| 察するに資金の問題ではなく、安全線を担保できない可能性 |
やはりレーシングカーを公道向けに転用するのはとてつもなく難しいようだ
さて、トヨタが発売を予定していた公道走行可能なハイパーカー「GRスーパースポーツ」の発売がキャンセルされるかもしれないとの報道。
これによると、今年はじめにGRスーパースポーツのプロトタイプが富士スピードウェイにてクラッシュし、炎上するなど大きな被害が出たことが原因だといいます。
この話が本当だとすると、なんらかの安全上の問題、また一般の人が運転するに際しての危険性があったのかもしれません。
なお、GRスーパースポーツは2018年に東京オートサロンにて発表され、ル・マン24時間レースの覇者であるトヨタTS050ハイブリッドを公道用へとコンバートしたもの。
実際に、トヨタは「GRスーパースポーツは、スポーツカーを強化したクルマではなく、レーシングカーを公道用にデチューンしたものであり、一般の市販車とは全く異なる」とも述べていますね。
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レーシングカーを市販することは難しい
こういった「レーシングカーを市販」した例だと、メルセデス・ベンツCLK GTRが思い浮かびますが、しかしこれはもともとの市販車をベースとしたもので、それをレーシングカーに仕立て上げ、さらにそれを公道向けに調整したクルマ。
それでも、販売は(ディーラーではなく)メルセデス・ベンツが直接行い、購入者にはレッスンを行ってから引き渡すという販売手法を採用していたようですね。
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そう考えると、「市販車ベースのレーシングカー」でも、「パワーユニットがモータースポーツ直系」でもない、「車体からエンジンから何から何まで」レーシングカーとして設計されたTS050を公道で走らせようという計画に無理があったのかもしれません。
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ただ、これはTS050が扱いにくい、欠陥があるというわけではなく、その優秀さはすでにル・マン24時間レースでも証明済み。
しかしこれを公道で走行させるとなると全く話は別で、本来の設計では想定されていない、むしろ真逆ともいえる用途に供されることになり、そこをクリアすることが難しい、そしてクリアしてもドライバーに負担をかけてしまうということなのかもしれません。
「GRスーパースポーツ開発中止」という報を聞いた時、まずは「カネの問題か・・・」と考えたものの、もろもろ考慮するに、「安全性の担保」という、トヨタらしい(トヨタは安全性と公共性を非常に重視している。)理由にて発売を中止するのかもしれませんね。
なお、かのサクサスLFAを開発する際には「ミドシップ案」もあったそうですが、挙動がピーキーになってしまう点を考慮し「滑り出しがわかりやすく、扱いやすいFRに」シフトした、とも言われます。
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参照:Autoblog, Racer