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どうしてこうなった!2019年のアストンマーティンの利益が前年比「半分」に。”自動車業界最速”で成長したアストンに何が起きたのか

2020/01/10

アストンマーティン

| 2019年はちょっとした「谷」だと考えられるが、経営者としてはその「谷」を作るべきではなかった |

アストンマーティンが2019年の成績を発表し、「非常に残念な年になった」とコメント。
簡単に言うと「販売が落ち、その割に経費がかかった」ということになりますが、2019年の利益は(最終確定前で)ざっと1億3000万〜1億4000万ポンドになるとみられており、これは2018年に稼いだ2億4700万円の約半分。

アストンマーティンの販売はなぜ落ち込んだのか

その原因については「販売が7%落ち込んだこと」「マーケティングコストがかかりすぎたこと」「販売単価が落ち込んだこと」を挙げていますが、これはちょっと「よろしくない」傾向。

販売台数が落ち込んだことについては、「DB11」「DBSスーパーレッジェーラ」「ヴァンテージ」という、FRレイアウトを採用する”よく似た”スポーツカーばかりをラインアップしているために「他社のシェアを食うことができなかった」のだと思われ、マーケティングコストについては「売れなくなったので値引きをせざるを得なくなり、その原資となる多額の販売奨励金(インセンティブ)をディーラーに出したこと、そして「単価の落ち込み」についてはヴァルカンやヴァンキッシュ・ザガートのような高額な限定モデルの販売が(2019年は)少なかったこと、そしてヴァンテージがDB11の販売を侵食してしまったことが考えられます。

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ただ、アストンマーティンと同じく「似たような」クルマばかりを揃えるマクラーレンは好調に販売と利益を伸ばしており、こちらは「高額限定モデル」や「MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)」による「販売単価向上」、パフォーマンスに特化したプロモーションが奏功したのかもしれません。

なお、アストンマーティンは自動車メーカー、とくにスポーツカーメーカーではあるものの、4ドアサルーンの「ラピード」「ラゴンダ」を販売したり、富裕層向けビジネスの一環として高額タワーマンション、個人用潜水艇、ヘリコプター等も手がけていますが、そういった「幅広い嗜好を拾う」「他業態への展開」が逆にアストンマーティンのブランドイメージを希薄にしてしまったのかもしれません。

アストンマーティンはもう「終わり」なのか?

ただ、2019年の数字をもってアストンマーティンはもうダメだと判断するのは早計で、というのも「2018年が特殊であったから」。
下は各スポーツカーメーカーの2018年の販売台数ですが、アストンマーティンのみが「異常に」伸びていることがわかります。
2019年はランボルギーニが大きく伸ばしてくることになりそうで、しかしこれは「ウルス」が計上されるため。
ですが2018年のアストンマーティンにはDBXも算入されておらず、主にはDB11とヴァンテージによって販売が構築されています(つまりはDB11とヴァンテージが売れ過ぎた)。

フェラーリ 8,398台(+4.8%)
マクラーレン 3,340台(+10%)
ランボルギーニ 3,815台(+10%)
アストンマーティン 5,117台(+58%)

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よって、DBSスーパーレッジェーラしかニューモデルが登場しなかった2019年にその「反動」がくるのはやむを得ず、しかもDBXやラピードE生産のための新工場を建設した費用が経費として計上されたことを考えると、2019年は「小休止」と考えるのが妥当。

2020年においてはDBXの納車が販売台数を押し上げると思われ、2021年にはヴァルキリーのような超高額モデルの販売、そしてその後はヴァルハラや新型ヴァンキッシュによる新車攻勢がかけられることになり、2〜3年というタームで見るとアストンマーティンは再度成長に転じるであろう、とも考えられます(ただしDBXが失敗すれば計画に綻びが生じる)。

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できれば、2019年のような「谷」ができないよう、2019年にDBXの納車を開始し、ヴァルキリーも発売したかったのだと推測していますが、ニューモデルの開発が思うように進まず、「やんどころなき事情にて」今回のような窮状に陥ったのかもしれません。

そう考えると、会社経営においては中長期的な展望と計画、そして計画を「計画通りに進める」実行力が重要となるのでしょうね。

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