
| トヨタはここでも「柔軟かつマルチな」戦略を採用 |
この記事の要点まとめ
- 米国では「ガソリンエンジン回帰」: 約1.5兆円(100億ドル)を追加投資し、ハイブリッドとV8などの内燃機関(ICE)を徹底強化
- 中国は「テックEV」: ファーウェイ製OS「HarmonyOS」や自動運転技術をフル搭載した「bZ7」を投入
- GR GTの衝撃: 4.0L V8ツインターボ+ハイブリッドを積んだ、目標出力650ps超の次世代スーパースポーツが市販へ
- 二極化の理由: EV普及が鈍る米国と、テック企業が支配する中国。市場の「色」に合わせた極端な現地最適化
「すべてのクルマを電気に」という熱狂が冷めつつある今、トヨタの豊田章男会長がかつて語った「ガソリンエンジンにはまだ役割がある」という言葉が現実味を帯びています。
そして今回報じられたのが「トヨタは今、世界を”エンジンのアメリカ”と”デジタルの中国”とに二分し、それぞれに特化した最強の武器を送り込もうとしている」との報道です。
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アメリカの希望:1.5兆円投資と「V8ハイブリッド」の逆襲
米国市場では、EVの普及スピードが鈍化し、逆にハイブリッド車(HV)の需要が爆発しているという状況で、これを受けトヨタは北米での巨額投資を断行することに。
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トヨタ、米国でさらに100億ドル(約1.5兆円)を投資──“転換期”における大胆な一手。北米初の電池工場も稼働、ハイブリッド・EV戦略をさらに加速、やはりトランプは「正しかった」?
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米国・ハイブリッド戦略の概要
| 項目 | 詳細内容 |
| 追加投資額 | 約1.5兆円 (100億ドル) / 5年間 |
| 注力分野 | 米国5工場でのハイブリッド車・部品の生産拡大 |
| 戦略の狙い | 日本からの輸入を減らし、米国での「地産地消」を確立 |
なお、ここで考えるべきは市販化が決定した「GR GT」。
(LFAのように)ヤマハの力を借りず自社開発したV8エンジン(+ハイブリッド)を核とすることが明かされていますが、このマシンは「自動車のコモディティ化(汎用品化)」に対するトヨタの強烈なアンチテーゼでもあり、しかし生産拠点については現時点では「明かされず」。
Toyota
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【下克上】トヨタが本気でフェラーリとロールスを倒しに来る。新型「GR GT」「LFA後継」「センチュリー」が示す王者の執念、そしてボクが考える懸念とは
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このGR GTは当然ながらグローバルモデルであり、日本よりもアメリカでの販売台数が多い可能性を考慮すると、もしかするとエンジンそして車体も「アメリカで」生産されることとなるのかもしれません(納車開始時期は2027年の予定であるが、この”ずいぶん先”な設定は米国工場の建設を待つがためのスケジュールなのかもしれない)。
Image:TOYOTA
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実際のところ、GR GTは「生産性が高い」素材を使用しており、これは「日本以外での生産を行う」ことを考慮したという可能性も。※ただし中部経済新聞は日本での生産を報じているが、必ずしも生産拠点が一つである必要はない。事実、アメリカの新しい工場ではV8ハイブリッドパワートレーンの生産が決定しているようだ
Image:TOYOTA
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GR GTに積まれるトヨタの新開発4.0L V8ツインターボは「V10の魂」を受け継ぐエンジニアリングの傑作、あるいは凡作か
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中国の現実:トヨタの皮を被った「ファーウェイ・テック」
一方、世界最大のEV市場である中国では、トヨタは「これまでのやり方」を捨て、現地のテック企業と手を組むという方法を採用しています。
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| やはり中国向けのクルマは中国で開発するのが「一番」 | トヨタ中国、「中国R&D 2.0」で電動化・AI戦略を本格始動 トヨタ自動車と広州汽車(GAC)との合弁会社であるGACトヨタが、自 ...
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中国・フラッグシップEV「bZ7」スペック
- 全長 / ホイールベース: 5,130mm / 3,020mm (レクサスLSに迫るサイズ)
- 知能化: ファーウェイ製「HarmonyOS」コクピットを初採用
- 自動運転: Momenta(モメンタ)のLiDAR搭載ハイエンドADASを採用
- エコシステム: シャオミ(Xiaomi)のタブレット連携など、現地のスマホ文化に完全適応
中国法人幹部は「世界向けではなく、中国のためだけのクルマを作る」と宣言しており、かつての「世界戦略車」という概念は消え、中国市場では「トヨタの信頼性」に「中国ITの知能」を掛け合わせたハイブリッド・ブランドへと変貌を遂げています。
そしておどろかされるのは、トヨタでさえ「中国のスタイルに合わさねば」売れないということ、そして他の国とは全く異なるとしても「中国で売るために中国の様式を採用したこと」。
Image:TOYOTA
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数十年続いたトヨタ・VWの2強時代がついに幕を閉じる?「2030年には中国車が世界シェア1/3を占める」という衝撃予測が出される
| ついに「その時」が来る?数十年の歴史を誇るグローバル支配の終焉 | 記事の要約(ポイント3選) 勢力図の激変: トヨタとVWが8割を占めていた主要セグメントのシェアが2030年には約6割まで急落す ...
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なぜ米国や日本に「bZ7」は来ないのか?
そして「デザインもスペックもいいbZ7を、なぜ日本やアメリカで売らないのか?」という不満の声がSNS上で聞かれるのもまた事実。
その(中国以外で販売しない)理由は「サプライチェーンの中国化」にあり、bZ7の心臓部(モーター・インバーター)はファーウェイの「DriveONE」、そしてOSも中国独自。
Image:TOYOTA
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トヨタ bZ7、「日中合作」の量産仕様として初公開:ファーウェイとによる”HarmonyOS”搭載の先進EVセダン
Image:TOYOTA | 新型トヨタbz7はトヨタが現地にて開発した「中国の嗜好にマッチした」EVである | そのため、このbz7は現地でも高い競争力を持つものと思われる さて、トヨタは上海モータ ...
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これらは地政学的な関税問題やデータセキュリティの観点から、現状では中国外への導入が極めて困難なだといい、トヨタは「売らない」のではなく、市場環境的に「売れない」という制約の中で、二極化を選ばざるを得なかったのだと言えそうですね。
なお、日本では「ガソリン(ハイブリッド)」が求められ、トヨタの顧客の多くは「デジタル」に明るくないとも言われるので(トヨタの株主優待をデジタル化したところ、対応できない株主が続出してトヨタが謝罪するに至った)、仮にbZ7を導入したとしても一部のアーリーアダプターにしか受け入れられないのかもしれません。
結論|トヨタのギャンブルは正解か?
V8スーパーカーを開発しつつ、同時にファーウェイOSのEVを爆走させる。
このトヨタの「すべての可能性に賭ける」とも言えるマルチパスウェイ戦略は、膨大な開発費(年間約1.3兆円)を要するリスクの高い賭けです。
Image:TOYOTA
しかし、2026年の現時点で見れば、画一的なEV一本足打法に依存したライバルたちが苦戦する中、トヨタの「市場ごとの徹底した使い分け」は、最も賢明な生存戦略であるようにも見えてきます(ただ、これはお金のあるトヨタにしかできないのもまた事実かもしれない)。
「咆哮するV8」か、「思考するEV」か。
これからのトヨタのイメージは、市場によって全く異なるものとなりそうです。
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参照:Carscoops, Nikkei Asia, etc.


















