| 正直、ここまでの出来だとは思わなかった |
さて、待望のランドローバー・ディフェンダーに試乗。
意外かも知れませんが、ぼくはSUVやオフローダーが大好きで、これまでにもレンジローバー・イヴォーク等を所有してきたことも。
つまりはけしてスポーツカーやスーパーカーだけが好きなわけではないということで、「セダンやミニバン」といったマルチでオールマイティなクルマではなく、なんらかの目的のために何かを切り捨てるという「割り切った」クルマが好きだということになります。
ちなみにSUVの「S」はスポーツ(一部メーカーではスペース)なので、ぼくにとってはSUVも十分にスポーティーなクルマだという認識です。
ランドローバー・ディフェンダーはこんなクルマ
日本におけるディフェンダーはショートボディ(3ドア)の「90」と5ドアの「110」との2種類ですが、今回の展示車は110(ディフェンダー90は”諸般の事情”にて生産が遅れている)。
ディフェンダー90は4,990,000円〜、ディフェンダー110は5,890,000円〜という価格設定を持っており、用意されるエンジンは300馬力の2リッター直4のみ。
え?このサイズで2リッター?と思ってしまいますが、ポルシェ718ケイマンと同じ300馬力を発するハイチューンエンジンであり、十分に期待が持てるスペックです。
そのエクステリアは「まんまディフェンダー」
フロントから見ると、先代ディフェンダーの面影はほぼ感じられず、異様なまでに「ツルっと」したスタイルが特徴。
ただ、この「ツルツル」はヴェラール以降イヴォークにまで続くランドローバー/レンジローバーの特徴であり、このディフェンダーでも再現されているデザイン的特徴でもあります。
ボディサイズは全長4945ミリ、全幅1995ミリ、全高1970ミリ、そして車体重量は2360kgという大きな車で(駐車できる場所も多くはない)、にもかかわらず、すでに1年くらいの納車待ちが発生しているようですね。
そしてリアはもっと特徴的で、先代ディフェンダーよろしく、テールをスパーンと切り落としたデザイン。
テールランプのデザインも独特です。
ちなみにボンネットやルーフは実際に「人が乗って」作業することも考慮され、しっかりと補強されています。
ちなみにリアの灯火類は「コンビランプ」ではなく機能ごとに独立していますが、これは「コンビランプを採用した場合、1箇所の破損でランプ全ての機能がダメになる可能性があるから」だそうで、しかし機能別にランプを分けていれば、「破損したランプ以外は確実に生き残る」ため。
インテリアも「ヘビーデューティー」
新型ディフェンダーのインテリアについては、「何から何まで専用品」のように見え、グローブを着用しても操作できるように考えられたのか「大きな作り」を持っていて、グリップの「指の腹に当たる部分」には滑り止めラバーが貼られていたり、USBソケット等でも水が掛かりそうなところには「カバー」が装着されています。
加えて「ボルト」をあえて全面に押し出した無骨なデザインを持ち、ジャガー、そしてレンジローバーとも全く異なる雰囲気も。
反面、スピーカーグリルなどはけっこうオシャレで、「ヘビーデューティー一点張り」ではないのも新型ディフェンダーの特徴だと言えそうですね。
そのほか、初代ディフェンダーの特徴のひとつでもあった「ルーフサイドの天窓(アルパインウインドウ)」も再現され、リアのガーゴスペースだとフロア部分に「傷つきにくく、水に強い素材」を使用するなど見どころは尽きません。
新型ディフェンダーに乗ってみよう
そして早速新型ディフェンダーに試乗。
新型ディフェンダーはこれまでの「ラダーフレーム」を捨ててモノコックフレームへと移行しており、これは「モノコックでもラダーフレームと同等以上の強度を確保できたから」なのだそう。
ラダーフレームを廃止したことで批判されることも多いようですが、実際に乗った印象としては「むしろ受けた恩恵の方が大きいのでは」とも考えていて、ぼくとしては「モノコックフレーム大歓迎」です。
