| マツダは電気自動車の夢を見ない |
マツダはロサンゼルス・モーターショーにて新型Mazda3(アクセラ)を発表していますが、その会期中に、マツダのデザインを管理する前田育男常務執行役員がAutocarに対して語ったところだと、「マツダ初のEVは2020年に登場予定で、既存モデルをベースとしない、独立したモデルになるだろう」とのこと。
加えて「あまりに”デジタル”な外観にはしたくない」とも語っており、「独立したデザインを持つものの、行き過ぎない」という微妙なモデルになりそうです。
マツダ・ヨーロッパのデザイン部門のボスは新任
なお、マツダ・ヨーロッパのデザイン部門を管理するのはJo Stenuit氏で、10月28日に着任したばかり。
同氏はマツダ・ヨーロッパで20年間デザイナーを努めてきたという叩き上げで、これまでにもHakaze(2007)、Kiyora(2008)、先代アクセラ、最近だとCX-7の内装デザインを率いた人物。
マツダ・ヨーロッパのデザイン部門を統括していたケビン・ライス氏は8月末にマツダを去って(中国の奇端汽車へと引き抜かれて)いますが、その後任が、このJo Stenuit氏というわけですね。
そのJo Stenuit氏がさらにマツダのEVデザインについて触れ、「どこぞの自動車メーカーみたいに冷蔵庫みたいな外観にはしたくない」とも語っており、これはフォルクスワーゲンの「I.D.」や、ホンダ「アーバンEV」を指しているのかもしれません。
ただ、マツダの新型EVについて現時点では具体的な話は見えてこず、しかしトヨタとの提携を通じて「トヨタの技術を利用した」EVとなるのは間違いなさそうです(ただしマツダはトヨタとの提携前から自社単独で新型EVの開発を行っており、新型EVは完全にトヨタの技術によるものではないと主張)。
一方でマツダはCarAdviceのインタビューに対して「ガソリン、ディーゼル、ロータリーに引き続きフォーカスする」とも語っており、マツダ本体では内燃機関の追求を、トヨタ(とデンソー)とのベンチャーについてはエレクトリック技術を追求してゆくということになりそうですが、マツダはロータリエンジンやガソリンエンジンに関する特許を多数取得しており、ガソリンエンジンにもまだまだ未来はあり、ハイブリッドよりもクリーンなクルマを作れる、としています。
ただ、マツダのパワートレイン担当、廣瀬一郎常務執行役員は「たしかにエレクトリック化の波は避けられない。ただ、エレクトリック化が重視されるのは一部の国であり、ほかの国々では内燃機関のほうがアドバンテージを持つ」とのこと。
さらには現行のエンジンよりも30%は効率的な内燃機関を作れると述べており、まだまだガソリンエンジンを「諦めない」ようですね。
ちなみに一時、自動車業界では「アルミフレーム」が大流行し、多くのメーカーがアルミフレームの採用に移行。
アウディはその最たる例で、しかしそんな流行の中でもポルシェが「まだまだスチールに可能性がある」と主張し安易にアルミフレームへと移行しない方針を示しましたが、実際のところ現在はスチールフレームのほうが軽くて頑丈な場合があり、そのアウディもスチールフレームへと回帰している状態。
アウディは1994年、オールアルミフレーム「ASF(アウディ・スペース・フレーム)」をA8に採用していて、このときのASFの定義は「オールアルミ」。
しかし時は流れて新型A8ではスチール他の複合素材も使用しており、「ASF」は今では「複合素材による軽量フレーム構造」へとその定義を変えています。※アウディ自身、現代において、ASFとは必ずしもアルミフレームを意味しないというステートメントを発表。
こういった事実を見るに、もしかすると一斉に今は「エレクトリック」を向いている自動車業界にも「ガソリンエンジン回帰」のトレンドが訪れる可能性があるのかもしれません。
なお、「スチール回帰」となったのはスチール加工技術の向上など技術的な進歩があったからですが、同じようにガソリンエンジンについても技術的ブレイクスルーがあれば、「ガソリンエンジンのほうがいい」となるのかもしれない、と思います。
とくにマツダが得意とするコンパクトカー市場では、ハイブリッドは高価になりすぎるということもあり、「より安価なガソリン(ディーゼル)エンジン車が好まれる」のも確か。
そこで、「ハイブリッドよりもクリーンで燃費がいい」内燃機関車を発売すれば、当然ながら「競争に勝つことができる」というのがマツダの目指すところなのでしょうね。
そして、マツダが「EVは既存モデルをベースとしない」と語るのは、もし「EVがコケたとき」にベースモデルのイメージまで損なうことを嫌ったからなのかもしれません。