| デザイナーのミッチャ・ボルカート氏は本当にいい仕事をした |
さて、納車されたランボルギーニ・ウラカンEVO RWDのカスタムも一段落し、そして少し乗って慣れてきたということもあって、ここでレビューなどを記載してみたいと思います。
このウラカンEVO RWDはこれまで乗ってきたランボルギーニ、そのほかのクルマに比較すると「ぼくらしくない」仕様を持っていて、その最たる例はこの「ブルー」。
今までにこういった明るいブルーのボディカラーを持つクルマには乗ったことがなく、しかし一度は乗りたいと考えており、今回思い切って注文に至ったわけですね。
そういった経緯もあって、「二台めのウラカン」にもかかわらず、かなり新鮮な気持ちで乗ることができています。
ランボルギーニ・ウラカンEVOとはなんぞや
ここでちょっと解説を要するのは「ウラカン」と「ウラカンEVO」。
ランボルギーニに親しんでいる人にとってはそれぞれの位置関係がわかりやすいのですが、そうでないと「ウラカンEVOはウラカンのエボリューションモデル(フェラーリ488GTBに対する488ピスタみたいな)」と思ってしまいがち。
ただし実際には「ウラカンの(フェイスリフト/マイナーチェンジによる)後期型がウラカンEVO」であり、そのウラカンEVO(4WD)の後輪駆動バージョンがウラカンEVO RWDということになります。
ウラカンは前期と後期とでデザイナーが異なる
なお、ウラカンとウラカンEVOとはデザイナーが違う、というのは注意を要するポイント。
ウラカンのデザインを行ったのはフィリッポ・ペリーニ氏(のちにイタルデザインに異動、その後ヒュンダイへ)で、ウラカンEVOのデザインを担当したのは現ランボルギーニのチーフデザイナー、ミッチャ・ボルカート氏。
つまり、ミッチャ・ヴォルカート氏は、「他の人がデザインした」ウラカンのフェイスリフトを任されたということになりますが、フェイスリフトなので必要な部分以外は変更することができず、けっこうデザインに際しては苦労したんじゃないかと考えています。
たとえば、他の人が書いた文章を手直しする必要があった場合、「もう最初から自分で全部文章書き直したほうが早いやん・・・」というほど面倒な思いをした人も多いかと思いますが、とにかく他人が作ったものを制約のもとで変更し、「より良くする」というのは非常に困難。
そのため、フェイスリフトにて「なんとなくバランスが狂ってしまった」クルマも多く、それは「前期と後期でデザイナーが違う場合に起こりがち」だとも認識しているわけですね。
ただ、ミッチャ・ボルカート氏はそういった不利をはねのけてしまった人で、ウラカンEVO(つまり後期型)のほうがウラカン(前期型)よりも断然格好いいんじゃないかともぼくは捉えています。
ウラカンEVO RWDのデザインについて思うこととは
そしてウラカンEVO RWDのデザインを見てみようと思いますが、ミッチャ・ボルカート氏は「線を活かすのが非常に上手」ということ。
フロントだと、これまでのウラカンに存在したフロントフードから連なるラインを活かし、それを(白いラインのとおり)フロントバンパーにまで延長することで「鋭く尖った」ノーズを実現。※ウラカンのフロントバンパーにもこのラインは存在したが、ウラカンEVO RWDではさらに顕著になっている
斜め前から見ると、エアインテークの角度が白いラインのとおり「並行」となっていて、非常にシンプルな印象も受けます。
そしてエアインテーク内はウラカンに存在した「グリル」が取り払われて「グリルレス」に。
ただ、これはウラカン・ペルフォルマンテでも採用されており、ポルシェはじめフォルクスワーゲングループのクルマ全体に通じる傾向でもありますね。
そのデザインにはアグレッシブさが加わった
そして面白いのは、フロント~サイド~リアに「一段(画像だと黒い部分)」追加されていることで、これによって「エアロパーツを付与したかのような」アグレッシブな印象を受けることに。
ちなみにウラカンにはこの「段差」がなくストンとラインが落ちますが、ウラカンEVO RWDはこの段差によって複雑さが増し、より高い質感を持つに至っているようです。
参考までに、この部分はグロスブラックのほかボディ同色に変更したり、少し前に発表された「ウラカンEVO FLUOカプセル」のようにハイライトしたりという使い方ができるようになり、カスタムの幅も大きくなったと言えそう。
なお、これら下回りのデザイン的変化によって、視覚的に重心が低く見え、安定感も高くなったように感じますね(アウディR8もフェイスリフトにて、同様の変更が与えられ、末広がり的印象が強くなっている)。
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さらには後端にあるエアインテーク部分にもガイド(内外)が装着され、ここも構造やデザインが複雑化することで高級感が感じられるようになったと思います。
リア周りはいっそうエキゾチックに、そして機能的に
リアまわりだと、もっとも目を引くのは「取り付け位置が高くなったテールパイプ」。
これはウラカン・ペルフォルマンテに採用された「スーパースポーツエキゾースト」を使用しているためでもありますが、これによってパイプの長さが短くなり、パンパー下部のデザイン自由度が増すため、軽量化そして(リアディフューザー大型化による)エアロダイナミクス最適化という効果も。
そしてフロントにて説明した「線」について、リア周りだとフロント以上に有効活用されており、もともとのテールランプ端の角度を利用してリアバンパーやリアウイングを新たにデザインし、かつそれらのラインが(白い線で示したとおり)ほぼ揃っています。
加えてこのラインは真後ろから見ると「台形」を描いており、やはり安定感を演出することになりますが、見る角度によって「並行」だったり「台形」だったりという複数の印象を与えるデザインは他のクルマでは例を見ず、こういったところからも「ミッチャ・ボルカート氏の凄腕っぷり」を知ることができますね。
これはフロントも同じで、正面から見ると平行じゃないのに、横から見ると平行になっているという不思議さを持っていて、「見る角度によって違った物体のように見える、立体のだまし絵」のようだ、と思います。
ちなみにリアグリルは「平面」ではなく、微妙に膨らんだ形状を持っており、これも「ひと手間」加えた部分。
そしてリア周りだと、エアの抜け道が多く、これもやはり最近のフォルクスワーゲングループ(ポルシェ、アウディにも顕著)が好む手法ですね(タイヤが跳ね上げた石が塗装を傷つけそうで怖い・・・)。※何箇所からか、向こう側が見える
なお、リアディフューザーに「ボディカラー同色」を選択できるのもウラカンEVOとウラカンEVO RWDの特徴で、これによっていっそうエキゾチックな雰囲気が増していますね(やはり飛び石が怖いけれど)。
こういった感じで「ある部分はシンプルに、ある部分は複雑に」、そして機能的になっているのがウラカンEVO RWDのデザインですが、「ウラカンのデザインは、もともとこのウラカンEVO(RWD)のデザインありきだったんじゃないか」と思えるくらい違和感なく自然にまとまっていて、他の人の作品をこうまでも「自分のモノ」にするデザイナーも珍しいのかもしれません。
なお、ぼくは昨年のランボルギーニ・デイ開催の折にミッチャ・ボルカート氏に会ってデザイン画とサインを(日本語で!)もらい、会話した上で一緒に写真を撮ってもらいましたが、そのデザイン画は「家宝」として大事に保管してあります。
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