、フロントバンパーに北米仕様に装着される「オレンジ色のマーカーがない」こと、そしてホイールがやや小さいことが特徴(日本市場には4気筒モデルの「SZ-R」「SZ」が導入され、これらのホイールサイズはそれぞれ18インチと17インチ)。※6気筒モデルは19インチ
この画像、そして(19インチサイズのホイールを装着した)オフィシャルフォトとの相対性から比較するに、このスープラに装着されるホイールは18インチあたりなのかもしれません。
加えてこのプロトタイプには日本のナンバープレート用の樹脂製台座が装着されていて、日本で納車されるスープラには「これがついてくる」ということになりそうですね(フロントにナンバープレートが取り付けられているスープラの画像はかなり貴重)。
なお、日本の環境は非常に特殊で、夏季だと渋滞と照り返しによって路面付近の温度が異常に高くなり、これが自動車メーカーを悩ませる一つの要因。
そして温度とは別の問題で「渋滞」そして「交差点での右折待ち」「低速で動いたり止まったり」といった問題もあり、前者だと「アイドリングストップが思わぬ状況で作動」もしくは状況によって「エンジンがアイドリングストップから復帰しない」ことも(何らかの事情でコンピューターが「停止」を「駐車」と判断してアイドリングストップではなくエンジンを「完全停止」させること欧州のクルマには稀にある)。
そして「右折待ち」だと、対向車が進路を譲ってくれようとヘッドライトをピカっとしたとき、すぐスタートできるかどうかといったところも含みますが、色々な意味で日本の交通環境は世界に比べると特殊な要素を含んでいるようで、こうやって各自動車メーカーは日本でもテストを行うことになるわけですね。
さらに「低速で動いたり止まったり」というのも日本では多い状況で、止まったと思ったら動いたり、アイドリングストップが作動したらまた進まなければならないということも多く、これもまたクルマに負荷がかかったり、デュアルクラッチだとクルマの動きがカクカクしたり(1-2速を行ったり来たりすると特に)、ブレーキのタッチが過敏だと運転しづらくなったり。
なお、最近は中国等の台頭にて日本市場の重要性が下がっているため、日本市場を軽視するがために日本でのテストを行わないメーカーも多く、しかしトヨタがそれを行わないわけにはゆかない、ということが今回の路上テストに繋がっているのだと思われます。
最近試乗レポートが公開されたマツダ3(日本ではデミオ)もブレーキのタッチを日本と北米では「市場に合わせて変更している」といい、ぼくらが考える以上にその市場の好み、そして環境は異なるのかもしれません。
新型トヨタGRスープラはトヨタにとっての「予測不可能」な要素を持っている?
新型GRスープラは周知の通り「BMWとの共同開発」。
そしてプラットフォームに始まりエンジン、トランスミッション、ブレーキ、サスペンションもBMWと同一で(取り付け方法等は異なる)、つまりコンポーネントや制御系は「欧州車」。
つまりこれまでのトヨタとは根本的に異なるクルマであり、トヨタとしては「予想外のことが起こりうる」と考え、慎重にテストを行っているのかも。
新型トヨタGRスープラは地域によって仕様が異なる
そういった理由、そして市場の性格、競合や嗜好を反映し、新型トヨタGRスープラは販売地域によって仕様が異なっていますが、最大の相違は「エンジン」。
欧州と北米では「直列6気筒のみ」ですが、日本のみ6気筒に加えて「直4ターボエンジン」が導入されることとなっています。
なお、北米でのグレード展開はこんな感じ。
エンジンは上述の通り直6(340馬力)のみで、グレード間によるドライブトレーン等の差異はなく、その差は「オーディオ」や「ヘッドアップディスプレイ」という、主に内装の装備であるようですね。
トヨタGRスープラ3.0・・・49,990ドル トヨタGRスープラ3.0プレミアム・・・53,990ドル |
欧州だとこういった感じ。
北米仕様に比べると「走り」を意識しているようで、北米仕様だと上位グレードにしか装着されない「鍛造ホイール」はがエントリーグレードにも与えられているようです。
やはりエンジンは直6ターボ(340馬力)のみ、というラインアップ。
トヨタGRスープラ アクティブ トヨタGRスプラ プレミアム |
日本のみ選べる「4気筒スープラ」とは?
そして日本市場にのみに追加されるのが「4気筒ターボ(たぶんミニクーパーSに搭載されるのと同じ4気筒ターボ)」エンジン。
これはSZ-R、SZ(グレード名は80スープラと一緒)に搭載されるものですが、出力は二種類あって、SZ-Rでは258馬力、SZでは197馬力。
スープラ RZ ・エンジン:2998cc ツインスクロールターボ ・出力:340馬力 ・ボディサイズ:全長4,380ミリ/全幅1,865ミリ/全高1,295ミリ ・ホイールベース:2,470ミリ ・トレッド:F/1,594 R/1,589 ・タイヤ:F 255/35R19 R 275/35R19 ・車体重量:1,520kg ・0-100km/h加速:4.3秒 スープラ SZ-R ・エンジン:1998cc ツインスクロールターボ ・出力:258馬力 ・ボディサイズ:全長4,380ミリ/全幅1,865ミリ/全高1,290ミリ ・ホイールベース:2,470ミリ ・トレッド:F/1,594 R/1,589 ・タイヤ:F 255/40R18 R 275/40R18 ・車体重量:1,450kg ・0-100km/h加速:5.2秒 スープラ SZ ・エンジン:1998cc ツインスクロールターボ ・出力:197馬力 ・ボディサイズ:全長4,380ミリ/全幅1,865ミリ/全高1,290ミリ ・ホイールベース:2,470ミリ ・トレッド:F/1,609 R/1,616 ・タイヤ:F 255/50R17 R 255/45R17 ・車体重量:1,410kg ・0-100km/h加速:6.5秒 |
ただ、面白いのは、トヨタいわく「6気筒でも4気筒でも、エンジンとタイヤサイズ以外に差はない」ということで、つまりサスペンションやブレーキ、トランスミッションも同一。
これには「作り分けるほうがコストがかかる」という事情があったのかもしれませんが、通常は「グレードによって足回りやブレーキにも差がつけられる」というスポーツカーのセオリーからするとやや相違のあるところ。
ただ、「エントリーグレードでも上位グレードと同等の走りに関する(エンジン以外の)装備を持つ」というのは非常に嬉しいことであり、積極的にエントリーグレードを選ぶ理由にもなりそうですね(4気筒モデルは重量配分に優れる)。