
| 新生アルピナの立ち位置はまだ明確ではない |
この記事のハイライト
- 謎の商標「XB8」が出現: BMWが子会社となったアルピナ(Alpina)ブランドの商標を整備する中で、既存モデルには存在しない「XB8」という新しい名称を出願
- X8の可能性再燃: アルピナの命名規則(X+数字+B/D)から、「XB8」はガソリンエンジン搭載の「BMW X8」のアルピナ版を意味する可能性が大。数年来噂されながらもXMの登場で立ち消えになっていた「X8」の計画が再浮上した可能性も
- 不振のXMの代替となるか: 過去数年にわたり販売が低迷し、評価も芳しくないBMW XMの後継として、よりラグジュアリーで乗り心地を重視したXB8(X8)が登場し、ベントレーなどの超高級SUV市場に切り込む可能性が指摘されている
BMWがアルピナの商標を整備:見慣れぬ名称「XB8」は何を意味するのか?
BMWが2022年にパフォーマンスチューニング会社アルピナ(Alpina)を買収して以来、両ブランドの統合に向けた動きが進んでいます。
その一環として、BMWは「B5」「B7」といったお馴染みのアルピナの商標と共に、これまで存在しなかった「XB8」という名称の商標出願を行ったことが明らかに。
この新しい商標は、BMWの将来のラインアップ、特に旗艦SUVセグメントについて非常に大きな憶測を呼んでいます。
-
-
BMW M専売モデル「第二弾」、XMは正直言って期待外れ?すべての意味においてBMWの思惑とは異なる方向へとものごとが動いてしまい、悪夢のような結果を招くことに
| Z4にも販売台数で抜かれたところを見ると”やはりBMWはSUVではなくスポーツカーを作るべき”であったのかも | 一方のZ4は逆の意味での「想定外」である さて、BMWはM専売モデル「第二弾」とし ...
続きを見る
アルピナの命名規則をおさらい
アルピナのモデル名は、一貫してシンプルです。
- B(Benzin:ガソリン)または D(Diesel:ディーゼル)
- 数字(対応するBMWのシリーズ)
例:
- アルピナ B7 → BMW 7シリーズ(ガソリン)のアルピナ版
- アルピナ XB7 → BMW X7(ガソリン)のアルピナ版
この規則に従えば、新商標の「XB8」は、ガソリンエンジンを搭載した「BMW X8」のアルピナ版を意味することになります。
-
-
BMWが自ら「モデルネームの数字や英文字はこう読み解く」と解説。かつてはルールがなく個別に命名されており、現在の命名法則ができあがったのは1972年
| おそらくはBMW自身、ここまでラインアップが拡大するとは考えてもみなかったのだろう | いくつかの例外はあるものの、おおよそわかりやすい命名になっていると思う さて、様々な自動車メーカーが様々な命 ...
続きを見る
立ち消えになったはずの「BMW X8」の計画
BMWは1998年に「X8」の商標を初めて取得して以来、このモデルの噂は断続的に浮上してきたという背景も。
X8は、X7のより流麗なクーペスタイルの派生モデル(X5に対するX6、X3に対するX4の関係と同様)として計画されており、3列目シートを廃止してアウディ Q8のような方向性を目指すと見られていたわけですね。
しかし2022年にBMW M専用モデルとして「XM」が登場したことにより、X8の計画は「事実上、XMに置き換わった」とされてきたのが今までの経緯です。
XMとX8の間に存在する埋めがたいギャップ
BMWは「XMは純粋なMモデルであり、X7のクーペ版ではない」と明確にしていますが、、その市場評価と販売実績はBMWの期待を裏切るものとなっています。
- XMの問題点: XMは、高性能プラグインハイブリッドシステム(PHEV)による重い車重と、それを抑え込むための硬すぎるサスペンションにより、「高級SUVに求められる快適性」と「Mモデルに期待されるスポーティさ」のどちらも中途半端であると指摘される
- 販売不振: XMの販売台数(特に米国市場)は、ライバルのランボルギーニ ウルスやベントレー ベンテイガに大きく水をあけられており、旗艦モデルとしての存在感を示せていない
-
-
さよならBMW XM。M部門専売モデルとして鳴り物入りでデビューするも2028年に販売終了とのウワサ。デザイン、価格、プロモーションなどボクはその敗因をこう分析する
| ちなみにボクはXMを「近代BMWの傑作」として高く評価している | 中古相場が落ち着き、価格が下がってきた頃に手を出したいとも考えているが さて、BMWが「M部門専売モデル」として大々的に売り出し ...
続きを見る
XB8は「XMの失敗」を修正する救世主となるか?
ここで「XB8」の商標が意味を持つ可能性が出てくるのですが、業界アナリストや専門家の間では、「XMが予想ほどの成功を収めていないため、BMWが超高級SUV市場でのポジションを再度見直す可能性がある」と指摘されており、BMWは超高級SUV市場を諦めず、しかしそのアプローチ手法を変えるのでは、と見られています。
-
-
BMWはなぜ記念すべきM部門50周年記念として、スーパーカーではなくSUVを発表したのか?M部門CEOが多くの人が感じているであろう疑問に答える
| その答えはあまりにシンプル、そして理解ができるものであったが、一方でこの回答を聞きたくなかったような気もする | BMW Mはそこまで日和るべきではなかったのかも さて、BMWは「M社」の50周年 ...
