
| フェラーリの「揺るぎない実行力」が示す絶好調の業績 |
「1台あたり」の利益が大きく向上、収益性に貢献
フェラーリが2025年第3四半期(Q3 2025)の決算を発表し、非常に力強い業績を達成したことが明らかに。
これは単なる数字の成功ではなく、同社が推進するブランドの独占性を維持しつつ、未来に向けた電動化への転換を確実なものとしている証拠だと捉えられ、実際に株価が上昇するなど市場も今回の内容を好意的に捉えています。
この発表に際し、フェラーリCEO、ベネデット・ヴィーニャ氏は「我々は、ブランドの長期的利益のために2030年に向けた持続可能な成長の道筋を明確に定義し、確信をもって開発を進めている」コメント。
特に、電動技術の解釈が「フェラーリ エレットリカ」として具体化し、再びイノベーションを推進すると強調されています。
揺るぎない成長:2025年第3四半期の主要財務ハイライト
フェラーリのQ3 2025の業績は、前年同期と比較して大幅に改善し、注目すべきは「出荷台数をほぼ横ばいに抑えつつ(3,401台)収益が7.4%も増加している点」。※フェラーリの株主は販売台数を増加させることが希少性の低下につながると捉えているため、販売台数を増加させずに利益を増やさねばならない
これは同社が「ブランドの独占性・希少性を維持するための割り当て戦略」を徹底していることの表れだと説明されています。
| 主要指標 | Q3 2025の実績 | 前年比増加率 |
| 純収益 (Net revenues) | 17億6,600万ユーロ | 7.4%増 |
| EBITDA | 6億7,000万ユーロ | 5.0%増 |
| 営業利益 (EBIT) | 5億300万ユーロ | 7.6%増 |
| 純利益 (Net profit) | 3億8,200万ユーロ | 1.8%増 |
| 出荷台数 (Shipments) | 3,401台 | 1%増 (ほぼ横ばい) |
収益増の鍵は「豊かな製品ミックス」と「パーソナライゼーション」
収益増を牽引したのは主に「自動車およびスペアパーツ」部門で、売上は14億7,900万ユーロ、5.6%の増加となっており、この成長は以下の要因が複合的に作用した結果です。
1. 製品ミックスの富化 (Richer product mix): Q3では、296 GTS、Purosangue(プロサングエ)、12Cilindriファミリー(生産立ち上げ段階)、およびRoma Spider(ローマ・スパイダー)が納車を牽引。特にSF90 XXファミリーの貢献が増加し、製品ミックスの質を高める
2. パーソナライゼーションの増加: 顧客ごとの特別仕様(パーソナライゼーション)の増加が、収益を押し上げる
3. レーシング・ブランド活動の貢献: 「スポンサーシップ、商業、ブランド」収益も21.0%増の2億1,100万ユーロに達する。これはスポンサーシップやライフスタイル活動、前年のF1ランキング向上に関連する商業収益増加が主要因だとされる
地理的出荷の傾向:独占性を守る戦略
地域別の出荷台数はブランドの独占性を維持するための割り当て戦略を反映しており、特に中華圏(中国本土、香港、台湾)で出荷が大きく減少(12%減)していますが、全体出荷としては「微増」。
これは、需要に応じてただ台数を増やすのではなく、ブランド価値を最優先するフェラーリの強固な姿勢を示していて、つまり意図的に中華圏への販売を”抑制”し、よりフェラーリを愛する人々が多い地域への割当を”増加させた”ことを意味します。
| 地域 | Q3 2025台数 | 前年比増減 |
| EMEA (欧州、中東、アフリカ) | 1,449台 | 2%増 (23台増) |
| 米州 (Americas) | 1,045台 | 2%減 (25台減) |
| 中華圏 | 248台 | 12%減 (33台減) |
| その他APAC | 659台 | 9%増 (53台増) |
未来を加速させる製品戦略と電動化への決意
フェラーリは2030年に向けた長期戦略を投資家家向けの説明イベント、キャピタル・マーケット・デイ(Capital Markets Day)にて定義しており、その内容は以下の通り。
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1. 新型プラグインハイブリッド「849 Testarossa」の登場
2025年9月9日、フェラーリは最新のスポーツカーとして849 Testarossaおよび849 Testarossa Spiderを発表済み。これらのモデルは、SF90 StradaleとSF90 Spiderの後継となるプラグインハイブリッドのスーパー・スポーツ・ベルリネッタです。