試乗に置いてまず感じたのは「やたら乗り心地が良い」ということ。
試乗車にはオフロードタイヤが装着されていたものの、ゴツゴツした印象やロードノイズを感じさせず、むしろレンジローバー・イヴォークよりも乗り心地が良く快適なくらい。
タイヤ直径が大きいため、段差や高架道路の継ぎ目もほとんど衝撃を感じさせず乗り越えることになり、これはオフローダーというよりは乗用車ライクな部分ですね。
なお、やはりオフローダーということを感じさせる部分もあり、それは「視界」。
周囲が見えないと悪路も走れないということなだと思われ、ダッシュボードの低さとスクエアなフロントフェンダーのおかげでフロントの見切りは良く、ボディがスクエアなので車幅感覚も非常に掴みやすいと思います。
ドアミラーは長めのステーにて外に出されていて、さらに上下左右に大きいために後方確認がかなり楽。
ただ、全幅2メートルに迫る車体サイズ、ロングホイールベースということもあって通常の乗用車とは異なる感覚を持つ部分もあり、慣れないうちは巻き込みや内輪差には要注意かもしれません。
ちなみに後方視界も悪くなく、デジタルミラーを装着すればさらに広い範囲を確認することができそうですね。
新型ディフェンダーは背の高いクルマではありますが、車線変更時の揺れが小さく、嫌やな揺り戻しも皆無。
もとの車線に戻った際にも姿勢はビシっと安定しており、ここはサルーンのような乗り心地といってもいいほど。
ちなみにランドローバーは世にも珍しい「オフローダー専業メーカー」ですが、公道で安定して走るオフローダーを作るのは意外に難しいようで、メルセデス・ベンツやBMWもこれにはかなり苦労している模様。
ベントレー、マセラティ、ロールスロイスとて例外ではなく、よってぼくは今でも「もっとも安定していて乗り心地の良いオフローダーはレンジローバー/ランドローバー」だと考えています(ここ最近、SUVを買おうといくつかのメーカーのクルマを試乗したが、やはりSUVを買うならばレンジローバーもしくはランドローバーか、と再認識させられる)
ただ、新型ディフェンダーで気になったのは「ブレーキ」。
実は「ブレーキバイワイヤ」を採用していて、ブレーキペダルは単なるスイッチであり、物理的にブレーキシステムとは繋がっていないということですね。
そのために最初はちょっと慣れず、「カックン」を連発しましたが、これもすぐに慣れるので問題はないかと考えています。
そしてランドローバーがディフェンダーに「ブレーキバイワイヤ」を採用した理由について、おそらくは「人間よりも、コンピューター任せの方が正確である」という判断に基づき、ブレーキシステムの制御を「コンピューター中心」にしたかったためなのかもしれません。
なお、オフロードを走りやすくするための運転支援として「360度カメラ」がありますが、これはなんと「3D」で、クルマの前にある停止線、後続車なども3Dで再現しており、さらにその3Dを戦後左右グリグリと動かすことができ、まるでドローンで空中から撮影しているかのように自然にモニタに映し出されます。
さらに「車両を後ろから見た図」に変更してみて、ブレーキランプを踏むとモニタ内の(3Dにて再現された)車両のブレーキランプが点灯し、ウインカーもまた同じ。
ランドローバーというと「アナログ」なイメージがあったものの、実際に最新モデルに試乗してみると「こんなところまで進んでいたのか・・・」と驚かされることに。
そして、「オフロードを楽に、安全に走れるクルマは、行動でも楽に、かつ安全に走れる」ということを認識させられることになりますが、それは「速く走れるスポーツカーは、遅い速度で走ってもやはり安全である」ということにも通じそうですね。
新型ディフェンダーについては、そのデザインについては「新と旧」「丸みとエッジ」という異なる要素をうまく組み合わせたものだと認識していますが、内装でも「ギア感と高級感」、走行性能においても「オンロードとオフロード」といった”相反する、もしくは対極にある”ものを巧みにブレンドしており、これまた凄いクルマが登場してきたな、という印象です。