続きを見る
「アルピナ」のDNAこそが解決策
(これまでの)アルピナは、BMW Mのようなトラック走行を重視した硬派なチューニングとは異なり、高速巡航(グランドツーリング)における快適性とラグジュアリーを最優先するブランドです。
-
-
【ついに完全内製化へ】BMWが新しいアルピナロゴを商標登録、2026年からアルピナをBMW本体で生産開始か?
Image:ALPINA | BMW、アルピナの完全取り込みを進行中。新ロゴ登録から見える今後の「高級パフォーマンス戦略」とは | アルピナ、2026年からBMW本体で製造へ? 3年前、BMWはアルピ ...
続きを見る
XMが抱える「硬すぎる乗り心地」という最大の欠点を、アルピナの XB7(X7ベース)で見られるような、洗練されたソフトな乗り味、上質な内装、独自のスタイリングへと置き換えることでベントレーなどの競合車をターゲットにした真のフラッグシップSUVを再構築できる可能性があり、つまり、「X8」という車体は、XMのアーキテクチャを引き継ぎながら、Mではなくアルピナのブランドとフィロソフィーを注入することで、BMWの最高級ラグジュアリーSUVとして生まれ変わる可能性が考えられているわけですね。
なお、新しいアルピナがどのようなポジションになるのか明確には示されていませんが、これまでにも「ミニの高級バージョン」「(BMWが生産から手を引くこととなった)M1の継続生産」を実際に検討したことが報じられており、つまるところアルピナは「BMWだと採算に乗らないような小規模、しかし少なからずチャンスがあるビジネスを担当する」という、BMWのとの対立ではなくBMWを補完する存在でもあり、そしてこの立ち位置は今後も継続されるものと思われます(ただし上級移行を果たすものと考えられる)。
-
-
BMWがデザイン業務を細分化しデザイナーをシャッフル。「BMW、ロールス・ロイス、アルピナ、ミニ」でデザイナーが一斉に異動、今後の変化には期待
| さらにBMWでは「ミドルクラスまでとM」「アッパークラス」とでデザイナーが分けられる | 新生アルピナは2026年より始動、おそらくはそれまでに「完全なる準備」が行われそう さて、現在のメジャーメ ...
続きを見る
結論:XB8はブランド戦略の「奥の手」
ただ、「XB8」という商標出願は現時点でBMW X8の具体的な生産計画を保証するものではありません。
実際に自動車メーカーが将来の競合他社の出現を防ぐために、使用しない名称の商標を維持することはよくあることです。
-
-
BMWがアルピナの新ロゴを商標出願。買収完了後に「BMW ALPINA」へと表記を変更し、シンプルなロゴを採用することになりそうだ
| アルピナの買収完了後、BMWはアルピナの再ブランディングを行うことになるものと思われる | おそらくはニッチな市場を対象に少量生産モデルを供給し、利益率を重視したブランドになりそうだ さて、BMW ...
続きを見る
しかし、2026年以降にアルピナのブランド権を完全に取得し、超高級SUV市場での再挑戦が不可避である状況を鑑みると(BMWはこのセグメントに強い興味を持っており、かつXM開発費用のモトを取らねばならない)、「XM」の不振を修復する「奥の手」として、「X8」という車体に「XB8」というアルピナの看板を掲げ、ブランドの頂点を再定義する戦略は非常に理にかなっています。
XMの後継モデルが”より快適で豪華なXB8として登場”するのか、今後のBMWとアルピナの動向から目が離せないといったところでもありますね。
あわせて読みたい、アルピナ関連投稿
-
-
アルピナ創業者、ブルカルド・ボヴェンシーペンが87歳で亡くなる。プライベートによる改造がBMWに認められ公認チューナーに、そして後には自動車メーカーに
| アルピナは自動車業界における数少ない「伝説」のひとつでもある | 今後はBMW傘下となりその輝きをいっそう増すことになるだろう さて、アルピナ創業者、ブルカルド・ボヴェンシーペン氏が87歳で亡くな ...
続きを見る
-
-
もしもアルピナがメルセデス・ベンツをベースにしたチューンドカーを製作したら?奇想天外なCGが公開されるもボクが「ないとはいえなかった」と思うワケ
| アルピナは様々なビジネスチャンスを狙っており、機会さえあればメルセデス・ベンツにも手を出していただろう | それにしても、こういった「もしも」は考えるだけでも面白い さて、いつも「ありそうだが、実 ...
続きを見る
-
-
BMWがアルピナを買収!今後「M」ブランドとの棲み分けを明確にし、高級パーソナリゼーションブランドに進化すると予測
| まさかBMWがアルピナに価値を見出すとは思わなかったが | 2020年に開始した提携が「有益」だったのだと思われる さて、BMWがアルピナを買収したとの電撃報道。アルピナはBMWのチューニングパー ...
続きを見る
-
-
この発想はなかったな!GRスープラをアルピナ仕様へと変更したレンダリング「アルピナ クーペS」登場。M仕様よりもこっちのほうを期待したい
| アルピナとGRスープラとの性格はマッチしないかもしれないが、このエレガントさは捨てがたい | GRスープラには「Mスペック」を持つハードコアモデル追加のウワサがあるが さて、いつも「いかにもありそ ...
続きを見る
参照:CARBUZZ


















