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マツダのロータリースポーツ復活計画「アイコニックSP」に暗雲?CTOが資金難を認め、ということは「トヨタとの共同開発」は”ナシ”か

マツダCEO自らが「ツインロータリーエンジンを開発中」と宣言。どうやらアメリカ市場の「パワーへの渇望」に対応すべく、発電容量を増やしアイコニックSPをパワフルにする計画か

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| あれから2年、マツダ「アイコニックSP」の未来は依然として不確実 |

マツダはSUVの販売にてその基盤を固めつつあるはずではあるが

マツダが東京モビリティショー2023にて「アイコニックSP」コンセプトを発表してから早くも2年。

ロータリーエンジン復活を象徴する存在として世界中のファンを沸かせたものの、その市販化の道が依然として険しいことが明らかになっています。

実際のところ、マツダはこれまでにも「夢を見せては実現に至らなかった例」があり、たとえば2015年の「RX-Vision」。

あの美しいFRロータリークーペは結局市販されず、多くのファンが落胆したことも記憶に刻まれていますが、そして今、その“精神的後継車”と目されるアイコニックSPも、同じ運命をたどる可能性が浮上しているわけですね。

【ついに市販化へ】マツダ「アイコニックSP」はRX-7後継となる「ロードスターとは別の」高級ロータリースポーツ。365馬力、価格は750~900万円とのウワサ
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CTOが語る「唯一の問題は資金面」

英Autocarのインタビューで、マツダの最高技術責任者(CTO)・梅下隆一氏は、アイコニックSPについて次のようにズバリとコメント。

「唯一未解決の問題は、資金面です。」

つまり、開発の技術的課題ではなく、予算の確保こそが最大の障害となっているという現実が明らかになり、マツダとしても「市販化を完全に諦めたわけではないが、実現には依然として“越えるべき壁”が多い」ということに。

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マツダのデザイン本部長、執行役員がアイコニックSPにつき「実際に生産モデルとして展開する意図を持って設計されています」と語り、生産に移される可能性が高そうだ
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「夢のクルマ」を現実に——しかし道のりは長い

梅下氏は「アイコニックSPは自分の夢のクルマ。いつか実現させたい」とコメントし、ただし、仮に承認が下りたとしても、完全新設計の専用プラットフォームを必要とするため、
生産化まではかなりの時間を要する見込みだとも推測されます。

トヨタGR GT3コンセプトとマツダRX ヴィジョンGT3コンセプトが激似?もしかすると両社が共同にてスーパースポーツを開発するのではというウワサ
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なお、アイコニックSPは、マツダの人気ロードスター「MX-5(ND)」とはまったく異なる車台を採用し、“RX-7の正統な後継車”として位置づけられる予定であったため、そしてそのポジションを明確にするためにも「独自プラットフォーム」を必要としますが、現在のマツダにとって「ロードスター用」「アイコニックSP用」という2つのスポーツカー向けプラットフォームを用意することは非常に困難(非現実的)だと思われ、これは誰もが容易に想像ができるところ。

マツダのチーフデザイナーがRX-7の復活について語る。「次のプロジェクトにはアイコニックSPの市販化を選びたい。あのクルマはRX-7が最大のインスピレーション源です」
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そこで登場するのが「救世主」トヨタとなるのですが、一連のコメントを見る限り、アイコニックSPをトヨタと共同開発するというプランは最初から「無い」ようで、トヨタの助太刀を期待することも難しそう。

トヨタの関与が期待できるとすれば、それは新型(NE)ロードスターの開発過程においてであり、一部でウワサが出ているように、トヨタとマツダが「次期ロードスター」を開発するのであれば、マツダはそこでセーブできた資金をアイコニックSPの開発へと回せる可能性も出てきます。

Toyota
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しかしアイコニックSPを市販できたとしても「非常に高価格なクルマ」となることは間違いなく、となると「誰が買うのか」という問題も立ち上がり、これはホンダが「S2000の復活にて直面するのと同じ課題でもありますね。

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ロータリー復活への布石はすでに動いている

ただしアイコニックSPの発売に関しては希望がまったくないわけではなく、2023年のジャパンモビリティショーでの発表後、マツダはロータリー専任エンジニアチームを再編成し、そこからの研究開発を通じ、今年の「Vision X-Coupe(クロスクーペ)」にてその成果を披露しています。

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同車は2ローター・プラグインハイブリッド(PHEV)を採用し、システム合計出力は500馬力超を発揮するというスペックを持ちますが、これをアイコニックSPへと転用することも十二分に考えられ、もともとアイコニックSPに搭載されるロータリーエンジンはバッテリー充電専用の発電ユニットとして設計されているものの、梅下氏は「内燃機関が直接駆動する可能性も排除していない」としており、“ロータリーエンジンで後輪を駆動するクルマ”復活の可能性も残されているというわけですね。※アイコニックSP発表から今までの2年で何らかの方針転換や進歩があり、よってこの2年は無駄ではなかった

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マツダの現実:小規模メーカーゆえの制約

マツダはトヨタのような巨大企業ではなく、よって量販モデルの開発とニッチなスポーツカーの両立は容易ではない状況。

そのため、経営判断としても「夢のRX」よりも実用的なEVやSUVの開発が優先されているのが現状で、こればかりはファンとしても「なんともしがたい」ということに理解が必要なのかもしれません。

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マツダが新型コンセプト「アイコニックSP」発表。ロータリエンジンで発電して走るEV、リトラクタブルヘッドライト風のヘッドライトなど過去の車へのオマージュも
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EV・ハイブリッド戦略の見直しが進行中

参考までに、マツダは2025年初頭に発表された「Lean Asset Strategy(リーンアセット戦略)」によって、EV投資のコスト削減と集中化を進めている状況。

  • 2027年:専用EVプラットフォーム初披露
  • 2027年末:新世代「CX-5」に独自ハイブリッドシステム導入
  • 次期スカイアクティブZエンジンの開発も進行中

これらを見る限り、マツダはまず量産ラインの強化を優先しており、ロータリースポーツ復活はその「次の段階」に置かれていると考えられます。

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「あきらめてはいない」——CTOの希望

ただし明るい話題としては、梅下氏が最後にこう述べていること。

「私たちは決して諦めたわけではありません。」

この発言が示すのは、マツダ社内でロータリースポーツへの情熱が消えていないということで、その一方で、現実的な優先順位の中で「夢のRX」が後回しになっているのもまた事実。

ファンとしては、次期「ロードスター(ND後継)」の登場を待ちつつ、いつか再び“ロータリーの咆哮”を聞ける日を願うしかない、というのが実情かと思われます。

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参照:Autocar

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