| まさに自動車史に残るといってもいい一大プロジェクト |
さて、ベントレーは2019年暮れに「1920年代のクラシックカー、ブロワー(Blower)を12台のみ復刻する」と発表していますが、これはオリジナナルのブロワーを3Dスキャンし、そのデータを用いてパーツを(3Dプリンタ等で)製作して車体組み立てるというもの。
そして今回ベントレーはその3Dスキャンデータ化を終えたと発表しており、これに要したのは述べ1200時間。
驚愕!ベントレーが1920年代の「ブロワー」を12台のみ、ほぼ100年ぶりに”追加”生産すると発表。さすがにこの年代のクルマの復刻は他に例がない
3Dスキャンはこういったツールを使用するようですね。
そしてこちらはデータベース化されたスキャンデータ。
そのパーツ点数は630にも達するそうです。
スキャンに使用されたのは1929年製ブロワー
今回のプロジェクトに使用されたのは1929年に製造された、ティム・バーキン卿がレースに使用したブロワー(シャシーナンバーHB3403)。
このベントレー・ブロワーを作ったのは”ベントレー・ボーイズ(ベントレーの愛好家でパトロンとも言える)”の一人、ヘンリー・ラルフ・スタンレー”ティム”バーキン卿。
上述のル・マン24時間レースに参戦するために作った、つまり「レースに勝つための」マシンであり、実際に8号車と9号車の二台がル・マン24時間レースに出場しています。
残念ながら途中でリタイヤとなるものの、9号車はコースレコードを記録するなど検討を見せ、この活躍を記念して「ベントレー・コンチネンタルGT ナンバー9エディション・バイ・マリナー」も限定発売されていますね。
オリジナルのブロワーに搭載されるエンジンは4.4リッター240馬力、クランクケースはアルミ製、シリンダースリーブはスチール製。
”Amherst Villiers MK IV”スーパーチャージャーが搭載されていますが、今回12台のみが製造される”新車”にも当時と全く同じ構造を持つ過給機が搭載されるとのこと。
このスーパーチャージャーに限らずですが、すでに当時のサプライヤーで「消滅している」会社も多そうですね。
基本的にはすべてが「当時のまま」製造されるものの、現代の安全基準を満たすために一部しかし最小限の変更が加えられることになり、つまり製造される12台は実際に公道走行も可能。
工作機械や素材についても可能な限り当時のままを再現し、ドラムブレーキやリーフスプリング式のサスペンションまでもが1920年代のままの構造や素材を踏襲するとも発表されていて、これが実現すれば大きな衝撃を自動車業界に与えることになりそうです。
最近ではジャガーやアストンマーティンが過去のクルマを復刻しているものの、さすがに1920年代のクルマを現代に蘇らせるという例は他になく、この”ブロワー”の完成を楽しみに待ちたいところですね。
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なお、このプロジェクトを担当するのはベントレーにてワンオフ車両やパーソナリゼーションを行う部署、マリナー。
この「マリナー」 はもともとベントレーとは別の会社で、1559年から事業を開始したコーチビルダー(ベントレーよりもずっと古い)。
その後1923年にベントレー車のカスタムを手掛けたことで両者は提携していますが、1920-1930年代は車体やエンジンを自動車メーカーから購入し、その上の「ボディ」をコーチビルダーに依頼して仮装するのが習わしだったといいます。
ただ、その後自動車メーカーが「完成車」として車両を販売するようになるとコーチビルダーの仕事は激減し、1959年にマリナーはベントレー傘下へと収まることに。
しかしながら現在はクルマが嗜好品へと変化するにあたって「ワンオフ」「カスタム」需が急増し、マクラーレンはこの状況を指して「1920年代に戻ったようだ」とも語っていますね。