トヨタC-HRの減速はおそらくトヨタとしても「織り込み済み」だ
ミニバンやコンパクトカーは飽和状態だが、SUVはまだ飽和していない
東洋経済にて”「C-HR」が苦戦?人気SUVが飽きられ始めた理由”という記事が掲載。
これはまず、トヨタC-HRが2017年度においては乗用車販売ランキング4位に入ったものの、2018年は35%販売が減って14位に下がったということについて考察を行っています。
加えて、これまで継続して売れてきたトヨタ・ハリアーや日産エクストレイル、スズキ・クロスビーもそれぞれ約15%、30%、13~20%減少したことにも言及。
SUVは趣味性の高い乗り物だ
記事において、この現象は「SUVが飽きられた」という結論となっており、そもそもSUVが売れた理由としては「実用性とカッコよさとを両立したため」だとしており、これはまさにそのとおりかもしれません。
実用性で言うとミニバン、経済性だとコンパクトカーやハイブリッドカーという選択になりますが、SUVは実用性も高く(ミニバンほどではないですが)、かつ最近だと燃費に優れる車種も多数あり、そして何より「妥協して乗ってる」感が少ないのがいい、と考えています。
ちなみにぼくは結果的に「スポーツカーとSUVしか乗らない」といったクルマ遍歴をたどっていますが、スポーツカーもSUVも「趣味性が強い」ことがその理由。
趣味性が高い車はどこかしら独特の雰囲気を持っていて、「日和ってない」ところがイイ、と思うのですね。
そこで今回の記事では、「SUVは趣味性が高いので、クルマ好きが購入する比率が高いが、「それらが購入してしまうと需要が一巡してしまい」ブームが長続きせず、しかし日産ノートやトヨタ・アクア、プリウスは「実需で」伸び続けている、とも。
この状況を打開するには「安価なSUVを投入」して一般性を持たせたり、実需を換気するしか無いとしていて、これもたしかに「そのとおり」でもありますね。
つまり、SUVはイノベーター理論でいうところの、アーリーアダプターもしくはアーリーマジョリティのみで終わってしまう製品なのかもしれません。
メーカー側からの視点からSUVを見てみると
そこで視点を変えて「メーカー立場」ですが、SUVは「非常に儲かる」商材だとも言われます。
プラットフォームはコンパクトカーと同様のものを使用したとしても(フィットとヴェゼルのように)、高い車高やワイルドな風貌によって「高い値付が可能となり」、現時点では「出せば売れる」。
たとえばマツダやスバルはミニバンから撤退してSUVに集中していますが、これはSUVの台数が出るからというよりも、SUVは「発売しても外すことが少なく、既存車種のプラットフォームを活用でき、なにより利益率が高い」。
逆にコンパクトカー市場は「フィットやヴィッツ、ノートなど競合がおり、販売店網の数などから太刀打ちできない」、さらには「軽自動車も競合の対象に入りうる」。
つまりそんな状況の中でコンパクトカーを作ったとしても(ミニバンも状況としてはよく似ている)既存人気車種に勝つことは難しく、そして価格も抑える必要があり(利益が薄い)、しかしもともと趣味性の高いSUVであれば、それなりの「特徴」さえ押し出しさえすれば、とりあえずは売れる可能性が高いわけですね。
たしかに「一般的に」よく売れるのは実用性や汎用性を持つ(没個性な)クルマではありますが、しかしそこでマツダやスバルが戦うのは非常に難しく、そういった「順大手メーカーが」戦える市場がSUVなのだろう、と思います。
よって、SUVが飽きられ、多少販売が落ちようとも「ミニバンやコンパクトカー市場で体力をすり減らすよりはマシ」だとも考えられ、そういった事情もあってまだまだ各自動車メーカーはSUVに力を入れ続けるだろう、と考えています。
トヨタやホンダにとってもこれは同じような状況で、トヨタやホンダがこれ以上ミニバンやコンパクトカーを発売しても自社の市場を侵食するだけですが、毛色の違うSUVを発売してゆけば、他社のシェアを獲得できる可能性が大きく、よっていずれのメーカーにとっても「SUVはまだまだ魅力的な市場」だと言えそう。
なお、ぼくは”製品”について、「消極的選択肢」によって選ばれるものと「積極的選択」にて選ばれるものがあると考えていて、前者は「買う気はないが、必要性に迫られて購入するもの、もしくは本当に欲しいものは他にあるが、様々な理由でそれを買うしかないもの」。
後者は「必要はないが、欲しくて買うものや、必要がある場合であっても、他製品よりもこっちのほうが欲しいから、価格や実用性などを多少ガマンしてでも買う」というパターン。
コンパクトカーやミニバンは前者で、スポーツカーやSUVは後者になるということですが、後者のほうが「お金を払ってもらいやすく」、かつそういったお金を払う人の”ツボ”を抑えた製品さえ作ることができれば「効率のいい商売ができる」とぼくは考えています。