• 性能: ミッドリアのツインターボV8エンジンと3つの電気モーターを組み合わせて合計1050 cv(馬力)を発揮。これは、先代モデルよりも50 cv増加しており、フェラーリがハイブリッド化を進めながらも性能を妥協しない姿勢を明確にしています。
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2. 完全電動化モデル(Elettrica)への確実な一歩
フェラーリは内燃機関(ICE)、HEV、PHEVに加え、完全電動駆動(EV)を含む「技術的中立性戦略」を推進中。
2025年10月9日に開催されたキャピタル・マーケット・デイでは、跳ね馬の歴史上初となる完全電動モデルの「生産準備が整ったシャシーとコンポーネント」が公開され、ベネデット・ビーニャCEOはこの「フェラーリ・エレットリカ」がイノベーションを推進すると断言しており、電動スーパーカーの未来を牽引するリーダーとしての責任を担っています。
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さらなる高みへ:上方修正された2025年通期業績見通し
第3四半期の好調な結果と開発パスへの確信に基づき、フェラーリは2通期の業績見通しを上方修正済み。
これは多くの自動車メーカーが「業績見通しを引き下げる」中、極めて異例であるとも考えられますが、この修正は、製品ミックスとパーソナライゼーションのさらなる強化、そして収益性の向上と前受金のより強力な回収による産業フリーキャッシュフローの増加に牽引されています。
| 指標 | 2025年 以前の見通し | 2025年 上方修正後の見通し |
| 純収益 (NET REVENUES) | 70億ユーロ以上 | 71億ユーロ以上 (≥7.1B) |
| 調整後EBITDA | 26億8000万ユーロ以上 | 27億2000万ユーロ以上 (≥2.72B) |
| 調整後希薄化EPS (Diluted EPS) | 8.60ユーロ以上 | 8.80ユーロ以上 (≥8.80) |
フェラーリの成長を支える背景
今回の決算発表の核心である「財務と新型車」に加え、フェラーリが持つ「強さの秘密」となる最新のインフラと戦略的パートナーシップについては以下の通り。
1. イノベーションの加速を支える新テストサーキット「e-Vortex」
2025年10月6日、フェラーリはフィオラノ・サーキットに隣接する新しいテストコース「e-Vortex」の完成を発表。
約2キロメートル、37,000平方メートルの面積を持つこの新しいインフラは、生産ラインから出たばかりのスポーツカーの機能テストを向上させるための基本的なステップとなり、電動化や新しいハイブリッド技術を迅速かつ厳密にテストする上で、この最新設備は極めて重要な役割を果たすことに。
Image:Ferrari
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2. 強固なサプライチェーンとブランド展開
Q3 2025では、SG&A(販売費および一般管理費)が2300万ユーロ増加しましたが、これは主にレーシング費用とブランド投資の拡大を反映したもの。
また、フェラーリはロジスティクスを担うCEVA Logisticsとの複数年パートナーシップを更新し、レーシング活動や物流活動のサポートを継続すると発表。
さらに2026年1月1日からは大手暗号通貨取引所およびWeb3企業であるBingXとの複数年パートナーシップを開始し、BingXがScuderia Ferrari HPのチームパートナーとなることが発表されています。
これらの投資と戦略的な提携は、高級ブランドとしての地位をさらに高め、将来の収益源(スポンサーシップ、ライフスタイル)を強化するための盤石な基盤となることが想定されています。
高性能と独占性の完璧なバランス
今回のフェラーリの決算は、ハイエンドなビジネス戦略の成功例を示すものにほかならず、出荷台数を意図的に抑制することでブランドの稀少性を守りつつ、パーソナライゼーションや製品ミックスの富化によって利益率を極限まで高めるという「まるで精密にチューニングされたレーシングエンジンのような、完璧なバランス戦略」。
新型ハイブリッド「849 Testarossa」の圧倒的なスペック と完全EVへの明確な移行計画が示すように、フェラーリは伝統と未来を両立させながら、ラグジュアリー市場の頂点に立ち続けていることがよくわかる内容だと思います。
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参照:Ferrari




















